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コーヒー日記⑳~人間個々、固有のリズム~

人間には、個々、固有のリズムがある。

スピノザを援用すれば、
人生とは、神の「変状」である人間個人が、固有のリズムで歩む生である。

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子守りの合間に自家焙煎したコーヒーを飲んで一息つくと、ふと、そんなことを思った。

協調性がなく(思いやりもなく)、マイペース。

医療従事者として、「大丈夫か!?」と思われる性格特性だが、わたしに関する客観的評価として子供の頃からよく言われてきた言葉である。

無論、今でもそうだ。

一人だとコツコツと続けられる作業も、他者と共同で行ったとたんに、リズムが乱れ、継続が困難になる。
散々それで、迷惑を掛けてきた。

固有のリズムとは?
得てして、集団行動よろしく、人間個人の固有のリズムは無視されやすく、「他者と合わせる」ことが強要される。
だから、自分の固有のリズムはどうであるか、自分でも分からなかった。


忙しい病院勤務から、ゆとりのあるデイサービス勤務へ。

家庭の事情もあっての転職であったが、存外、心地よいリズムだ。

「大学院も出て、研究も頑張っていたのに、物足りなくない?」
現在働いているスタッフからも、このように言われることがある。
自分でも、そう思うだろうと思っていた。

でも、存外、心地よいリズムなのだ。

つまり、仕事もプライベートも、以前より自分のペースで取り組むことができている。

以前の職場では、臨床や研究などで達成感を得られることも多かった。
一方で、仕事のストレスで不眠症となり、心療内科に通っていた時期もあった(職場の上司にも誰にも言えなかったが)。


”あせってはいけません。ただ牛のように、図々しく進んでいくのが大事です。”

文豪、夏目漱石の言葉。

そうだ。
わたしは、牛のようなリズムが、丁度いい。

決して、サボっていたり、手を抜いていたりするわけではない。
牛のように、進んでいく。
これでいいのだ。

最後に、石垣りんの詩を紹介したい。

表札
自分の住むところには
自分で表札を出すにかぎる。
自分の寝泊まりする場所に
他人がかけてくれる表札は
いつもろくなことはない。
病院へ入院したら
病室の名札は石垣りん様と
様が付いた。
旅館に泊まっても
部屋の外に名前は出ないが
やがて焼場の鑵(かま)にはいると
とじた扉の上に
石垣りん様と札が下がるだろう
そのとき私がこばめるか?
様も
殿も
付いてはいけない、
自分の住む所には
自分で表札をかけるにかぎる。
精神の在り場所も
ハタから表札をかけられてはならない
石垣りん
それでよい。

これがわたしのリズムだ。
それでよい。

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