【英論抄読】居住地、虚弱体質が股関節骨折後のリハビリテーションの転帰に及ぼす影響
📖 文献情報 と 抄録和訳
居住地、虚弱体質、その他の要因が股関節骨折後のリハビリテーションの転帰に及ぼす影響
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📚 概要
[背景]
股関節骨折の手術後、入所施設の患者は入院リハビリテーションから除外されることが多い。我々は、居住地や虚弱などの他の要因が、股関節骨折手術後のリハビリテーションの転帰に与える影響を評価することを目的とした。
[方法]
レトロスペクティブ・コホート研究。アウトカム指標は、機能的自立度測定の効率、退院先、骨折前の移動能力の回復などであった。一変量および多変量の線形回帰分析またはロジスティック回帰分析を行った。
[設定]
公立の大規模三次教育病院の一般リハビリテーション病棟1棟と老年病評価・管理病棟2棟。
[参加者]
2010年から2018年に股関節骨折手術後に入院リハビリテーションを受けた患者,計844名。
[結果]
住宅介護からの患者は139名(16%)であった。住宅介護出身であることは、転帰不良の独立した予測因子ではなかった。病前虚弱(Clinical Frailty Scale)は、機能的自立度測定の効率低下、骨折前の移動能力の回復不能、地域住居への復帰の最も強い独立した予測因子であった。認知症とせん妄もまた、すべての指標において転帰不良の独立した予測因子であった。90歳を超える年齢は、骨折前の移動能力を回復できないこと、および地域生活への復帰ができないことを独立に予測するものであった。
[結論]
股関節骨折手術後の入院リハビリの転帰は、居住地出身であることは独立して悪い転帰とは関連せず、これらの患者をリハビリの対象から外す根拠とすべきではない。転帰不良の主な予測因子としては、病前虚弱、認知症、せん妄、90歳以上の高齢者などが挙げられる。回復可能な機能制限がある場合、わずかな改善でもQOLに大きな影響を与えるため、可能で意欲があれば、入院リハビリテーションに参加する機会を与えるべきである。
🌱 So What?:何が面白いと感じたか?
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著者はオーストラリアのAustin Healthに在籍するStephanie Lowさんだ。
さすがAge and Ageing、、、。メッセージ性が強く興味深い論文である。
まず背景として、日本ではあまり馴染みがないが、オーストラリアでは入所施設の患者さんはリハビリテーションから除外されることがあるようだ。国によって文化や価値観は異なるため詳しい背景は分からないが、著者はこうした現状に対して、リハビリテーションの必要性を強く訴えている。
さて、本論文はよいリサーチクエスチョンの基準、”FIRM²NESS”(参考図書)の中でもとりわけ重要な”Relevant(切実な問題)”に対して強いメッセージ性を発した論文と思われる。
もし、居住場所によってリハビリテーションの対象から除外される、それがある種の主観で行われているとしたら、、、。それは患者さんにとって”切実な”問題といえる。
では、日本においても同様に考えてみよう。本論文では、考察にて以下のように述べられている。
まさにその通りだと思う。と同時に、こうした問題の解決にはより詳細な研究が必要であると思った。日本においては、特に認知症の患者さんに対してこのような風潮があるように思う。群馬医療福祉大学 山口 智晴先生のリハノメでの講義において、「この人、認知だから~(認知ってなんだ、、、?)」といって認知症のある患者さんのリハビリテーションが軽く済まされてしまう風潮がある、といった趣旨の話をされていた。
こうした予後予測の研究に関しても、認知症の方はそもそも対象から除外されてしまうことが多い。
そうであれば、逆に認知症(もしくは認知機能が低下した)股関節骨折患者に対象を絞り、その中で予測因子を考えていくことも重要なのではないかと思う。
・・・このように、”Relevant(切実な問題)”を訴える研究から刺激を受け、臨床に還元し、RQに落とし込んでいく、、、。このサイクルを回し続けるようにしたい。
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医療従事者における道徳感についても記事にしていますので良かったら読んで頂けると嬉しいです。
最後まで読んで頂きありがとうございます。今日も一歩ずつ、進んでいきましょう。
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