クリエイティブを考える基本ストラテジー①【入門編】
「ターゲット」「インサイト」「USP(競合優位性)」「プロボジション」という4つの要素に分解される、マーケティングの基本的なストラテジー。それらについて、私が実践している著名なクリエイティブディレクターの方に教えていただいた考え方やちょっとしたコツを含めて、ポイントを書き綴りたいと思う。
商品のコモディティ化が進んでも、モノからコト消費と盛んに言われても、広告のメッセージを考える上で、まずストラテジーを作り上げることの重要性はあまり変わっていないと感じる。
ストラテジーの筋が悪いと、どんなに面白い、イケてるクリエイティブができたとしても、商品やサービスの売り上げには寄与しにくいのではないか?と思う。逆にクリエイティブは普通で面白味にかけても、ストラテジーが正しければ、少なくとも失敗ということは回避できる。(これまでの経験上)もちろん、ストラテジーの筋がよくてクリエイティブがイケているのが最高であるし、ブランドや商品の価値向上につながり、より大きな成果が見込めることは言うまでもない。
なぜ、基本的なストラテジーの重要性が変わっていないかと思うと、2つの視点があると思う。
ステラテジーが重要だと思う理由【その1】
ひとつめは、商品やサービスは人々の生活をより良くしたいというつくり手の想いや志が根底にあり、何かしら他にはない特徴を備えていることが多いから。つまり、その商品やサービスが提供できる価値に差が生まれるということ。もちろんコモディティ化が進んでいるのは事実で、商品カテゴリーによってはブランド毎に品質も価格もほとんど差がないということもある。
ただ、つくり手の強い想いによって生まれた商品やサービス、ブランドは社会に対してどういう価値提供をしていく存在なのか、「ミッション」が明確に定義されており、そういう商品やサービスは何かしら他とは違う特徴を持っている。そのような商品をつくるために、つくり手は開発に日々心血を注いでいる。もちろん、その特徴はお客さまにとって価値があるものでないと意味はないが、広告に携わる者はもっとモノづくりをリスペクトし、その商品やサービスが社会に存在する意義を広告主と同じぐらい、いや、それ以上に考え抜かないといけないと思っている。
ステラテジーが重要だと思う理由【その2】
ふたつめは、商品やサービスは、今より生活をより良くしたい、不満や悩みを解決したいという欲求があるから買われるということ。欲求は人によって違う。欲求に応じて価値を提供できる商品の特徴が変わる。つまり、人によって価値がある商品は変わるということ。
だからこそ「ターゲット」「インサイト」「USP(競合優位性)」という考えたが重要になってくる。共感消費などとも言われているが、商品自体に価値を感じないのに、ソーシャルメディアで面白いコンテンツが発信されているからといって、まず買う動機にならないと思う。
以上の理由から、商品やサービスの提供価値を起点に考える基本的なストラテジーはまだまだ有効だと思う。広告のメッセージを考える基本的な型で、これができてないと、ソーシャルメディア上で面白がられるクリエイティブをいくら量産しても無意味。基本的な型をマスターしてから、応用すればいい。自戒も込めて。
ストラテジーの基本的な4ステップ
基本的なステップを紹介する前に、用語の確認を。
ストラテジーの基本的な要素は4つ。
1.「ターゲット」
→お客さまのこと。ターゲットとは戦争用語なのであまり好きではないけ
れども便宜上使用。
2.「インサイト」
→深層心理、生活者のホンネ、気持ちのツボなどと言われるもの。
3.「USP(競合優位性」
→「インサイト」を満たす競合よりすぐれている自社の特長
4.「プロポジション」
→ある「インサイト」を持った「ターゲット」の生活にどんな価値を
もたらすか整理したもの。その価値は「USP(競合優位性」があるから
可能である。
ストラテジーの基本的なステップは以下4ステップ。
1.「インサイト」を発見する
2.「ターゲット」を考える
→つまり、その「インサイト」を持っている人はどんな人かを考える。
3.「USP」を発見する
→その「インサイト」に対して価値提供できる自社の商品特徴を洗い出し
自社が競合と比較して最も価値提供できそうな「インサイト」と商品特
徴の組み合わせを発見する。
そのときの商品特徴が「USP(競合優位性)」
4.最後に「プロポジション」を仕上げる
→上記1-3のステップで「ターゲット」「インサイト」「USP」が整理され
た。 その「USP」を持っている商品が「ターゲット」の生活にどんな
価値を提供するのかまとめたものが「プロポジション」
各ステップで留意した方がいいポイントを詳細に綴りたい。
1.「インサイト」を発見する
起点となるのは「インサイト」。まず、世の中にどんな「インサイト」があるか、発見し書き出してみることがスタート。
「インサイト」を書き出す上でのポイントは3つある。
①インサイトは不満、不安などの満たされない気持ち
ひとつめは、「インサイト」とは生活者のホンネ、深層心理、気持ちのツボなどと言われているが、もっと平易な言葉で言うと日常的に感じている不満や不安、願望であるということ。満たされない気持ちだということ。
商品は多くの場合、不満や不安を解消するために存在していることが多いので、満たされない感情を見つけるほうがストラテジーとしてはやりやすい。
また、「インサイト」は起きている間ずっと感じていることというより、なにか引き金となる出来事があって呼び起こされる感情であることのほうが多い。
例えば、ソーシャルメディアで家族仲良く過ごしている投稿が流れてきたのを見てふと、「ひとりって寂しいなあ・・・結婚したいなあ」という感情が湧くというようなもの。
心の奥底にある感情だからこそ、常にその感情で頭がいっぱいということではなく、引き金となる出来事やシチュエーションがあって呼び起こされるものだと思う。
②インサイトは発見するもの
ふたつめは「インサイト」とはつくるものではなく、発見するものだということ。ついつい商品の特徴から、こんなインサイトあるだろうと逆算でインサイトを仮定してしまいまちだが、存在しないインサイトを捏造するとストラテジーが破綻してしまう。そのメッセージで誰が買う?ということになりかねない。
③インサイトは商品の存在と関係なく存在する気持ち
最後は「インサイト」はその商品やサービスの存在とは別に存在しているものであるということ。つまり、その商品やサービス、商品カテゴリーについてどう思っているかということではなく、あくまで日常の中で感じている不安や不満、願望であるということ。
「化粧水」のストラテジーを考える場合、「化粧水」についてどう思うか?ということより化粧水を使用するであろう女性が日常的に感じているであろう不安や不満などをまず書き出してみる。ただ、商品と距離が遠いと、ストラテジーが成立しないので、肌や化粧に関連した不安や不満を発見するという感じ。
次回は2.ターゲットを考える、以降をより掘り下げようと思う。
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