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クリエイティブディレクターは素人でも良い?
大それたタイトルを付けましたが、先日とある経営者の方から興味深いお話を伺い、自分の中だけに留めておくのも勿体無いと思い、noteにメモすることにしました。
気軽な気持ちで読んでいただけると嬉しいです。
背景・導入
本題に入る前に、簡単に背景を書きます。
私はホテル開発を生業にしております。
詳細は割愛しますが、ざっくりコンサルやPMくらいの位置付けだとお考えください。
そして仕事柄、様々な経営者・オーナー様とお話しする機会がありますし、パートナーとしてクリエイティブディレクターが登場するシーンも多々あります。
※クリエイティブディレクターとは
一口で言っても、業界により多種多様な方がいらっしゃいますが、ここではホテルの企画・コンセプトメイキング・デザインディレクションをするような方のことを指します。
そんな中で、ベテランの経営者(Aさんとします)より、こんな話を伺いました。
「クリエイティブディレクターの素養が何であるかを心得ていない者が増えた。物足りない。」
これは寝耳に水とかいうか、予想外なコメントで、私としては少し驚きました。
なぜなら、私がこれまでご一緒してきた「クリエイティブディレクター」という肩書きを持つ方は、皆さん豊富な実績と高い経歴を持つ方ばかりだったからです。
とある有名な商業施設を担当していたとか、MBAを持っているとか、建築やデザインに明るい方である等々。
むしろ感覚的には、従前よりもハイスペック傾向だなと感じていたので、Aさんのお話しは興味をくすぐられるものでした。
『物足りない』理由
そこで何がそうさせているのか、もう少し掘り下げて聞いてみることにしました。
Aさん曰く、『理屈過ぎる』とのこと。
なるほど確かに、それは少し分かる気がします。
ここ数年で見てきたクリエイティブディレクターの提案は、確かに綺麗なのです。
まとまっていて、徹頭徹尾論理的で、筋が通っている。地歴や文化の紐解きも出来ている。
頭が良い人たちが作ったんだなというのがよく分かる内容でした。
何が問題なのか?
Aさん曰く、『魂が弱い』
これは解釈に難儀しました。
クリエイティブディレクター達は、勿論のこと手抜きでやっているわけではなく、むしろ心血を注いでくださっています。
ここでいう魂というのは、Aさんなりの表現であり、つまりはこういうことでした。
①
確かに分析はよく出来ていて、積み上げた結果の提案として納得感はある。
②
しかしながら、そこにクリエイティブディレクター自身の「こうしたい!」というエゴがついてきていない。
③
もっと個人の体験に紐付いた「こうしたい!」を形にして欲しい。
④
そして、例えば「ライフスタイル」「ラグジュアリー」のような、一見「ふむふむ」と思えるが、実は輪郭がボヤけるような言葉で逃げないで欲しい。
なるほどなと思いました。
確かに言われて過去を振り返ると、エゴイスティックな提案というのは少なくなってきているように思います。
私がまだ新米の頃にご一緒させていただいた大御所の方々なんて、エゴの塊でクライアントとしょっちゅう揉めていましたが、、、(笑)
あれはある意味モノづくりにおいて健全なプロセスなのかもしれません。
情報を拾いやすい世の中になったからなのか、問題解決型のハウトゥが巷に溢れかえっているからなのか。
理由は多岐にわたるのでしょうが、Aさんが感覚的には捉えていらっしゃる問題意識は、案外核心をついているように思います。
そして、分析の積み上げでは『唯一無二』な世界観を造ることは相当難しい。
これは私も日々の仕事の中で実感値として強く思っていることですが、企画の初期段階から論理に走り過ぎると、どうしても結論は置きになる。
結果、既視感のある金太郎飴企画になる傾向が強いです。
「意味を売ること」が何よりも大切なこの時代において、クリエイティブディレクターの存在意義はこれまで以上に大きくなっているなと、この話を聞いて改めて感じました。
(Aさんがそこまで含意してこのお話をされたのかは定かではありませんが...)
クリエイティブディレクターは素人でも良い?
一見すると暴論ですが、これもよくよく聞いてみると、確かにそういう一面はあるなと思いました。
以下、Aさんのお話
BさんやCさん(元タレントの著名クリエイティブディレクター)は、ファッション、デザインや建築のことなんて全く勉強していない。
だけれども世界で戦えている。
それは彼女たちが、『自分のこうしたい』を形にする言葉を持っているからだ。
やりたいという思いと、それを伝えるワーディングがずば抜けて優れている。
そして彼女たちは、自分のやりたいを見つけるために、妥協なく飛び回っている。
とにかく見て、感じて、自分の好きを洗練させている。
極論、素人でも良い。
「こうしたい」を持っている。
「こうしたい」を確固たるものにするための探究心をもっている。
「こうしたい」を自分の言葉にできる。
そういうクリエイティブディレクターが作る企画は、唯一無二であり、人々を惹きつける。
なぜなら、その人個人の体験に根差したオリジナルの提供価値だから。
薄々お気付きかもしれませんが、Aさんはとてもハートフルな経営者なのです。
だから余計に、クリエイティブにも熱量を求めている節はありますが、そのことを差し引いても、このAさんのご発言は一理も二里もあると思います。
理屈の整理や分析はある程度であれば、私どものような職種の人間にも務まりますが、根っこの部分の企画は起用されたクリエイティブディレクターのアイデアにかかっています。
そして、経営者・オーナー様の多くは、そのクリエイティブディレクターのパーソナリティに惚れて起用を決断するケースが多いのです。
だからこそ、もっとエゴイストな欲望・世界観をぶつけてきて欲しいと感じてらっしゃるのだと思います。
最後に
なんてことない日常の会話。
その中でハッとさせられた一幕をnoteに書いてみました。
いかがでしたでしょうか。
モノが売れにくい時代、ヒットが生まれにくい時代、唯一無二が作りにくい時代。
ありがたいことに本noteを読んで下さった、モノづくりに関わる全ての皆様にとって、本noteが何か気付きの一助になれば幸いです。