[Part1 味作り編] オンラインコーヒーショップ、オープンまで半年間を振り返る
こんばんは。parklyのスガです。
すっかりご無沙汰になってしまいました。
parkly coffeeは、半年間の準備期間を経て、1月12日にようやく販売開始しました!
ありがたいことに初月から本当にたくさんのご注文をいただき、ドタバタしてたら1週間以上経ってしまいました。
今日は、オープンまでの半年間を振り返ってみようと思います。
振り返っていたら超大作のスーパー長文になってしまったので、4回に分けて投稿していきたいと思います!
開業準備でやったこと一覧
まず開業準備の外観を振り返ります。
半年間で行ったことをざっくりと洗い出すと、以下の通りです。
列挙するとこの程度ですが、ひとつひとつはもっと複雑で、、例えば梱包材検討だけで10種類はありました。
これらをカテゴリごとに、より細かく振り返っていこうと思います!今回は、味作りについて。
味づくりの流れ
①焙煎機購入
コーヒーロースターの根幹をなすのは、いうまでもなくコーヒー豆の味。それを作るのが焙煎機です。料理人にとっての「包丁」のようなものかもしれません。
2023年7月に、焙煎機を購入しました。
Kaleido Sniper M-1というもの。
あまり馴染みないと思いますが、家庭用の焙煎機も様々なものがあります。なので決めるのは結構難しいのですが、私たちは以下のポイントで選びました。
予算の範囲内か
1台目として適正な容量か
焙煎の再現性を高められるか
やはり一番気になるのは、値段。先に20万円以内と予算を決めました。2人で焙煎をするので、割り勘になるのは助かります。笑
次は「1台目として適正な容量か」。
どういうことかと言うと、焙煎機には1回で焙煎できる最大容量が定められています。しかし容量の限界まで入れるのではなく、50〜60%ほどの量の豆を投入するのが良いと言われています。
1kgが最大容量であれば、500〜600g程度の生豆を焼くことになる。フライパンに具材がパンパンだとフライ返しできないように、焙煎機においても豆の容量が多いと撹拌が十分にできなくなってしまうんですね。
最大容量が大きくなると1回で投入しなければならない豆も多くなってしまうので、かなりコストがかかります。
少なくとも半年は練習期間のつもりだったので、容量が小さく、コストを抑えて沢山練習をできるように、200g程度が最大容量となるものを探しました。
そして最後の要素が、焙煎の再現性を高められるか、ということ。つまり「データを取れるか」。
現代の焙煎機は、焙煎のログ(火力、焙煎時間、温度上昇率など)を計測できるツールが付属されているものも多く、PCで確認、制御できるものが多々あります。
これを使えば、良かった焙煎のプロファイル(レシピのようなもの)を保存できる。そして、それを再現すればまた狙い通りの味わいを作り出すことができます。
プロとしてお金をいただく以上、クオリティを安定化させることは必須。ですので、このロギングツールが付属しているものを選び、焙煎の再現性を高められるようにしました。
そうしてこの3つの観点から、Kaleido Sniper M-1に辿り着いたのです。
値段:20万円(税込)
最大容量:200g
ロギングツール(Artisan)付属
狙い通りの、最初の焙煎機としては120点の活躍をし続けてくれてます。まさに我らの愛機、、❤️
②ひたすら焙煎練習
そして焙煎練習。準備期間においては、ここにかけた時間が最も長いです。
本当に、知識も経験も0。右も左も分からないままのスタート。
ざっくりといくつかのステップに分けて、どのように焙煎技術を習得していったかまとめてみます。
①読書でインプット
焙煎は「化学」です。化学には理論がある。ということで、まずは焙煎理論の学習から開始。
焙煎機を購入してから届くまでの1ヶ月、本を読み漁りました。特に参考になったのはこの2つ。
特に1つ目、Roast Design Coffee 三神さんの著者は折に触れて読み返し、教科書のように使わせていただきました。
振り返ると、2人とも焙煎を始める前に体系化された知識を最低限身につけていたのは、その後の練習をスムーズに進める上で、非常に重要だったと思います。
それはある程度の知識がなければ、「今回の焙煎の、何が課題か」「どうすれば、狙いの味わいに近づくか」といった問いに対する仮説を立てられないからです。
2人で一緒に進めるということは議論や意見交換の頻度も多いので、なおさら知識が必要です。
②焙煎体験
そうして本を読み理論はある程度身につけても、「わかる」と「できる」は別物。
ということで、根津のFIVE COFFEESTAND & ROASTERYさんに、焙煎体験に伺いました。
2時間ほど、焙煎の手順はもちろん、本で学んだような理論のこと、各ステップで重要なこと、焙煎士ごとに哲学があるから理論を鵜呑みにすべきでないことなど、細かく教えていただきました。
本当に丁寧に、素人の質問にいちから答えてくださって、頭が上がらないです。。
実際、この体験で学んだ焙煎の方向性をベースに自分たちのプロファイルを決めていくことになりました。最初にベースを作る0→1が初心者にとってはスーパー難しいと思うので、ここでベースを作れたことで、あとは改良を続けることをメインに考えられたのは、非常に良かったです。
③焙煎練習&カッピング
そしてついに焙煎機が到着。早速焙煎に取り掛かります。
焙煎の良し悪しは実際に飲むことでしか判断がつかないので、毎週末に集合して、カッピングを行います。
1回あたり10前後のサンプルを並べてカッピング。狙っている味わいを出せているか、どんなフレーバーが強いか、改善点は何か、どんな個性を伸ばしたいかをディスカッションしていきます。
その中で良かったサンプルをさらに改良するため、焙煎プロファイルを見直し、その日の焙煎で検証していく項目を検討し、再び焙煎。その繰り返しを行いました。
④ベースプロファイルの決定
焙煎を始めてから3ヶ月後、ようやくベースとなるプロファイルが決定しました。「基本レシピ」のようなもので、「基本的にこのレシピに沿えば自分たちの出したい味わいになるよね」というものです。
⑤種類の異なる豆で③,④を再度実施
ベースプロファイルが決まっても、これを全ての豆に適用できるわけではありません。
野菜も産地や農家によって個性が異なり、それを最大限活かすための調理法があるはず。それと同じで、コーヒー豆も産地や農園によって個性が異なるので、ベースのレシピをその豆の個性に合わせて調整し直す必要があります。
そのため新たな豆を購入したら、③〜⑤をまた繰り返す、といったことを何度も行ってきました。
⑥ひとまず、味作り第1フェーズ、完
美味しさの定義は人によって異なるし、あくまで好みの問題であり正解はありません。だからこそ、何を持って「完成」とするか決めるのは難しい。
その中で私たちは自分たちの基準を持つため、以下の4点を満たしているコーヒーを我々の「美味しさ」と定義しました。
豆本来が持つ個性を表現すること
酸と甘さを、バランスよく表現すること
余韻を長く楽しめること
日常的に、毎日飲みたくなること
これらの要素を狙って、安定的に再現し続けること。それを持って、一旦は完成としました。
(「美味しさ」について細かなことは、この記事で熱弁してますので、ぜひ👇)
それでも、私たちが目指す美味しさを追求するだけではなく、極力客観的な評価も取り入れていきました。
例えば、別のロースターが焙煎した同じ産地のコーヒーを取り寄せ、カッピングで比較したり。
またパブリックカッピング(誰でも自由参加できるカッピング会)に自分たちの豆を持って行って、プロのフィードバックをいただいたり。
他にも、普段コーヒーを飲む友人に配って感想をもらったりして、「自分たちの表現したい味わい」と「多くの人に美味しいと思ってもらえる水準」を両立できる状態になり、ひとまず味作りの第1フェーズは完了としました。
とはいえ味作りに終わりはないので、その後も理想の味わい、さらなる高みに向けて日々アップデート中です。
焙煎は、化学とアートの融合
焙煎をする過程は化学の実験ようなものだけれど、その結果は美味しさという極めて身体的な感覚に昇華される。どれだけロジカルにプロセスを考えても、飲んだ人の感想が全て。
焙煎は化学とアートの融合だな、と。
そして、美味しさの定義が個人によって異なる、その難しさと面白さ。
全ての人に美味しいと思ってもらえるなんてありえないし、日本でのスペシャルティコーヒーの市場はまだ小さい。だからこそ、どんな人に、どんな機会を届けたいか、その中で自分たちは何を表現したいか、その一貫性を持つことが大切なのだと、実体験の中で感じることができました。
・・・
と、結局味作りだけでめちゃくちゃ長文。いつも文章長くなりがちなので、分かりやすく端的に書く力が欲しいです。笑
次回のPart2は、店作り編。ミッションや屋号、ロゴを作る過程を振り返っていこうと思います。
次もまた、ぜひ読んでください〜🙏🏻