見出し画像

眠れない夜中に綴る

夏。
夏は嫌だ。
暑いから嫌だ。
天候が安定しないから嫌だ。
気圧の上下で体調や、痛みの程度が上がり下がりする。
人体の神秘だ。そう言わないとやってられない。

修羅場の記憶が蘇るから嫌だ。
男と女の繰り広げる泥臭くて生臭くて吐き気のする修羅場の記憶。もう10年以上前になるか、未だに記憶から拭えなくて苦しい。
詳細は割愛する。振り返れば"貴重な体験"だったと思う。

夏は嫌だ。
電気代が増える。
昼間も照明を全て切って、冷房を入れて生き延びる選択をし続ける。日々「長生きしたくない、早いところ浮世から退場したい」と思い続けているのに、生き延びる選択肢を選び続ける。矛盾だ。好きじゃない。

生き延びる選択肢。

あらゆる病苦を避けたいし、怪我だってしたくない。要は苦しんで死にたくないだけなのだが、"楽に"死ねないのはよく知っている。

雨風がごうごうと音を立てる日。湿気や低気圧、その後に高気圧になってまた下がる……を繰り返す日の中、身体の痛みや眩暈などさまざまな苦痛に襲われ、あまりのつらさに「死にたい」と思ったりもした。
あるいは外気温が35〜36度になろうという日。熱中症になって死ぬのはどうか、案外苦痛が少ないのでは、と思うこともあった。だが失敗したら悲惨なのも知っている。


なぜ生きているんだろう。
ある人の言を借りると「勝手に番った両親が私を勝手に産んだ」から。「頼んでもいないのになぜ勝手に産んだ」とも言っていた。完全に同意だ。

誰かが出産報告をしたのを見ても、「子供が産まれた=おめでたいこと」という思いを素直に抱けなくなってしまっていて、喜べない。果たしておめでたいことなんだろうか。
母体が無事であったのは大変に良かったな、と思う。あなたが死ななくてよかった。生き延びてくれてありがとう。
だが、子供が生まれたことに関しては、よくわからない。おめでたいことなのかどうか裏付けが取れてない。

現状この社会の中で、よく、命を増やして育もうという決意を抱けたなあ、とは思う。子育てに厳しい社会、厳しい目を向ける市井の人々、協力してくれる人間が圧倒的に少ない(※個人の感想です)中で、よく──。

新たに命を産み育むひととひとが、豊かで恵まれた環境の中に偶然にも囲まれているのならば心配は無用なのだろうけど。それでも、出産ひとつとっても、母体が亡くなる危険性があるというだけで……あるというだけで……この先は口を噤んだ方が良いだろう。





 夏は嫌だという話をしていたのだった。そう、夏は嫌だ。
なぜ外気温が上がると羽目を外す人間が増えるのだろう。もう少し悪意を込めて書くとしたら、なぜ夏場になると他人に迷惑を平気でかける人間が増えるのだろう。
良い例が、川原でバーベキューを行った後で自分達が使った道具や設備、ゴミなどをまるのままその場に残して帰る連中などが筆頭に挙げられる。
そんなことを平気でする程度なのだ、常から迷惑者である可能性が高い。

場所を借りてパーティーを行った後、ゴミを持ち帰らずにコンビニに持ち込んで平気で捨てるとか。家庭ごみの持ち込みはご遠慮ください、と明記されているのだが、お構いなし。
──これは、自分の後悔も孕んでいる。止めて全て己が持ち帰れば良かったのだが、テンションの上がり切ったその人を止められなかった。半ば茫然として、平気でそれをするその人に対して勝手に幻滅しながら見ているだけで済ませてしまった。





住む世界の違う人間同士。
貴族階級と農民。それぞれの層で見ている世界は全く違う。文化文明も違う。話も通じるようで通じない。
話が通じないので、それぞれの階級同士でしか交流が成り立たなくなってゆく。少し考えればわかる。話が通じにくい人々との交流を続けるよりは、話の通じる相手らと交流する方が遥かに楽で安泰だ。

やがて軋轢を生んで、戦いが起こったりする。

違う階級の間で手を取り合える人の数は少ない。助け合える人の数は少ない。





後悔の渦巻く夏。なぜ人間として生まれてきてしまったのだろう。なぜわたしはここにいるのだろう。
早く退場したい。ずっと眠りたい。

死んだ親の遺体が焼かれて骨になって出てきた時、羨ましいと思った。
お前は愛されながら死んだ。好き勝手に生きて病気を患って、だが配偶者と俺の兄弟に手厚く介護されながら徐々に弱っていって死んだ。俺より先に死んだ。親の勤めをろくに果たさず、何も遺さずにころっと死んだ。





だらだらと綴るうちに朝の四時になってしまった。
そんなことを考えている暇はないんだ。考えたくもないのに考えてしまう。
読みきれずに積み続けている本たちを、読まなければ。
絵の練習だってしたい……したほうがいいし、他にもすべきことはたくさんある。
睡眠だってとらなければならない。

そうだ。忘れてたが睡眠をとらないといけないのだ。
処方された睡眠薬を一錠飲んで、眠れるかどうかの挑戦をしなけりゃならない。


夏は嫌だ。
眠れない日が増えるから嫌だ。
眠れないとさまざまなことを考え始めてしまうから嫌だ。
早く冬になれ。

いいなと思ったら応援しよう!

赤嶺 臣
死ぬ前に残しておこうかな、くらいのものを書き綴っています。 サポート? やめておいた方がいいよ。