読書記録| JICA海外協力隊=地域おこし協力隊?
JICA海外協力隊の仕事、とくにコミュニティ開発は、日本における「地域おこし協力隊」の仕事ととても似ている、と思っている。両者、地域に入り、そこの課題を発見し、住民と共に解決する。JICA海外協力隊は、「地域おこし協力隊〜海外ver〜」と言っても差し支えないはずである。
というわけで、日本国内の地域おこしや開発事例を学ぶべく、地元の図書館に通った。これはその備忘録を兼ねた読書記録である。
みなかみイノベーション
日本の中山間地域はいま消滅の危機に瀕している。中山間地域には存続・発展の可能性があるのか、茹でガエル状態で静かに消滅するのを座して待つか。
本書は、中山間地域の一つ、群馬県みなかみ町での地域おこしの実践が書かれた本である。この本における【発展】とは、コミュニティの再活性化や地元民の生活満足度・幸福感の向上などが含まれており、単なる経済成長ではない(というか、日本全体が地盤沈下しているというのに地方が経済成長を追い求めるのは現状ちと無理がある)。
みなかみ町では「農泊」をコアにした観光まちづくりを行っている。農泊を通して田舎を知り、人情に触れる。かつて日本人が営んでいた自分は体験したことはないが、でもどこか懐かしい暮らしをする。
これは、みなかみ町を含めた、めぼしい観光スポットがない地域でも実践可能な「コト消費」型の地域おこしである。
お金やモノ、利便性はなくても「体験」や「ヒト」という地域にある資源を活用すれば魅力的な地域になる、かつ、そこに住む人々も生き生きし始めるという気づきに溢れた本であった。
著者の言う「みなかみ町の地域おこし事例は中山間地域発展のロールモデルになる!」というのは全国の田舎に、まだファイティングポーズがとれる!という勇気を与えるのではないだろうか。
フードツーリズムのすすめ
「食」の観光であるフードツーリズムによる地域振興についての本。事例が多いのが素晴らしいッ!
特に面白かった事例が韓国の村における「キムチづくり体験」である。60歳以上の高齢者率78%の山村である安徳里村では、「健康・ヒーリング体験」を打ち出して集客している。無農薬・無化学肥料の有機野菜の栽培&販売、農村滞在(みなかみイノベーションと被ってる👀)などを提供しており、年間4万人の観光客を呼んでいる。すごい!
その中のプログラムで特に人気なのが「キムチづくり体験」である。村のキムチづくり名人が直々に美味しいキムチの作り方を教えているらしい。昨今、韓国ではキムチをつくる家庭の割合が減っているらしい。「キムチの作り方を知りたい!」という動機が追い風になっているのだろう。
村の高齢者は収入を得られるだけでなく「生きがい」や「自信」をも得ているとのこと。
都市住民は韓国の伝統的な山村の生活文化を知るきっかけにもなっているらしい。うーむ、いいことずくめではないか、、!
↓日本人でも体験している人がいた。
↓後で読む用の「フードツーリズム」に関する論文
https://www.tandfonline.com/doi/abs/10.2164/cit/226.0
こうして田舎に関心が集まるのは、韓国でも日本でも、都市一極集中、かつ、そこで繰り広げられる加熱しすぎた早馬の目を抜くような生存競争から降り、地に足ついた田舎生活にだんだんと人々の関心が向いているとうことなのだろう。
ウェルネスツーリズム
ウェルネスツーリズムとは、健康を基盤にした新しい観光形態のことである。ただ観光するだけではなく、心身の健康、環境との調和、地域資源を活用した新たなライフスタイルを提案するものである。
以前、観光協会勤務の際に、「ウェルネスツーリズム」という概念に出会い、何か新しい観光プログラムを作れないかと思案していた時期があった。当時の私は単に、「ヨガ」「瞑想」「サウナ」などをお客様に体験してもらうことが、ウェルネスツーリズムなのだと思っていた。
喝!!!
本書を読んで、ウェルネスツーリズムかかなりレベルの高い旅行形態なのだと思い知った。
宿泊施設は自然環境豊か、かつ、伝統息づく日常生活と切り離された場所を選定し、提供される食事は健康的かつ飽きのこない工夫をふんだんに凝らし、加えてマッサージや運動などのプログラムを提供し、セラピー要素も加え、etc。
そう、簡単にはできない。多数の専門家が要る。たかが、観光プログラムにヨガを加えたところでウェルネスツーリズムにはならない。
そもそも健康に頓着しない私がウェルネスなツーリズムを提供できる訳がない。
読むべき人が読んだらかなりの学びになるだろう。
来るべき時にまた読み返したい。
ちなみに健康で長寿な方の多い地域をブルーゾーンというらしい。世界には5か所、ブルーゾーンがある。なんと沖縄もそのうちの一つらしい。Netflixも面白かったので見てみてください。
コミュニティデザイン
建築家兼、コミュニティデザイナーである山崎亮さんの本。面白い!おすすめです。
コミュニティデザインとは、山崎さん曰く、「地域の住民や関心のある人々と協力して、公共施設や活動拠点を設計し、新たなコミュニティを構築すること」。公園や図書館などの設計から住民間の絆を深める場づくりなどが挙げられる。
コミュニティデザインを活用することで、一方的に設計するのではなく、利用者と協力して設計を進めることで、施設に愛着を持ち、その後も住民がサークルを作ったり、自主的に管理を行うなど、積極的に関与するようになるとのこと。
本書では実際のプロジェクトにおいてどうコミュニティデザインを行ってきたかについて記されており、為になるだけでなく、単に読み物としても面白い👏
海士町の事例も載っている。
ここで、安直に正解を知りたがる私は、コミュニティデザインの確立した手法があるか気になった。それさえ分かれば、国際協力の現場にも使用できる強力なツールになるからだ。
だが、色々と調べたが、これといった教科書的な手法はないようだ。以下の動画にもある通り、コミュニティデザインは、「デザイナー本人の特性」と「対象となるコミュニティ」という2つの大きな変数が存在し、それによって手法が大きく異なる。経験を積んで学んでいくしかない。確かにそうですよね、日本での成功事例や手法が、文化が異なる海外でそのまま通じる訳がないですよね、失礼しました。
↑これ以外にも興味深い動画が盛りだくさんでした。
追記:海外に持っていく本の選定終了
別にkindleがあるので海外で本に困ることはない。しかし、できれば紙媒体で本を読みたい派なので、いくつか選定した。
深い河(遠藤周作)👉初めてインドを旅行した時に持って行った本。信仰とは何か。何度も読みたい名作。
寝ながら学べる構造主義、ひとりでは生きられないのも芸のうち(内田樹)👉読んだら社会の切り取る目が変わる本。読むと頭が良くなったような錯覚に陥る。
コミュニティデザインの時代(山崎亮)👉未読了。先述の本「コミュニティデザイン」がとても良かったので文庫本の方を持っていくことに決定。
入門 開発経済学(山形辰史)、世界の歴史18 東南アジア(河部利夫)👉ベトナムで国際協力をするなら活きるはず!