32 不登校は脳からの大切なサイン~「違和感」を成長のチャンスに変えるために~
不登校は、子どもが自分の内面と向き合い、心や体を守るための自然な行動です。脳科学の観点から見ると、不登校は単なる「行かない」という選択ではなく、脳がストレスや環境の違和感を「これ以上は無理だ」と判断した結果と考えられます。この違和感を否定せず、成長の糧に変える方法を一緒に考えてみましょう。
脳科学で見る「不登校の背景」
私たちの脳は、常に環境に適応しながら働いています。適応にはストレスが伴いますが、そのストレスが過剰になると、脳は以下のような反応を起こします:
1. 扁桃体の過活動:危険信号が出る
扁桃体は、脳内で「危険」を感知する役割を持っています。不安や恐怖を感じると、扁桃体が過剰に働き、身体や心が「逃げなければ」と警告を発します。不登校の背景には、学校環境が子どもの脳にとって「安全ではない」と認識された可能性があります。
2. 前頭前野の疲労:思考力や判断力の低下
ストレスが続くと、脳の前頭前野(計画や意思決定を司る部分)が疲弊します。この状態では、物事を冷静に考えたり、新しい方法を見つけたりするのが難しくなります。結果として「学校に行かない」という選択が、最も安全でシンプルな対応になるのです。
3. ホメオスタシス:脳は「慣れ」によって鈍くなる
繰り返しストレスを受けると、脳はその状態に「慣れ」てしまい、違和感や不快感を感じにくくなります。この鈍化した状態が長く続くと、子どもは学校での問題を抱えたまま耐え続けることになり、心身の健康を損ねてしまう危険があります。不登校は、脳がその鈍化を打破しようとする「気づき」のサインとも言えるのです。
不登校を肯定的に捉える理由
脳のメカニズムを踏まえると、不登校は「自分を守るための自然な選択」であることが分かります。この選択を否定するのではなく、むしろ以下のように肯定的に捉えましょう:
1. 「自分の限界を知る力」がある証拠
子どもは、自分の中で「無理をしてはいけない」という信号をキャッチしています。これは自己を守る大切な能力です。
2. 「違和感」を感じ取る力がある
学校や環境の中で感じた違和感を無視せず行動に移せることは、健全な心の働きを示しています。
3. 「立ち止まる」ことで新しい選択肢を見つけられる
脳は休むことで本来の力を取り戻します。不登校は一時的な休息の時間であり、その後の選択肢を広げるきっかけになります。
脳科学に基づく不登校へのアプローチ
1. 扁桃体を落ち着かせる環境を作る
子どもの脳が「安心」を感じられる環境を整えましょう。親が焦ったり無理に行かせようとするのではなく、リラックスした状態で会話を楽しんだり、子どもの好きな活動を尊重することが大切です。
2. 前頭前野を活性化する活動を取り入れる
前頭前野は、クリエイティブな活動や問題解決を通じて活性化します。絵を描いたり、好きな本を読んだり、親子で簡単なゲームをしたりすることで、子ども自身の「やりたい」という気持ちを引き出しましょう。
3. 違和感を言葉にするサポートをする
子どもが感じた違和感をうまく表現できるように、親や周囲がサポートしましょう。「どうして行きたくないの?」と詰め寄るのではなく、「何が嫌だったか話してみる?」と寄り添う姿勢が大切です。
親御さんへのメッセージ
親として、不登校の状況に「何とかしなくては」と焦る気持ちはよく分かります。しかし、まずは子どもの脳が「休みたい」と発しているサインを信じてあげてください。
• 「脳を休める時間」を与える
子どもが安心して自分を見つめ直せる時間をつくることで、脳の過活動が落ち着きます。
• 「完璧な親」になろうとしない
親御さん自身も、脳が疲れたら休むことが必要です。無理せず、必要な時には第三者のサポートを頼ることも大切です。
• 「未来への可能性」に目を向ける
不登校はゴールではなく、新しいスタートのきっかけです。焦らず、ゆっくりと子どもの歩みを見守りましょう。
違和感は「変化の種」
脳が発した違和感やサインは、成長や変化のきっかけです。不登校を経験することで、子ども自身も、親御さんも、新たな可能性や価値観を発見できるチャンスがあります。
どうか、今の状況を否定せず、違和感を大切にしてください。その感覚が、未来をより良い方向へ導く力となるはずです。あなたとお子さんが、安心して一歩ずつ前に進めることを心から願っています。