64 受験前の子どもを支える親のサポート——脳神経科学×メンタルトレーニングの視点から
受験が近づくと、子どもはもちろん、親も不安を感じることが多くなります。
「もっと勉強させたほうがいいのでは?」
「このままで大丈夫?」
そんな気持ちになるのは当然ですが、受験期において親の関わり方は、子どもの脳とメンタルに大きな影響を与えます。
焦りやプレッシャーを減らし、子どもがベストを尽くせるようにするには、どんなサポートが効果的なのでしょうか?
脳神経科学とメンタルトレーニングの視点から、親としてできることを考えてみましょう。
① 「安心感」を与え、脳を最高の状態にする
受験期の子どもは、ストレスによって脳の扁桃体(不安や恐怖を感じる部分)が過剰に働きやすい状態になります。
扁桃体が過剰に活性化すると、集中力が下がり、記憶力が低下してしまいます。
✅ 親ができること
• 「あなたなら大丈夫」と伝える(オキシトシンを増やす)
• 焦らせる言葉を避ける(扁桃体の暴走を防ぐ)
• 「結果」ではなく「努力」を認める(セロトニンを安定させる)
NGワード
×「もっと勉強しなきゃ、間に合わないよ」
×「〇〇ちゃんは、もっとやってるみたいよ」
OKワード
◎「コツコツ頑張っているね!」
◎「今日もちゃんと机に向かっていて偉いね」
➡ 親が焦ると、子どもも焦る。親が落ち着いていると、子どもも落ち着く。
まずは、親が安心感を持って接することが、子どもの脳を最高の状態にするポイントです。
② 「勉強を頑張ること=快感」にする
脳の報酬系(ドーパミン回路)が活性化すると、「頑張ること=楽しい」と感じるようになります。
しかし、勉強が「やらされるもの」になると、ドーパミンの分泌が減り、やる気が低下してしまいます。
✅ 親ができること
• 「〇〇ができるようになったね!」と、小さな成功を認める
• 「勉強が楽しくなる仕掛け」を一緒に考える
• 「問題を解けた瞬間」の喜びを強調する
NGワード
×「まだまだ足りないね」
×「この成績じゃ厳しいよ」
OKワード
◎「この前よりできるようになったね!」
◎「難しい問題に挑戦できたね!」
➡ 「努力が楽しい」と感じると、受験期のモチベーションは大きく変わる。
「勉強=苦痛」ではなく、「勉強=成長が感じられるもの」にすることが、長期的に頑張る力を引き出します。
③ 「適度な休息」でパフォーマンスを最大化する
脳科学的に、長時間の詰め込み学習は逆効果です。
適度な休息を挟むことで、記憶の定着率が上がり、集中力も持続しやすくなります。
✅ 親ができること
• 「休憩をとることは悪いことじゃない」と伝える
• 短時間の運動やストレッチを勧める
• 「睡眠不足」が記憶力を下げることを理解する
NGワード
×「まだやるの? 休んでる場合じゃないでしょ」
×「夜遅くまで頑張るのが当たり前」
OKワード
◎「休憩を上手に取ることが、効率を上げる秘訣だよ」
◎「夜はしっかり寝たほうが、記憶が定着するらしいよ」
➡ 「休むこと=悪」ではなく、「休むこと=効率を上げる秘訣」と伝えることが大切。
受験期ほど、「頑張る」だけでなく、「上手に休むこと」が合格への鍵になります。
④ 「受験は通過点」と伝え、過度なプレッシャーを減らす
受験生の多くは、「落ちたらどうしよう」「失敗したら終わりだ」とプレッシャーを感じています。
しかし、脳科学的に、「プレッシャーが強すぎるとパフォーマンスが低下する」ことがわかっています。
✅ 親ができること
• 「受験は人生のゴールではなく、通過点」と伝える
• 「どんな結果でも、あなたを応援している」と安心感を持たせる
• 試験当日の緊張を和らげる声かけをする
NGワード
×「絶対に合格しないとダメよ!」
×「落ちたらどうするの?」
OKワード
◎「あなたが頑張ったことに意味があるよ」
◎「結果がどうであれ、あなたを誇りに思うよ」
➡ 親の「結果にこだわる言葉」が、子どもの脳のストレスを増やす。
受験はゴールではなく、あくまで人生のひとつのステップ。そう考えることで、子どもがリラックスし、最高の力を発揮できるようになります。
⑤ 親自身が「安定したメンタル」を保つ
子どもは、親の感情を敏感に察知します。
親が不安そうだと、子どもも不安になります。
逆に、親がどっしり構えていると、子どもも安心して受験に向かうことができます。
✅ 親ができること
• 「子どもを信じる」ことを意識する
• 親自身のストレスを減らす(趣味や運動でリフレッシュ)
• 他の子と比較しない(「あの子はできるのに…」は禁句)
➡ 親のメンタルの安定が、子どもにとって最大のサポートになる。
焦る気持ちがあるときこそ、「大丈夫。信じてるよ。」と自分に言い聞かせてみましょう。
まとめ
受験期の親のサポートは、「勉強させること」ではなく、「子どもが最高の力を発揮できる環境を整えること」が大切です。
✅ 今日からできる5つのサポート
1. 安心感を与え、脳のパフォーマンスを高める
2. 「勉強=快感」になるよう、小さな成功を認める
3. 適度な休息を促し、学習効果を最大化する
4. 「受験は通過点」と伝え、プレッシャーを減らす
5. 親自身が安定したメンタルを保つ
「受験=試練」ではなく、「成長のチャンス」と考え、親子で乗り越えていきましょう!