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ご冗談でしょう、プランクさん

拙ブログ「超心理学研究に見る科学の危機」において、私は超心理学者レイディンの非科学的な姿勢について批判しました。
 
レイディンはベル研究所やプリンストン大学などを経て、今はノエティック科学研究所という民間研究機関に身を置く超心理学の第一人者。


熱狂が量子現象を遠隔操作?

レイディンと言えば、数万人規模の群衆が熱狂するようなイベント、例えば野球やサッカーなど大規模な施設で行われるスポーツとか、米ネバダ砂漠で7万人が集まって行われるイベント「バーニングマン」などにおいて、乱数発生器に出力の偏りが生じることを観測で示した人物。

この出力の偏りは、数十万分の一という極めて低い確率でしか起こりえないものであり、人々の感情の高まりに同期して生じるということなのでした。
 
乱数発生器は、「量子トンネル効果」という量子現象を利用し、量子がある壁をすり抜ける確率と跳ね返される確率を厳密に五分五分に調整したもの。
 
すり抜けた時は「1」を、跳ね返された時は「0」を出力しますが、元が量子現象なため我々は次の出力がどちらになるかを予測することはできません。
 
1が来るか0が来るかは確率的にしか分からず、今それは厳密に50%となっています。
 
これが、各種イベントで人々が熱狂して高揚した瞬間、1もしくは0だけが連続する低確率な事象が発生する、というのです。
 
彼は永年の実験から得られたこの、ヒトの意識と量子現象の間に見られる相関の確からしさを前に、人の心は従来型の科学で捉えられてきた物質で捉えきれない非物質的な存在である、と断じました。

「意識は非物質」のデジャブ

ノーベル物理学賞受賞の理論物理学者・ジョセフソン博士も同様のことを言います。
 
彼はかねてよりテレパシー等の超能力に関心を持っている人物で、「心-物質統合プルジェクト(Mind – Matter Unification Project)」の主宰者でもある。
 
これは、彼曰く「心」を説明する理論構築を目指すプロジェクトとのこと。
 
テレパシーも量子論で説明可能、とします。
 
その彼は、従来心は脳の働きで生ずるとされてきたが、これは全てを物質とみなす物質主義的な見方であり誤りである、超心理学が示してきた証拠は、心はそれ以上の存在であることを示している、と主張します。
 
また、量子力学誕生黎明期、量子仮説を提出しその発展に貢献したプランク博士も、「生命は我々が理解できない何か大きな生命の一部であると信じている。これは科学では正当化できず、幻想でしか答えることができない。幻想とは科学的な用語以外で物事を表現する一つの方法だ」とした上で、意識を根本的な存在とし、物質は意識から派生したものであるとの見方を主張します(※)。

科学らしさ、それは手法ではなく考え方の内に

このような「物理学=物質主義」批判に対する私の見解は、上述のブログで示したとおり。
 
かいつまんで言えば、物質の定義自体が科学の深化により変わり得るのであり、その時代時代で理解不能なもの、既知の知識で包含できないものを「非物質」的な、人類の知恵の圏外に押し込めるそういう態度は非科学的であり学問的敗北である、ということ。
 
物質主義などと言うといかにも事物を矮小化した見方のようにとれますが、人類の限定的な世界観の中での理解の枠組み、その中で現象をとらえる前向きな姿勢だと私は思います。

限定的と言いましたが、それがどれほど限定的なのかは時代により変化します。

今手にしている世界観の中で理解不能なことでも、将来理解可能であろうことに正しく期待すること、これが科学的姿勢なのではないかな、と。

現時点で未解明のものを研究活動の圏外=検証不可能なアンタッチャブルなものに押し込め探究を放棄する態度は非科学的であり、その意味でレイディンやプランクの姿勢は誤りである、と私は思います。
 
あくまで検証可能な理論の範囲内で説明し、またこれを実際に検証していくという従来の研究手法には、限界はあれどもそれ以上の優れた自然界の理解手段を我々人類は持ち合わせていません。
 
幻想と呼ぶにせよ神と呼ぶにせよ、そのような人類知性の圏外のものに一足飛びにゆだねてしまうのは、努力の放棄であり安易に過ぎます。

芽生える新たな潮流

大規模なイベント会場での乱数発生器のフィールド実験を行ってきたレイディンに対しネルソン(Roger Nelson)は世界中に乱数発生器を配置して出力検出を常時行うことを提案・実行してきました。
 
世界中で様々に生起する突発的な出来事や事件において、それに伴う人々の意識の高揚が起こす乱数発生器出力への影響を、漏らさず記録しようとしたのです。
 
過去においてそれは例えば、スティーブ・ジョブズ氏の死去や東日本大震災、そして米貿易センタービルにおけるテロ事件などで、乱数発生の顕著な(平均から大きく逸脱した)確率変動が検出されました。
 
これらは、レイディン流のイベントごとの事前準備では捉えられなかった事象として注目されます。
 
このネルソングループの一員であるGrathoffは、意識と物質との相互作用に関する非物質的な論が多い中で、私(種市)の理論が「超物理的ではない」点に注目しています。
 
従来の物理学の立場を物質主義としてしりぞけそれを超越した何か(プランク的に言えば「幻想」)によるのではく、物理的観点を維持しながら脳外の意識を説明し意識の物質への作用も説明している点に着目してくれています。
 
そこがまさに私の理論・PF理論のポイントの一つなのです。
 
「圏外」でない以上それは検証可能であり、将来の検証実験によって否定される可能性は十分にあります。
 
だからこそそれは、科学的議論の俎上にある、超常現象を科学の埒外に追いやらない理論なのです。

(※)Planck Max : The Observer, London : 17 1931

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