にんげんのふり
先週末 一年半ぶりに海へ行った。
誰にも迷惑をかけずに 遠吠えするには
ひとけのない海辺が良いと
今のところ、そう思ってる。
その日はよく晴れていて、暖かかったので
まばらに ぽつぽつと 人がいた。
仕方がないので 中くらいの声で
去年旅立った猫の名前を海に向かって叫ぶ。
続いて 今まで私のもとにいてくれた猫や犬の
名前を叫ぶ。
調子づいてきて鼻歌を歌う
なみよせて/クラムボン
サマーヌード/真心ブラザーズ
もう少し調子に乗って歌いだす。
ゆらゆら帝国で考え中
透明少女/ナンバーガール
微熱/UA
若者たち/サニーデイサービス
保護者でもあるオウジが周りを気にしてくれている。
大丈夫みたい。
はしゃぐ私をビデオで撮るオウジに
私「そこの わっけぇの そこのわけぇの
あんた お腹すいとらんね?」
オ「お腹すいたね」
私「うちが何か美味しいもん奢ったるわ
あんた何が好きや?寿司か?焼肉か?」
もはや 関西か広島か九州か
わからない言葉で極妻を気取り
ぴょんぴょん飛び跳ねて
バレリーナ気分で踊る。
私「あぁ そうだよ。私は発達障がいだよ
わかってるよ。認めるよ。」
と言い訳をしてみる。
「私、にんげんのふりしていることに すごく
疲れてたみたい。
でも動物にもなれない。
お家とかご飯とか 無いと生きていけない。」
「じゃあさ、人間じゃなくて日本人やめたら
いいんじゃない?」
「あ いいね。それだよそれ!」
元祖高木ブー伝説/筋肉少女帯をやけになって
歌いながら
靴を脱いで 靴下脱いで裸足になる。
砂浜は ほんの少しあたたかくて 砂を踏む感触が
気持ちいい。
しばしの間 日本人をやめる。
はしゃいでいてもポーンと躁にはなれない。
べったりと鬱が くっついているのは気づいてる。
それでいい。
足についた砂を払って 靴下をはいて靴を履く
日本人に戻る。
うみ うみ ありがとう。
帰ってきて ふらふらだけど眠るのがもったいない。
でも眠る。
次の日の夜まで眠る。
日差しにやられて まぶたが泣きはらしたみたいに
腫れていた。
読んでくださって 心から ありがとうございます。