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単純に、単純に。

2回目の酒種酵母作りが前回よりいい方向で進んでいることを知らせてくれたのは、アルコール臭。

酵母を入れたボトルの蓋を開けると、プシュッという炭酸ガスが抜ける音のあとに、はっきりとしたお酒の香りが立ち昇ってくる。

米と米麹で作るということは、日本酒を作る工程と似ているわけなので、これはつまりどぶろく。
(ということは、これを布で濾すと日本酒になるってこと?)

ボトルをのぞいてもそこに酵母菌や麹菌がうごめいているのが見えるわけではないけれど、そこには生物の生きるための営みがあるということ。

私がパン作りにとりつかれているひとつの理由は、そこにもあるんだろうと思う。

まったく純粋に、余計なことは何も考えずに、そこにある糖分を取り込み、炭酸ガスとアルコールを作り出す。ただただ、生命活動としてそれだけを繰り返して増殖し、命をつないでいく。

それに比べると、私たち人間の、生存のための営みのなんと複雑なことか。

きっと、生きていくだけなら本来はもっと単純だったはず。一体なんのためにこんなに余計なことを考えて、余計なことをする生物になったのか。

なんて、思うようにいかない日々が続くと、そんなことばかり考えてしまう。

こういう時だからこそ、私の人生にとっては週末のパン作りがとても大事なものなんだろう。

自家製酵母作りという、よりわかりやすい生命の営みに触れる作業を行うようになって、その思いは特に強くなった。

シンプルにシンプルに、ひとつの方向だけを向いて生きていく。

生き物にとっては、それが本来の生き方、幸せな生き方。

これからの人生がそうなるように調整していく。
私がこれから考えていくべきことなのは、こういうことかもしれない。


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