自家製酵母に振り回された三連休最終日
スタートが遅れたのでやきもきはしたけれど、なんとか標準の5日間でしっかり泡も出て酵母が元気になったので完成だと、そう思っていたのに。
米と米麹で起こしたこの自家製酵母は、日本で古くから日本酒作りに使われている「酒種」という酵母。
あの有名な木村屋というパン屋さんが、日本人の口に合うパンを作ろうとこの酒種を使ってあんぱんを作るようになってから、日本中のベーカリーだけでなく自宅でパン作りをする人たちにまで広く使われるようになった。
しっとりもちもちのあんぱんが好きという奥様の命令要望に応えるために、三連休中にはなんとか初の酒種酵母パンを作りたいと、最終日に酒種が使えるようになるようスケジューリングして酒種起こしにチャレンジ。
なんとか、標準の5日間で酵母の勢いが確認できるところまでこぎつけた。
三連休の中日には、ネットで情報収集してあんぱんのレシピを決定、また酒種を使ってパンを作る時の注意点などをリサーチ。
「酒種での一次発酵には、夏には4〜5時間かかる」という不穏な情報が目についたけれど、まあ朝からかかれば夕方には終わるだろうと安直に判断。これが後で大変な事態を引き起こしてしまう結果に。
一次発酵というのは、小麦粉や塩、水のほか砂糖やバターなどの材料を混ぜてこね、パン生地をひとまとまりにして置いておくと、酵母が糖分を食べて炭酸ガスを発生させてパン生地を大きくふくらませる工程のこと。
一般的によく使われている「イースト」という、パン作りのために選りすぐられたパン酵母を使うとおおむね1時間程度で終わる工程だけれど、天然酵母はさまざまな酵母の複合体で必ずしもパン作りが得意なものばかりとは限らない。そのため、発酵にはそれなりの時間がかかる、というのが通常、らしい。
そういえば、以前小麦粉やライ麦粉で起こした「サワー種」という天然酵母でも発酵に時間がかかったよな、と今頃思い出した。
ということで、三連休最終日は、朝から準備をして酒種あんぱん作りをスタート。
ここで、第一の問題発生。
ボウルに材料を入れて水気がなくなるまで混ぜる。その後、こね台に出して手でひとまとまりになるまでこねていく。
ところが、どれだけこねても生地がベタベタで全然まとまらない。
普段なら5分もこねればまとまってくるのに、10分たっても20分たってもまとまる気配がない。多分30分以上はこね続けてやっとひとまとまりに。
確かに参考にした動画でも似たような状態だったので、これは何かがおかしいというよりも、そういうレシピだったのかもしれないが、そのせいでずいぶん時間をロス。
一次発酵に移る時には、すでに予定の時間を1時間もオーバーしていた。
ここからは4、5時間で次の工程だから、その間にまずはお昼ご飯。そして1週間分のアイロンがけなどなど、お休み中にやっておかないといけないことをこなしていく。
で、4時間後。
ここで第二の問題が発生。
全然ふくらんでいる気配がない。状況から見る限りまだ1時間程度では規定の大きさまでふくらむ気がしない。
まだ2、3時間かかるんならと、思い切って外出してみる。
実は週末に電気シェーバーがうんともすんとも言わなくなってしまったので、お休みの間に買い換えないといけなかった。
近所のショッピングモールに出かけて電気シェーバーを購入し、ついでに100均でパン作りの道具を買ったりスーパーで夜ご飯を買ったりと。ずいぶん余裕をかまして夜8時ごろ帰宅。
で、パン生地の状況はというと・・・
かなりふくらんだものの、まだまだ十分じゃない。
8時間たってもダメなのかッ・・・
でもこの後の工程を考えると、これ以上待っていると日付が変わってしまう。ということで、一次発酵はここでむりやり切り上げて先に進むことにする。
時間もないし、いい感じで仕上がる気もしないのであんこを入れるのは断念して、ただの丸パンに変更。
ひとまとまりのパン生地を8個に分割して丸め、40℃で1時間二次発酵。
そしてその後、200℃で予熱したオーブンで10分焼いていく。
はい完成(?)
意外にふくらんだものの、変な焼きムラはあるし、触り心地もなんだか硬い。まあグダグダだったからこういう仕上がりになるのも仕方ない。
で、粗熱が取れたところで試食してみる。
ん?皮はちょっと硬いけど、中はしっとりもっちりで悪くない。
「ほんのり甘くて、悪くないで」
なんと、甘い物好きの奥様としてはまんざらでもない様子。
しっとりもっちりでほんのり甘い、というのは酒種パンの特徴。天然酵母らしい複雑なうまみも少し感じる。
パンとしての完成度は50%以下ではあっても、失敗したパンも意外においしく食べられることがある、というのがパン作りのひとつの楽しさでもあるんです。
塩を入れ忘れた時と天然酵母で発酵させすぎてやたらすっぱく仕上がった時は、さすがに食べるのがつらかったけどね。
今回の敗因は、完成したと思っていた酒種が、実はまだ少し力が足りなかったということじゃないかなと思う。酵母の活動が活発になって泡が出てくるタイミングが通常よりも1〜2日程度遅かったので、標準の5日ではなくあと2日程度は育成を続けたほうがよかったのかな、と。
酒種はまだ残っているので、次はもう少しエサやりして十分力がついたところでまたパンを作ってみよう。
自家製酵母でのパン作りはなかなか安定しないのがネックだけれど、自分で起こした酵母でパンが作れるという楽しさと、イーストでスピード重視で作るのとは違う複雑なうまみのあるパンが味わえるという喜びが、パン作り沼の人たちをとりこにするんだろうね。
なんて、ひとごとみたいに言っているけれど、私はとりこになるんだろうか、ならないんだろうか。
その結果は、もう少し酵母とたわむれてみていたら出るんだろうな。