ライカについて語る
どうしてライカを使うのか。
私の場合その理由は、「信頼できるから」である。
この場合の信頼は、カメラボディの信頼性の意味ではない。
タフで頑丈で壊れにくく、どんな環境でも間違いなく撮れるという意味の信頼ではない。
「信じられるカメラ」なのである。
そんなことを言うとまた宗教めいてるとか言われそうだけど、正直な感覚を言うとそうなるのだから仕方がない。(笑)
「信じられるカメラ」なのである。
ウソをついてないのである。カメラが。
この人は信じられるのです。一緒にいると安心するのです。
だから一緒にいるのです。この人と一緒にいたいと思うから。
そんなカメラです。
でもそれは、昔の話。
今のライカは信じてない。
ライカというブランドを利用した商売になってるから、信じてない。
デジタルのライカを使うことはない。
…
この世の中に信じられるものって、一体いくつあるだろうか。
ウソばっかりの世の中だ。
ペラペラのプラスチック、謳い文句は一人前。
Web戦略、ステルスマーケティング。
ウソが蔓延してる。そりゃ笑いも引き攣るわな。
寒々しさを紛らわせようとして、余計に寒くなっている。
誰も芯から安心できない。
いつ滑るかわからないうわべを、皆必死で取り繕っている。
心の底から安心できることなど、あるだろうか。
…
ライカの話から、だいぶ脱線した。
すなわち、信じられない世の中だ。
信じられない世の中で息をするために、人はまあまあの額を支払う。
高級料理を食べに行き、リゾートで骨休めをし、アイドルに大金をつぎ込む。
そこだけはホッとできる場所。
そこだけは気兼ねなくいれる場所。
そこだけは生きた心地を味わえる場所。
ライカは高い。何気に高い。性能に見合わず高い。
ライカの値段は性能の値段ではない、信頼性の値段でもない、骨董的価値でもない。
ライカは信じられる。
この信じられない世の中で、信じられる。
思わず惹きつけられる。
そしてうっかり大金を払う。(笑)
ライカの価格とは、そういう仕組みです。
人は信じられるものにまあまあな額を支払います。
この信じられない世の中で、信じられることは、まあまあな価値だからです。
…
カメラにはいろんな価値があります。
性能がいい、カッコいい、安い、頑丈、使いやすい。
いろんな価値に、いろんな値段が付き、取引されています。
そんな中で、「信じられる」という価値は、実に微妙な感覚として、どんな場面にも作用しています。
「なんか嫌だ」ということはないですか?
性能は申し分ない、十分カッコイイ、ちゃんといい写真も撮れる。
それでも「なんか嫌だ」という感覚はないですか。
微細な感覚なので、無視して買っちゃうことはあるでしょう。
そもそも微細すぎて気付かないこともあるでしょう。
その「なんか嫌だ」こそが「信じられない」と置き換えられるワードです。
めっちゃおごってくれるし優しいし、センスもよくて男前。
でも「なんか嫌だ」ということはないですか?
何かを嗅ぎ取っているのです、それは。
目に見えない何かを。
それは目に見えないがゆえに、往々にして無視しがちです。
しかし、最も大事なのはそこです。
飯をおごってくれることなんかより、最終的にモノを言うのは、そこです。
…
信じられる。
心の底から安心できる。
何の気兼ねもない。
何の引っかかりもわだかまりもない。
性能云々より、心の平安です。
正直使いやすくはないです、ライカは。
AEもAFも無いので、ちゃんと撮ろうと思ったらまあまあ時間かかります。
撮りやすいとか慣れたら速いとか、そういう話は絶対鵜吞みにしちゃダメです。(笑)
押すだけで露出もピントも合うカメラに敵うはずがありません。普通に考えたらわかります。
それこそ本当に「神話」です。
事実は普通にフルマニュアルのカメラです。
普通にフルマニュアルの作法に則って撮ります。
そこに何の神話も入り込む余地はありません。
ケータイでしか撮ったことがない人からしたら、普通に意味不明の物体です。
ライカにはいろんな神話がまとわりついていますが、事実は普通のマニュアルカメラです。
事実だけを見たら、それ以上でも以下でもありません。
まあ普通は買いません。
もっと安いカメラもあるし、もっと性能のいいカメラもあります。
普通は買わないカメラです。
普通は買わないカメラを買う。
信じることの力、ここにありです。(笑)
「信じられる」ということは、普通は買わないカメラを買わせるほどの力があるということです。
「走れメロス」って話を思い出しましたね。(笑)
信じる力。
あなたにも身に覚えのひとつやふたつ、あるでしょう。
そしてそこには必ず、喜びが伴っていたはず。
それは必ず、美しい出来事として記憶に残っているはず。
「撮りにくかったら意味ないじゃん」
「カメラなんて撮れてナンボ」
さまざまなご意見はあることでしょう。
しかし、これも価値観の一つです。
「信じられること」
この世知辛い世の中だからこそ、その価値はますます輝きを増すのです。
そしてライカの価格は、ますます高騰するのです。(泣)
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