【詩】ミニトマトの目覚め
ミニトマトから種を取り出し植えた
あんなに小さな種が、ほんとうに?
指の先でつまんだときは
風にまぎれて消えそうで
ただのちいさな欠片だと思ってた
そっと土に預けてから
毎朝のぞいてみるけれど
何も変わらない茶色の世界
やっぱり無理だったのかなって思った
でも今朝、ふと目を向けたら
土の隙間からのぞく緑
まるで「ここにいるよ」と
小さな声でささやくみたいに
触れたら壊れそうな双葉が
朝の光にゆらゆら揺れて
たしかにそこに、生きていた
こんなにちいさなものが
命を抱えていたなんて
こんなに静かに、それでも力強く
ミニトマトは目を覚ます
この先きっと、雨に打たれ
風に揺られ、日差しに焦がれながら
それでも伸びていくのだろう
やがて、緑の実をつけて
空の色を映した赤になる日まで
ちいさな奇跡は続いていく