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短歌

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雑誌や新聞に掲載された短歌をこちらに綴っていきます。
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記事一覧

連作『金星とバー』

『西瓜』第14号 ともに欄に投稿した連作です。ともに欄で門脇篤史さんより「門良」をいただきました。 ありがとうございました。 お読みいただけると嬉しいです。 連作『金星とバー』鈴木ベルキ とんかつのはじっこほどの日常をころがりながら春は芽吹いて 急行と各駅停車を風で聴く話はなんどでも聞いていい 金星をきみが見つけて指すときにゆっくり上がる踏切のバー 踏切のバーをスウェーでかわしてる人がいたって今度話すね 踏切を渡ったあとに踏切の前のコントのつづきを話す

『歌集 瑠璃色の夏の終わりを見届けながら』中村成吾さん

私家版の歌集の告知をした時に、塔やnoteで交流させていただいている中村成吾さんから「交換してお互いに評を書くのも面白そうですね」という素敵な提案をいただきました。 今回は、その中村さんの『瑠璃色の夏の終わりを見届けながら』の中の好きな歌を紹介したいと思います。 (中村さんの『拾わないコイン』の感想はこちらです!) 読み始めて受けた第一印象は、隙がなく目の詰まっていて一首ごとの完成度が高い、ということ。章立てがテーマごとにまとめられていてすっと歌の中に入っていける没入感が

塔短歌会掲載歌 2024.10

10月号、塔着しました。 村上和子さん選歌欄にて6首掲載いただきました。 ありがとうございました。 気に入った歌が取られていて嬉しいと思いながら、気に入った歌が取られていないのが残念という気持ちを持っている。 要は全部気に入っていたのだ。 なので、推敲していつか世に出したいと思っている。 選歌後記や、前々月の選歌評欄に触れられないとき、少しさみしい。 先日、飲み会で話をしながら頭が整理できたけど、結社に入っていてよかったと改めて思った。どんな心持ちの時でさえ、十首を送る

塔短歌会掲載歌 2024.9

9月号、塔着しました。 なみの亜子さん選歌欄にて鍵前で8首掲載いただきました。また7月号の歌に𠮷澤ゆうこさんより評をいただいています。 ありがとうございました。 2024年6月に提出した今回の詠草10首は連作として考えていたまとまりであり、そして覚悟を持って出詠したものだ。 身内のしかも義理の父という少し距離のあるような、でも世話になっている濃度は濃い関係の、体の不調をテーマにしていたもの。なので、下手なことはできないし、自分に嘘もつけないし、でも短歌にはするべきと思って

連作『お釣りをもらう』

『西瓜』第13号 ともに欄に投稿した連作です。ともに欄で虫武一俊さんより「虫良」をいただき、染野太朗さんに総評で触れていただきました。 ありがとうございました。 お読みいただけると嬉しいです。 連作『お釣りをもらう』鈴木ベルキ 自分だけ知らない道にいるような夏の田んぼにはさまれた道 平行に走っていたと思ってた太めの道が繋がっていた この街の移住者として手を出して焼きそばを買うお釣りをもらう この街を出て行くことをしなかった人たちといる公民館で 迷い込んだ虫を窓から

塔2024年7月号若葉集より(好きだなと思った歌10首)

塔の会誌を読みながら、ああいいなと思った歌に印をつけています。印をつけただけだと忘れてしまうので書き写すようにしています。 こちらではそのうち10首を紹介します。 後輩の妙な敬語が抜けてゆき北口はいつも眩しいところ/石田犀 淡々としながらもうねりを感じる。 学生か職場かわからないが、ぎこちない後輩が徐々に慣れてきてタメ口に近くなってきたのだろう。 妙な敬語と言うところに関係性が滲む。 北口は南に比べて薄暗そうなイメージがある。昼間ではなく夜のネオン的なものだろうか。 そん

塔短歌会掲載歌 2024.7

若葉集(真中朋久選)にて鍵前7首の掲載でした。選歌後記でも大岡山の歌に触れていただきました。ありがとうございました。 今号で若葉集が最後です。 1年間欠詠せずに続けられました。 塔誌の「若葉集を終えて」にもエッセイが掲載されています。 1年間、平均何首載ったかという集計はしていたものの、あんまり意味がないなと思い始めています。数じゃない。 自分が納得できて、誰かに届いたかどうか、どっちもではなく、どっちかで。なんだろうな。 選歌してもらうとより好きになる。 選歌されなかった

塔2024年6月号若葉集より(好きだなと思った歌10首)

塔の会誌を読みながら、ああいいなと思った歌に印をつけています。印をつけただけだと忘れてしまうので書き写すようにしています。 こちらではそのうち10首を紹介します。 わたくしの臓器はこんなにピンク色 明るい服を着ようと思う/片山裕子 臓器の色を意識する、実際に見る機会は稀である。そんなタイミングを捉えて気持ちを乗せた一首。検査や病状の説明などで、必ずしも明るくない話題につながってしまうかもしれない不安な気持ちとそれでも自分の中の無垢な可能性を信じる気持ちが伝わってくる。

塔短歌会掲載歌 2024.6

若葉集(栗木京子選)にて5首の掲載でした。ありがとうございました。 今回は『泣きそうにそっと両手を振り合っている引力のあいだを通る』の歌が 初めて「百葉集」に掲載いただきました。 百葉集はひとつの目標だったので嬉しいです。 これが落ちてしまうのか…という驚きがあった。それも糧にしていきたい。

塔2024年5月号若葉集より(好きだなと思った歌10首)

塔の会誌を読みながら、ああいいなと思った歌に印をつけています。印をつけただけだと忘れてしまうので書き写すようにしています。 こちらではそのうち10首を紹介します。 提灯のともる喪の庭杏実(あまんど)の木は小さなる花芽もちをり/横井典子 暗い中にもこれから伸びていこうとするものがある。 暗い中の提灯と、小さい花芽だけにぽっと灯りが灯っているようで美しさを感じた。 ゆっくりとやさしく話す私より母の言葉が父に伝わる/片山裕子 高齢の両親なのだろうか。 自分もつい老人扱いして

連作『フィリックスガム』

『西瓜』第12号 ともに欄に投稿した連作です。お読みいただけると嬉しいです。 連作『フィリックスガム』鈴木ベルキ しっとりとするまで握った十円と交換をするフィリックスガム 空想のロープに振れば夕暮れてきみにやさしく打つラリアット 仰向けに細い肢体を投げ出せばスピニングトーホールドの近さ 振り向いた顔はおそらく笑ってて逆光さえもわがままだった フィリックスガムいつまでも噛んでいたころの匂いのする花曇り

塔2024年3月号若葉集より(好きだなと思った歌10首)

塔の会誌を読みながら、ああいいなと思った歌に印をつけています。印をつけただけだと忘れてしまうので書き写すようにしています。 こちらではそのうち10首を紹介します。 心と感情が合わない時の肉体感覚を独特の喩で表現されている。結句の「ぎんいろ」に鈍くひかる主体の気持ちがさらに重なる。 感情を凝縮して放つ一行。重さ、濃さ、色々な思いを乗せて短歌を詠む。「一滴」のしずくにも無視できない思いが含まれているような感覚がある。 「ぬくもり」は優しさだろうか。冷たい豆腐を切り分ける細か

塔短歌会掲載歌 2024.3

若葉集にて7首の掲載でした。ありがとうございました。

2/24(キマイラ)

終日休日 掃除、洗濯、買い物。 11:00に家を出る。 キマイラ文語の読書会に参加した。 こういう読書会に参加するのは初めてで、実はどんなことをするのかわからなかった。 申し込みも本名でしてしまった。 中途半端に遠慮してしまい、懇親会の申し込みをしなかった。 自分の直したいところだ。 読書会はとても刺激的だった。 それぞれの意見を言い合って、議論が深まっていく。 個人的にはキマイラということは、実作における肩の力が抜けた気がする。 ああ、これでもいいんだ、