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塔短歌会掲載歌 2024.9

9月号、塔着しました。 なみの亜子さん選歌欄にて鍵前で8首掲載いただきました。また7月号の歌に𠮷澤ゆうこさんより評をいただいています。
ありがとうございました。

歩けなくなったと義父からのLINE 聞いたことある風音がする

夕食を二人でともにするときの東の窓のうすい明るさ

炊きたてのご飯を小分けにしたのちにおむすびひとつ塩を効かせつ

キャスターのついたチェアーを押している義父の居場所が聞こえてわかる

我が父にしたことがないことばかりトマトの皮がうまく剥けない

おにぎりのフィルムを剥くのが下手な手に触れつつ皮膚の厚さ冷たさ

シャンプーをする大半は皮膚であり襟足ばかり指腹で揉む

街灯に反射している羽虫が蛍にみえてしまう夜もある

塔 2024.9 作品2 なみの亜子選


2024年6月に提出した今回の詠草10首は連作として考えていたまとまりであり、そして覚悟を持って出詠したものだ。
身内のしかも義理の父という少し距離のあるような、でも世話になっている濃度は濃い関係の、体の不調をテーマにしていたもの。なので、下手なことはできないし、自分に嘘もつけないし、でも短歌にはするべきと思って自分に向かい合った。

短歌であるべきかわからないけど、自分の心に強く深く残る陰影を表現できるようになりたいと思っている。自分にはいまそれが短歌であって良かった。
こういう自分の気持ちを表出するために、技術や構造というものももっと理解したい。そうすればもっと自由になれると思う。息を吸って吐くように短歌にできたら……。それが最近の目標です。ずっと追いかけるんだろうけど。

そんな中で10首中8首を取っていただけたことは大変自信になった。
一方、連作としては2首落ちているとも言える。

覚悟という面では、これで新樹集に載れるだろうという変な自信もあったし、これでだめならずっと新樹集には載らないだろうなと思っている。

今回は残念ながら載らなかった。自分の手応えのあるときにまた目指せたらいいと思うけど、やっぱり道のりは遠いな!


7月号の歌に𠮷澤ゆうこさんより評をいただいたのはこちらです。

ポケットのなかの小銭が鳴るひとに追い抜かされる春の訪れ

評が美しい。とても嬉しい評でした。ありがとうございました。

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