町のパン屋は今何をすればいいのだろう その1
町のパン屋
そう言葉にしてみると、町のパン屋とはなんなのだろうという疑問に私はぶつかっています
その日焼いた焼きたてのパンというものはやはり特別で、味も香りも全く別格のものです。これらを身近に味わえる場所として地域の一角にあるということは貴重なことではあります
ただ、そこにパンがあって売り買いがあるだけではたして「町のパン屋」足りうるのかというところで疑問に感じております
昨今の時代背景としては、コロナ化を経て物価高という流れがあります
特に物価高については留まることを知らず、連日手紙が届いては原材料の高騰を知らされます
とはいえ価格転嫁というものは容易ではありません
商品の販売額は、原価から考えるとする場合は割合で計算するのが基本ですが、おおよそ原価は25~30%あたりが妥当なところといえます
仮に原価30円のパンなら120円で販売するということですね
これが原価40円になれば160円です
消費者からしてみれば、とんでもない上がり幅です
しかもこれに加えて、人件費の高騰
うちは一人でやってるワンマンパン屋ですので関係ないですが、2024年5月23日現在愛知県の最低賃金は「時給1,027円」私の4倍くらい多いですね、ガハハ
まあつまりそんな感じなのでこの時代では、資金力もなく、大量仕入れできるわけでもない個人経営はとにかく弱い存在だということです
そういった販売額の面からは地域の要望に応えることはどうしたってできません。それにその日に焼いたパンという意味だけなら、別にスーパーだって良いわけです(あまり美味しいとは言えない場合が多いですけど)
スーパー併設ならわざわざ個人のパン屋に足を運ぶ時間も取られませんしね
時間だって今の時代は本当に貴重です
小規模のパン屋は数も多くは作れません
そりゃ作ろうと思えば作れますが、ロス問題が必ず発生します
先にも説明しましたが原価高騰の時代にロスは非常に痛いです。というより個人レベルでは3割余ったら致命傷です。潰れます。
作ったパンを捨てて店主が病んで終わりです。
しかし残念ながら、パン屋というものに行ってパンがたくさんないと品ぞろえを見てさえもらえないのです
仮に表に10種類30個パンがあっても大半の人は買ってくれません
「また来ます」と言って去っていくことがほとんどです
なのでパンは捨てる前提で作らざるを得ない場合もあります
かつてはそれでよかったですが、今はあまりにも時代に即していませんね
余るよりは割引して売ればいいというのもありますが
今の世の中、値段を下げると下げた値段でしか買ってもらえなくなります
そうとう上手くやらないと、失うもののほうが多いと考えています
こういった事情から、「あれ、町のパン屋ってもう必要ないのでは?」
と考えることが多くなりました
それなら「やめたところで地域で困る人もおらんじゃろ・・・」なんて考えて、お店の掲示板で「もう辛いっす、来客数は減るし、原価は上がるのに売上は下がるし、5月でやめるかもです」
なんて書いてみたりもしました
そんなところに2つのあることが起きました
たいしたことではないのですが、コロナ化を境に疎遠になっていた学童保育さんから「月に一度おやつとしてパンを作ってほしい」という依頼がありました
アレルギー対応もあり、乳製品不使用のメロンパンを開発し、困ったことにそれなりに楽しいとやりがいを感じてしまいました
そしてもう一つは、ここの学区から国立の中学校に行った女の子からの依頼です
なんでも、中学校の自己紹介で「自分の住んでる地域の紹介をしよう」ということでうちのお店を紹介したいから、10分くらいのインタビューをさせてほしいということでした
話を聞いてみると、小学校のころから通学路でうちのお店を見ていて「なんだかいいな」と思ってくれていたようです
町のパン屋の存在はもう社会には必要ないと思っていました
しかしこの2つの出来事は大したことではないにせよ、町のパン屋にしかできない何かがあるのではないかと思うきっかけになりました
おそらくスーパーのパン屋や繁盛店のお店じゃこうはなっていなかったでしょう
留まることを知らずに上がる原価と下がりゆく売上は置いといて、まだ私にはなにかできることがあるのではないかと。
町を地域と言い換えるなら「地域」とはなんなのか。
町のパン屋がそこになにかできることがあるのか。
商店街は衰退し、個人商店はほぼ消滅
ショッピングモールや駅前に店舗が集中するこの時代になにができるんでしょうか?
もちろんそこに店の利益も絡めていかなければいけないのは当然です
町のパン屋は今何をすればいいのでしょう
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