香菜夜話
夜分、強烈な香りに依って目覚めることと相成った次第である。
その激臭の元がわたくしの中から発するパクチーの香りである事に気づくまでそう時間を費やすことはなかった。
その日の夕食としてわたくしはトムヤムクンを食したのである。
人に依っては亀蟲とも称される、その甘く切ない香りをわたくしはこよなく愛している。
目覚める直前、わたくしはこんな夢を見た。
その中で亀蟲の大群から村を守るため鍬を抱えて立ち向かっていた。
如何様な作物を守っていたのかは定かではないが、無我夢中で鋤を振り廻していた。
振れども振れども数多の亀蟲は減る気配もない。
そうこうするうちにも横で鎌を装備し応戦していた仲間はやられたようだ。
「オラはもうダメだ!!あとは任せたきに!!」
なにゆえ亀蟲なんぞに敗れたのか
なにゆえ出自がわからない方言を使うのか
そしてなにゆえわたくしはその不自然さをつゆ程も疑問に思わないのか
おそらくフロイト博士だったらこう教授してくれただろう。
「それは性的な昂りを象徴しているのだ」と。
目を遣ると、30cmはあろうかという巨大な亀蟲が迫って来ていた。
閃光一刀、鋤は亀蟲を真っ二つに切り裂いた。
そしてその半身が口の中に入り込んだ。
その激臭は鼻腔を充満させた。
その瞬間、わたくしの夢とうつつの世界が反転した。
天気を知るべくテレビをつけると興味深いニュースを取り上げていた。
巨大なジュゴンが筆を咥えて今年の漢字を一文字で表すと言うのである。
おそらく『パクチー』であろうとわたくしは確信を持った。
今年一年は、誰も彼もがパクチーに夢中であったのだから。
わたくしは固唾を飲んでジュゴンが『パクチー』をボードに描き切るのを見守ることとした。
画面越しのジュゴンが雄叫びを上げた。
見届け人のお坊さんに筆を投げつけた。墨をたっぷりと含んだその筆先が僧侶の頭部をかすめ、あっという間に還俗してしまった。
次に飼育員のお姉さんに突進すると大きなヒレでプールに投げ飛ばした。
この晴れ舞台のためにどれほどの時間をかけてめかしこんだのだろう。
メイク動画を参考に仕上げたであろう地雷メイクが水面に再び顔を出した時には哀れ、黒い泪を流したかのような飼育員のお姉さんが映し出された。
その直後、画面はスタジオに切り替えられた。
わたくしはテレビを消した。
明け方にパクチーの夢を見たからであろう、寝ても醒めてもあのセリ科の雑草のことが頭から離れなくなってしまった。
わたくしの脳をある疑問がかすめる。
まだスーパーで売っていることも物珍しかった時代はコリアンダーと呼ばれていたはずだった、と。
そして第七次エスニックブームが到来した頃はシャン菜と呼称されていたはずだ、と。
そして今に至ってはパクチーの呼び名が主流となっている次第である。
そう、AV女優という呼称がいつの間にかセクシー女優とすり替わったように。
なにゆえパクチーは、あたかも所属レーベルの移籍の際に名前を変えるかの如く何事もなかったかのようにパクチーと名乗ったのであろうか。
その経緯も理由もわたくしは知らない。
そしてその謎を解き明かすことがわたくしの命題であるような気がしたのであった。
短期間の間に二回も呼び名を替える必要についてわたくしは推測する。
これには深い理由と事情があるに違いまい。
「名乗りたくても名乗れない」
所属事務所から名乗ることを禁じられたということはあるまいか。
今でも許されることならば「コリアンダー」「シャン菜」と呼ばれたいのに「パクチー」という名で活動せざるを得ないということは大いにありうる話である。
また、わたくしは違う観点からもある仮説を立てることとした。
「コリアアンダー派」「シャン菜派」「パクチー派」が凌ぎを削り抗争の上、「パクチー派」が勝利を納めた、と言うのは前説よりも説得力があるのではないだろうか。
いや、むしろこれが正解と言い切っても過言ではないのかも知れない。
この仮説について、理論付けていく必要があるようだ。
コリアンダー派とパクチー派、そしてシャン菜派が三巴の状態となり群雄割拠の興亡が繰り広げられていた。
そして、パクチー派がその戦いに勝利して、パクチーと名乗ったに至ったのであろう。
判官贔屓なのであろうか、わたくしは戦い敗れ去ったコリアンダー派に想いを馳せている次第である。
コリアンダーの呼称をこよなく愛する三名の若者が、いつしかその名をコリアンダーで統一することを夢見て誓いを立てる。
所謂、「コリアンダー園の誓い」である。
やがて優秀なコンサルタントを三顧の礼で迎えたコリアンダー派は大躍進を遂げることとなる。
されど強大な人数に勝るパクチー派には敵わず、やがて趨勢は苦しいものとなっていく。
最終的にはパクチー派による統一が成し遂げられた。
その結果、スーパーでも飲食店でも「パクチー」の名前で並んでいることがほとんどであるのが寂しいことこの上ない。
されどそれがいかに真実に近いものだったとしても、エビデンスがないことには実証とは言えないことをわたくしは知っている。
幼き当時の話である。その学園で、とある小さな事件が起こった。
クラスの女子の縦笛の上部、すなわち口を当てる部分が何者かに依ってすり替えられていたのである。
流行りの探偵漫画を読み耽ることにより、推理に精通していたわたくしは迅速にその犯人に心当たりを付けた。
勉強にもスポーツにも秀でたものはなく、普段から寡黙なクラスメートがいた。
こういう人間こそが、予想もしない変態的行為をするに違いない。
わたくしは意気揚々と学級会で、教壇の前に立ち、その説を唱えた。
そして証拠がない真実は真実とは言えないことをその時に知ることとなる。
クラスメート全員が机に伏せ、心当たりがある者は手を挙げるようにという教師の言葉で暫しの静寂が教室を包み込む。
そしてその数分後、再度教壇の前に立たされたわたくしは皆の前で謝罪する羽目となったのである。
こともあろうに、見ていたものが声を上げたのだ。
あの苦い思い出は、まさしくコリアンダーの味であった。
それ以来、わたくしは全ての仮説にはエビデンスを示すことを心がけている。
そして完全トリックの研究にも勤しむよう心がけている。
そう、今のわたくしに必要なのはエビデンスだ。
ちなみに、トムヤムクンのクンはエビを意味する。
わたくしはエビデンスを求めに本屋へ向かうこととした。
所謂、書を捨てよ町に出ようである。
町に出て書を求めることに何やら矛盾を感じるのだが致し方あるまい。
コリアンダー派がパクチー派に敗れ去ったことで、その呼称を剥奪されたのではあるまいかという仮説に辿りついたわたくしであるが、いかんせんそれを証明する術がないのだから。
自転車で15分程の場所にあるその本屋にわたくしは中高生の頃、足繫く通ったものである。
その店は、思春期の青少年にとって理想的な本屋であった。
「小学館の学習雑誌」と銘打った黄色と赤の看板に偽りあり、保有する雑誌のほとんどは大型店舗では取り扱うことのない物ばかり。いや、できない物ばかりのラインアップであった。
古希を遥に超えたであろう店主は、購入した雑誌を茶色い封筒に機械的に差し込み何も言わず差し出す。
まさに、理想的な本屋であった。
久方ぶりに店内に入ると、老店主は相変わらず一瞥もくれずに新聞に目を通していた。
「こいつ、一体幾つなんだろう」と思いつつも店主にこう尋ねる。
「コリアンダーについての文献を探している」
老店主は新聞紙をレジ台に置き、そしてゆっくりと立ち上がり雑誌コーナーへ向かうと一冊の雑誌を差し出す。
【アイラブコリアン~三日で覚えるハングル講座~】
どうやら言い直した方が良いと悟ったわたくしは再びこう尋ねる。
「パクチーについての文献を探している」
老店主は暫しの沈黙をした後、ゆっくりと口を開く。
「ようやく、辿り着いたようだね」
彼は奥の倉庫へ入っていった。
老店主は奥の倉庫へ入っていったきりなかなか戻ってこない。
どれほどの時間が経ったと言うのだろう。
老店主が立ち上がった時に押したストップウォッチを見やると、はや7分15秒が過ぎていた。
客がいるというのに不在にできるその姿勢、地元ならではの信頼と言えば聞こえがいいが壁という壁には「万引きは重罪。中学校に連絡。」の張り紙だらけで天井という天井には無数に監視カメラが張り巡らされている所に闇を感じることこの上ない。
暇つぶしに奥のコーナーで「ほんとうにあったHな話」を音読していると漸く老店主が戻ってきた。
「うちにあるパクチーに関する本はこれくらいだな」
渡されたその表紙には「こんやのおかず~家庭でエスニック気分~」と記載されていた。
「パクチーに対する文献を知りたければ、神保町に行くと良い」
老店主はくぐもった声でそう呟いた。
わたくしは一礼し、「こんやのおかず」と「ほんとうにあったHな話」を脇に抱え店を出る。
「どちらもおかずに関する雑誌だな」と気の利いた偶然に苦笑いをしつつ。
その明くる日、老店主の言葉を頼りにわたくしは古本の聖地である神田古書街へ向かうこととした。
新宿駅に降り立ち、わたくしは暫し思案する。
このまま都営新宿線に乗り込めば、約9分で神保町へ到着することとなるだろう。
しかしそれはあまりにも早計という物である。
都営地下鉄新宿線のホームに辿り着くにはあまりにも深いのである。長いエスカレーターをゆっくりと降りると、さらに階段を降りる羽目になる。改札からホームに辿り着くまで数分はかかる算段となる。
「急がば回れ」
先人は良くいったものである。
そう、総武線に乗り水道橋で下車し全速力で駆け抜ければ神保町には10数分で辿り着くのである。
しかもICカードで都営を使うと220円かかるところ、JRなら168円で済むのだ。往復なら104円が浮くことになるのだ。
神保町に向かうだけあり、頭脳が冴え渡るわたくしなのであった。
水道橋の改札を出るや否やわたくしは走り始める。
パクチーを求めて。いや、叡知を求めてと言った方が正しいのかも知れない。
ビッグエッグ、遊園地、場外馬券場、スパリゾート等の娯楽施設にわき目もふらずにわたくしは駆け抜けた。そう、わたくしはアカデミックだから。
そしてわたくしは辿り着いた。
「春日駅」に。
泣きじゃくりながら緩やかな下り坂を降りると、そこが古書の聖地であった。
パクチーについての古い文献をわたくしは手に入れた。
その書籍は『香菜夜話』と題され、かなり煤けた年季の入った物であった。
書籍の最終頁には「大正廿年印刷」とある。まさしく百年の刻を経てわたくしの手元に辿り着いたのだ。
早速、わたくしは頁を捲る。
源氏の某氏寛平九年唐より齎されし芹に似通う草を煮込み七草として振舞いしも其強烈なる香りに悶絶する者多数有りて佐渡へと流さるる
との記載が「異草奇譚」に記されているとのこと。
作者の見解では、この文献に登場する異様な香りのする草こそがパクチーでないかと言うことだ。そして、これが我が国で初のパクチーについて記述された文献であるのではないかと推測している。
寛平九年、西暦で891年。日本では平安時代のことである。
唐から持ち帰られた草を育て、それがセリに似通った物になったことに気づいたある人物が興味本位で七草粥に混ぜてしまったらしい。そしてこともあろうに仲間内に振舞った。
その強烈な香りに食した者たちは悶絶し、興味本位で振舞ったその人物は佐渡へと流罪を言い渡されたとのこと。
いつの世にも、面白半分でわけのわからないことをする人物はいるものだ。
そして、当時からパクチーのあの香りに魅せられる人物が存在していたことにわたくしは感動を禁じ得ないのである。
奇怪なる草とは香菜のことで異論あるまい。
パクチーを振舞う者について思いを馳せていると、ある一人の人物をふと思い出した。
挨拶程度の仲でしかなかった学生時代のクラスメートについてである。
自分がどれほどレモンサワーを飲んだだとか、どれだけセミナーに参加しただとか、そこでどんな人脈ができただのとかしか語らないいけ好かない人物であった。
その人物がいつものように語っていたバイト先自慢を思い出したのである。
神宮前に位置したエスニック系のダイニングバーでリーダーを任されていることを誇らしげに語っていた姿を。
その知人にせがまれ訪問したエスニックカフェで振舞われたのがパクチーの入ったサラダであったことを。
こうしている場合ではない。
早速、わたくしは久方ぶりに彼に連絡を取ろうと思い立った次第である。
生憎にも連絡先を知らないわたくしは慣れないSNSで探ることとした。
自己顕示欲を具現化したような人物である知人をSNSの海で見つけ出すことは駅前でクリーニング屋を探す程度の容易さであった。
バーベキューでの様子、海外渡航前の空港での自撮り、起業家セミナーでの集合写真。
そのラインナップにわたくしは彼が今でも何も変わらないことに胸を撫でおろした。
わたくしはSNSを介してメールを送る。
「パクチーについて知りたいことがある」
要件というのは、短くそして簡潔でいいものだ。
それが学生時代の知り合いであるならば尚更だ。
返信が来たのは、次の日の朝であった。そこにはこう記載されていた。
「ようやく、ここに辿り着いたようだね」
久方ぶりにあう知人とパクチーについて語らう夕べ。
の、はずであろうに目の前の知人は一向にパクチーについて語ろうとしない。
それどころか起業家セミナーでどれほどの人脈ができただとか、海外出張での武勇伝だとか犬も喰わないエピソードを嬉々として語っている。
痺れを切らしたわたくしは核心をつくこととした。
「それがパクチーとどう関係があるんだい??」
「ヤムウンセンはよくオーダーされてたな。あの店は、バイトの応募率も高くてスタッフになるのも一苦労なんだけどさ、そこでバイトリーダーに半年でなったのは前代未聞だったらしいよ」
漸くパクチーの話題になったかと思いきや、再び自分語りに移行されてしまう。
わたくしは多少苛立ちを覚えた。
「だから、それがパクチーとどう関係があるんだい??」
「だから、焦るなってば。そこまでパクチーに知りたいなら、是非とも連れてきたい場所がある。」
知人はニヤリと笑った。
雑居ビルの階段を上がり、扉を開くと薄暗い空間と派手なネオンカラーが散りばめられた
「ここは、俺の庭でさ。パクチーについて聞きたいだけ聞けばいいさ」
目の前にはロの字型のカウンターが巡らされている。その中にはうら若き淑女達が可憐な笑顔を振り撒き、そしてその対面にはうす汚れた酩酊者達が加齢な笑顔を振り撒いていた。
知人の言うままに、随分と高く聳えた椅子に腰かける。
「ご指名はございますでしょうか」
初めて来た店で指名も何もあるまい。わたくしが求めているのはただ一つなのだから。
「パクチーについて知っている方を探している」
わたくしはこう答える。
ボウイさんは怪訝な表情を浮かべるもすぐさま作り笑顔でこう答える。
「フリーですね。」
「やっと来てくれたんですね」
目の前に立ったその女性のネームプレートにわたくしは運命的な物を感じずにはいられなかった。
『香菜』
そう、まさしくパクチーであった。
「引きが強いね。彼女はこの店のナンバーワンなんだ。」
知人がニヤニヤと語り掛ける。
早速、わたくしは本題に入ることとする。
「その名前は、やっぱりパクチーに由来しているのでしょうか?」
香菜さんは一瞬、真顔になった後再び笑顔に戻りこう返す。
「なんでパクチー??」
「いや、その名前は親御さんがきっとパクチーに因んで名付けてくれたのだから誇りに思ったほうがいい。いや、思うべきだ」
「いや、これ源氏名なんだけど。」
つまり、源氏の出身だと言う事であろう。ここでようやく納得した。
おそらく彼女は件の「香菜夜話」に記載されていた公家の末裔で違いあるまい、と。
彼是、三十分程は経ったであろうか。
わたくしは香菜さんからパクチーについての有益な情報がないかひたすら尋ねた。
香菜さん曰く、実家は新潟であることと昼間は別の仕事をしていること、休日はネットフリックスでドラマばかり見ていることと、パクチーの香りが苦手であるとのことだった。
ちっとも有益な情報は得られなかった。
「そろそろ時間なんだけど、もう少しここにいていいかな?」
無論のことである。わたくしは香菜さんからまだ何もパクチーについての有益な情報を得ていないのである。
「おいおい、さっきから何杯も香菜ちゃんに飲ませているし大丈夫かよ。会計は別でお願いするよ」
横にいた知人は頗る機嫌が芳しくなかった。どうやらお目当ての女の子がなかなかつかないようである。
「いいかげんにしろよ!!」
痺れを切らした知人がカウンターを叩く。向かいでは別の客がシャンパンを開けようとしていたところであった。その音、その権幕に驚いた客の手元が狂いシャンパンは、悲しい哉、香菜さんに向かって発射されたのである。
ずぶ濡れになり、タオルで顔を拭く香菜さんの様子にわたくしはある既視感を覚えた。そう、先日見たテレビ番組でのことを。
「ジュゴン」
香菜さんはタオルで拭くのを止め、驚愕した表情で呟く。
「なんでそれ知ってるの??」
香菜さん曰く、昼間の仕事と言うのは水族館で飼育員をしていること、その水族館は薄給なこと、そして掛け持ち禁止なことであった。
パクチーについての有益な情報は相変わらずちっとも得られなかった。
香菜さんの爪は鮮やかに翡翠色で染め上げられていた。
「これはやっぱりパクチーの色だから?とても艶やかでいい色だ。」
わたくしは素直に感嘆する。
「違うよ。でもありがとう。」
香菜さんは何かを思いついたように上をみやり、そしてニッコリと微笑む。
「パクチー描いたネイルもいいかもね!そうだ、次はパクチーを持って来てよ!それ見てやってみるから!!」
無理矢理約束を取り付けられて、今宵は店を後にすることとした。
ボーイがお会計を示す。折り畳みのホルダーを開きわたくしは啞然とする。
89、710円也。
「すっごい!!パクチーだ!!偶然!!」
笊会計のこのような店にしては小粋な計らいであったが、聊か高すぎるのではあるまいかと思ったがわたくしはカードを差し出す。
「710円はわたしからサービスするね!!」
知人はカウンターにもたれてまだ白河夜船を漕いでいた。
その船には大きな穴が開いていることすら知らずに。
あくる日のことである。
わたくしは香菜さんの言う儘にパクチーを求めてショッピングモールに立ち寄った。
そこのグリーンコーナーでわたくしは「コリアンダー」の名前を久方ぶりに見かけたのである。
それは、袋に詰められたコリアンダーのシードであった。
そう、コリアンダー派は滅亡していなかったのだ。
細やかに今でも活動していたのだ。
わたくしは感涙を抑えることができず、人知れず泣いた。
数年ぶりに、大声で。人目も気にせずに号泣した。
小さな子供と女子高生が指を差して笑った。
係員が寄ってきた。