読書感想文(13)和泉式部作、近藤みゆき訳注『和泉式部日記』(角川ソフィア文庫)
はじめに
昨日、友人が「和泉式部日記」を読んでいる事を知り、久しぶりに読みたくなったので読みました。『和泉式部日記』は私にとって人生を変えた一冊です。高三の夏、この本を読んで進路を理系から文系にすれば良かったなと思いました。結局文転を決意したのは冬だったので慌ただしい受験期になりましたが、今となっては良い思い出です。
感想
感想といってももう何度も読んだので新鮮味はありません。やっぱり良いなぁと思いました。でもせっかくなので少しでもこの作品の魅力を伝えられたらなぁと思って、紹介を書いてみます。
紹介
『和泉式部日記』はリズムがとても良いです。なので今回は全て音読しました。文庫本でたった80ページなので、しばしば解釈のために止まることがあっても3時間弱で読み終わりました。和歌の引用なども多いので注釈を見るのが大変かもしれませんが、短いので比較的読みやすい作品だと思います(「源氏物語」の5%未満の長さです)。
さて、まず「和泉式部日記」とはどんな話なのでしょうか。それは、ずばり「和泉式部と敦道親王の恋物語」です。さらにわかりやすくするために少し解説すると、和泉式部は受領(県知事的な役職)の娘、敦道は親王(天皇の子)です。つまり、身分を越えた恋物語、というわけです。恋愛モノでの王道パターンかもしれませんね。
もう少し人間関係を説明すると、帥宮には既に北の方(正妻)がいます。現代では不倫は犯罪ですが、この頃は愛人がいるのは割と普通のことでした。しかし建前上は正妻を最も愛さなければならないので、愛人の方は惨めな気持ちになります。こういうのも今と同じかもしれません。また、この帥宮は実は和泉式部の元カレの弟です。元カレの為尊親王は流行病で亡くなってしまっています。その約一年後、その弟である敦道親王から便りがある場面から物語が始まります。
この作品は短いのですが、想いが通じ合う喜びやすれ違いなど様々な恋愛模様が描かれます。勿論今の恋愛とは異なる部分も多いのですが、今に通ずる部分も多いと思います。
自然の描写(特に月、雨)も美しいのですが、これは古典に多少慣れている人でないと感じにくいかもしれません。和泉式部は有名な歌人なので、和歌世界が散文でも巧みに表現されています。私の最も好きな「有明の月の手習文」という場面を読んだ時は、思わず涙が溢れそうになりました。
このようにオススメしても、やはり古文というのは読もうという気になりづらいものです。しかし『和泉式部日記』はなんと漫画化されています。
いがらしゆみこ『マンガ日本の古典6: 和泉式部日記』(中央公論新社、1999年初版)
https://www.amazon.co.jp/和泉式部日記―マンガ日本の古典-6-中公文庫-いがらし-ゆみこ/dp/4122035082
概ね原作通りなので、興味を持った方は是非この本から読んでみてほしいなと思います。ただやはり古文の美しさ、特に韻文の美しさというのがあると思うので、余裕があれば角川ソフィア文庫等でも読んでみてほしいなと思います。
おわりに
「和泉式部日記」については、書こうと思えばいくらでも書けるので敢えて簡単にしておきました。でもやっぱり色々と書きたいことがあるので、いつかもっと詳しく書きたいなぁと思います。
また一応弁明しておきたいこととして、作者等の諸説については理解した上で割愛しています。ただ書物は読み手に委ねられる部分が多分にあると思っており、今回読んだのは『和泉式部日記』である事から日記として読むのが一般的な読者の在り方なのではないかと考えています。
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