「指の骨(高橋弘希著)」を読む
「指の骨(高橋弘希著)」 読了
作品の内容には触れません
雑文です
本作の内容や解説は、良識ある方のレビューをお読みください
2014年の芥川賞候補の作品ですが、随分読むことに躊躇してました
宣伝文で「野火(大岡昇平著)」と対比され、タイトルからもカニバリズムがクローズアップされているような気がしていたので、
当然であるが、この作品(野火もそうであるが)の本質はそこではなく、極限の人間、戦場での生きることへの葛藤と執念だと思われます
戦争経験などあるはずもない若い作家の描写には圧倒される、それが本当にリアリティーがあるのかの判断は同じく経験を持たないワタシを含めた今の読者にはわからない
(これが野火が書かれた時代との決定的な違いなのかもしれない)
但し、それがリアルであると思わせる、相当な筆力であろう
我々が考えることは、それがリアルであるかどうかではなく、この読書を通じた体験から何を感じるか、
いわゆる読書の醍醐味となろう作品である
極限の中で生きることへ執着したとき、何を感じるのか、何が感じられるのか、何が聞こえてくるのか、
そして、その「音」とは、
息遣いでも無く、鼓動でも無い「音」
この作品では、静寂な文脈からその音が感じられ、その音に共鳴してしまう
自分自身の日々の生活に置き換えたて考えると、その音を聞くような状況に陥ることはおそらくほぼ無いのではなかろうか、
それは、今生きていることを当たり前の時間ではなく、生に対し真摯向き合っているかを問い、その答えに追い詰められたとき、自分に聞こえてくる音があり、その音が何であるか解るのかもしれない
そんなことを感じさせてくれた奥深い作品でした
尚、ワタシは怖くて、まだしばらく考えることはしないが
このジャンルの作品を読むと改めて感じるのは、
テレビのニュースでの戦火は、モニターの向こう出来事ではない、
ということ
数十年前に読んだが、もう一度読むには相当な覚悟がいる
まだ観ていない
何故かこの作品を再度観たくなった