旅の思い出には、いつも本を一冊
旅行、というか、遠出をするたびに、本を買ってしまう。荷物になるのはわかっているのに、子どもの頃からの習慣なのだ。
わたしが育ったのは、日本海側にある離島で、本土に行くまでは船で二時間以上かかる。
寝ていけばいいし、実際そうするんだけど、眠くなるまでが退屈。
元々、読書が好きなのもあって、島の外に行くときは、いつもカバンに文庫本を一冊入れていた。
だけど、家から持っていった本は、行きの船でだいたい読み終わってしまう。
帰りに読む本がないぞ、ということで、いつも船に乗る前に本屋に立ち寄り、好きな本を一冊買って帰るのが、お決まりのパターンだった。
大人になってもその習慣は変わらず、旅行に行くときは、キャリーのなかに本を一冊。
高速バスで移動する時は、二冊のこともある。
そうして本をお供に持っていったにもかかわらず、旅先で検索するのは、その土地に素敵な本屋さんがあるかどうか。空き時間があれば、その土地の本屋さんをのぞきたい。ブックカフェでもいい。本はどこでも買えるけど、知らない場所で、初めての本屋さんを訪れ、行った記念に一冊買うという一連の流れが好きなのだ。
旅先で、色んな本屋さんに行った。置いてある本は同じだったりすることはあるけど、陳列の仕方、お店の雰囲気、それは全然ちがう。
Googleマップとにらめっこしながら、知らない町をうろうろ歩く。ちょっと緊張しながら、本屋さんに入る。本当はいっぱい買いたいんだけど、スーツケースに入らないと困るので、迷いに迷って一冊選ぶ。
お家に帰って、スーツケースから買った本を出すと、わたしはその本を売っていたお店のことも一緒に思い出す。この本は、ライブに行く前に買った一冊。この本は、新婚旅行先で買った一冊。これはあの時の古本市で、おすすめされて買った一冊。お店の雰囲気や、店主さんと交わした一言。お店に向かうまでの街の雰囲気。
アルバムを開くみたいに、本のページを開くと旅の思い出がよみがえる。
旅の思い出に写真を残す人は多いと思う。わたしは、写真をあまりとらない代わりに、本を一冊買うのかもしれない。
今週末も、初めての場所に行く予定がある。もちろん、近くの本屋さんもリサーチ済みだ。今回はどんな素敵なお店に出会えるだろうか。運命の一冊はあるだろうか。メインの予定と同じくらい、わたしは今からワクワクしている。