読書感想 生活フォーエバー 寺井奈緒美
大人になったら、自動的にちゃんとした人間になるもんだと思っていた。
だけど、実際はどうだろう。
職場でも家でも、ドジばかり。いまだに、知らない人が相手だと、頭がフリーズして何を話したらいいのかわからなくなる。
野菜を腐らせ、コーヒー豆をばら撒き、本屋とライブで散財する。
noteの記事が書けないと言ってはめそめそし、目覚ましを止めては、優雅に二度寝をかます。
想像していた30代とは、だいぶかけ離れてしまったなあ、と思う。
だからだろうか、自分と同じように、やらかしながらも生きている人をみると、仲間を見つけたようで嬉しくなってしまう。
寺井奈緒美さんの、「生活フォーエバー」を読んだ。短歌と、短めのエッセイが納められている。
書かれているのは、彼女の生活のささいな場面ななのだが、最初の数ページを読み、わたしは会ったことのない寺井さんのことを好きになってしまった。
勝手に仲間あつかいして申し訳ないけれど、おそらく寺井さんもドジ仲間。
野菜をダメにしたとか、熱をもったPCを冷ますために保冷剤を当てたとか、地味なエピソードが、いちいち面白い。
MacBookを保冷剤で冷やす彼女の姿を想像して、わたしも一緒になって、Macが復活しますように、と念を送ってしまったくらいだ。
(結局、ダメだったみたい。悲しいね)
あるよねー、わかるよ、と、友だちの話を聞いているような気分で読み進める。
気に入った箇所を夫に教えてあげようと思うが、笑ってしまって朗読できない。
そうして、ZINE版の最後のページ、わたしは、なんだか泣きそうになってしまった。
ちょっと長いけど、引用する。
ごちゃついた部屋で本を読みながら、わたしは、寺井さんや、どこかにいるドジ仲間の姿が見えるような気がした。
そうなんだよなあ。
シンクがびしゃびしゃになっても、洗濯物の山に途方にくれても、どうにかやっていくしかないんだよね。
あー、やっちまったー!と思っても、暮らしていくことをやめるわけにはいかないし、わたしがいきなりシャッキリウーマンになる可能性も低い。
どうせだったら、なるべく面白がっていきたいなあ、と思う。
寺井さんのエッセイや短歌は、わたしのドジで地味な毎日も悪くないかもな、と思わせてくれる力がある。
これを書き終えたら、食器を洗って、明日のために米を炊こう。
きっと今ごろ、どこかの同志たちも、眠さや、やらかしと戦いながら、生活を回すために立ち上がっているだろうから。
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