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読書感想 雨とポプラレター
謝っても許してもらえないこと、ありますよね。
許すかどうかは相手が決めることですが、やっぱり悲しいきもちになります。
でも、謝る機会すら逃してしまうことと、どちらがつらいのかな、と、そんなことを考えた一冊を紹介します。
「書痴まんが」というアンソロジーに収録されている、「雨とポプラレター」という話。
主人公は、中学生くらいの男の子二人。
二人は、少女マンガにハマって、貸本屋に借りにいくんですよ。
で、借りた本を家に持って帰ってくるんだけどさ。一人が、少女マンガのページを無断で切り取るんだよ。ここだけ上手に切り取れば、バレないよ、とか言ってさ。
よくないことだって思いつつ、マンガの続き読みたいし、店のおばあちゃんも気づいて無さそうだしっていうので、二人でお気に入りのマンガのページをこっそり切り取るんだよ。
何度か繰り返すんだけど、ついに店のおばあちゃんにバレて叱られるんですよ。二人とも、「そうだよな、万引きと同じだもんな」って思って、おばあちゃんに謝罪して、お店のお手伝いすることにしたんです。
ここで終わりならいいんだけど、二人のうちの一人が、他の貸本屋でも、同じようにマンガを切り取ってたって告白するんですよね。
それで、二人そろって、本を返しに行くんです。
多分だけど、バレたくないっていうきもちと、お店のおじちゃんに叱られたら、ちゃんと謝ろう、っていうきもちと、あったんじゃないかな、って思うんだけどさ。
で、ドキドキしながら、本を返しに行くんだけど、店のおじさんは気づいてないのか、なんにも言わないの。
帰りぎわ呼び止められて、ぎくっとするんだけど、「おつりだよ」って言われて終わり。
少年二人の、とりかえしつかないことをした、というような、なんとも言えない表情で、物語は幕を閉じるの。
ほんとは、おじさんに、素直にごめんなさいすればよかったんだよね。
でも、言い出せなかった二人のきもちもわかる。
この二人は、もしかしたら、もうこの貸本屋には来れないかもしれないし、楽しみだったマンガを読むたびに、苦いきもちがよみがえるかもしれない。
素直に話して、ガツンと言われるのと、謝る機会を逃してしまって、ずーっとモヤモヤを抱えるの、どっちもやだよね。でも、前者のがマシかな。
貸本屋が存在していた時代って、今みたいに気軽に本を買うのも難しいような時代だったみたいだね。
それを思うと、悪いことだけど、切り取って自分のものにしたい、と魔がさすのも、わかんなくはないよね。
どうなったんでしょうね、彼らは。
後日、お店のおじちゃんに正直に伝えることができていればいいんだけど。
でも、それは読んでいるわたしにはわからない。
すっきりはしないけど、なんだか妙に心にひっかかるお話でした。