【読書】かもめのジョナサン
『かもめのジョナサン』リチャード・マンソン
かもめの絵がプリントされた、濃紺のジャケット。
パラパラとページをめくると、所々にかもめのグラビアが挿入されている、一風変わった文庫本。
すぐに飛び込んでくる一文、、
この世のどんなことよりも、ぼくは飛びたいんです‥
これは、一風変わったかもめのお話、、
あらすじ
主人公かもめのジョナさんは、来る日も来る日も、低空飛行に明け暮れている。
かもめは普通そんなことはしない。
両親の心配を振り切り、飛行技術を磨くジョナサンはついに、かもめとは思えないほどに、高度な飛行を会得した。
そんなジョナさんを長老は異端とみなし、群れから追放する。
ジョナサンは、飛行の素晴らしさを仲間に伝えたかった。
狭い範囲にひしめきあう仲間たちは、すぐに魚が不足し、腐ったパンを食べたりしていた。
追放後、何年もたち、ジョナサンはさらに飛行技術を高めていた。
ある日、輝くかもめたちに誘われ、ジョナサンと同じように飛行技術を極限にまで高めた、かもめの群れに辿り着く。
新たなかもめたちとの出会いに、ジョナサンはさらに成長し、もといた自分の群れを導く使命を感じる。
群れに戻ろうとすると、若き日のジョナサンと同じように、異端とみなされ、群れから排除された、フレッチャーと出会う。
次第に、ジョナサンの教えを請おうとするかもめは増え、ジョナサンはフレッチャーに、この群れを導くよう言い残し、次の群れへと旅立って行った。
かもめという寓話の世界
主人公、ジョナサンが暮らすかもめの群れには、人間の社会的な部分が、色濃く反映されています。
群れは、数千というかもめの共同体で、日々餌を摂ることと、どこで寝るかに、すべての関心を払っています。
たくさんかもめがいるのに、同じ空域で暮らしているため、餌が不足したり、場所の取り合いになって、争うこともしょっちゅう。
まるで人間の都市みたいだ。
すぐにそんなイメージが浮かびました。
変わり者ジョナサンは、食事も睡眠もそっちのけで、低空飛行を会得しようとします。
父親や母親に心配され、群れからは白い目で見られる。
はみ出しものの、周囲から理解されない、心情が次第に描かれていきます。
制約
思考を欠いた無責任な行為ゆえに‥汝はカモメ一族の尊厳と伝統を汚した‥
集団生活で、否応なしに強いられる、協調。
本作で語られる、カモメの集団は、ほとんど個性がない、、
ジョナサンは際立って異端視されて、群れを追い出されてしまうのです。
その集団で自分が生活しているとき、「あの人はなんなんだろう?」「なんで、あんなおかしな言動を?」と感じることがあります。
みんな均一だから、余計に目立つのでしょうが、
他からみれば、おかしいのは、その集団自体なのかもしれない。
ジョナサンの追放は、無個性による、個性の撃退にも思えるのです。
それは、ユニクロやダイソーなどの、安価で統一されたデザイン性にも似ていて、、
最も大切なこと
生活の中で最も重要なことは、自分が一番やってみたいことを追求し、その完成の域に達することだ。そして、それは空を飛ぶことだった。
少年の純粋さ。
いてもたってもいられなくなって、そのことしか考えられなくなる。
ジョナサンの空中飛行には、そんな無邪気で、夢中な、子どもらしさもあり、、
自分の感性を大切にする、尊さなようなものを感じます。
敬天愛人
もっと他人を愛することを学ぶことだ
新しい群れで、ジョナサンは、他人を愛するという、それまでの生き方とは違う選択肢を迫られます。
自分のしたいことをしている人で、周囲に理解されず苦しんだり、孤独に悲しむ人がいる。
人を愛する、それは人から愛されることに繋がることを教えたくて、筆者はジョナサンにこの言葉を贈ったのだと思います。
自由
つまりカモメにとって飛ぶのは正当なことであり、自由はカモメの本性そのものであり、そしてその自由を邪魔するものは、儀式であれ、迷信であれ、またいかなる形の制約であれ、捨てるべきである、と、
「君は何に縛られているの?」
というメッセージを感じました。
それに、この本が、教育者・教育研究者の間で読み継がれる理由が、この一文にあるのかなと、、
よくよく考えてみれば、捨てるべきモノで溢れているのが、人間なのかもしれませんね。
まとめ
きみの目が教えてくれることを信じてはいかんぞ。
目に見えるものには、みんな限りがある
きみの心の目で見るのだ。
すでに自分が知っているものを探すのだ。
そうすればいかに飛ぶかが発見できるだろう
「星の王子さま」にも通じるよう内容ですが、また違った角度から描かれている作品でした。
ジョナサンは、孤独だったのでしょうか?
やりたいこと(よりよく飛ぶこと)の先に、何が待っているのか。
ただ単に「自由に生きよう」とう、ざっくばらんなテーマではない。「どうやって自由を手に入れて生きていく」。それが主題であったと、読了後に感じました。