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言語教師の文法知識

今回は言語教師の文法知識についてのお話です。ことばを学び、使うだけでなく、教える人の持つ文法知識がどのようなものなのかをお話しします。

まず、言語教師は言語学の知識を身につけています。一般言語学と呼ばれる、人間の言語一般を包括する理論的基盤を学び、日本語学、英語学という個別言語の研究に触れています。最初は取っつきにくい領域ではありますが、国語科の教員免許を取得する時には「日本語学」、英語科の教員免許の場合は「英語学」の単位を大学で修得することが義務づけられていますから、私たちはみなこうした学問の基礎に当たる部分は大学で教わっているわけです。

言語学の知識を持つことの最大の利点は、それぞれの言語の母語話者が無意識に使っていることばの背後にある原理に迫ることができることにあります。この中には外国語を楽に学べる人にとっても意識に上らないものがあります。つまり、英語母語話者も英語が得意な学習者も気づかない英語のしくみが言語学の研究成果によって浮かび上がってくるわけです。こうした知識が英語学習の初期の段階でつまずく学習者を救うのです。同じことは日本語の分析にも当てはまります。母語であるがゆえに気づきにくいことを言語学が気づかせてくれることもあるわけです

母語話者が外国語学習者向けに書いた文法書を読み込むことも、言語教師には必要なことです。英文法の本であれば、こうした本に書いてあることは英語としてもちろん本物です。しかし、特定の母語の学習者を想定した書いたものではないため、日本語母語話者が英語を学ぶ時のつまずきが配慮されているとは限りませんから、その点にも留意しながら読み込んでいきます。これらの教材は練習問題の作り方の面からも参考になるところが多々あります。

高度に言語学的でない、一般の学習者でも読める文法書、それも日本語で書かれたものを読むことも、当然あります。これらは文法用語の使い方を知るために読むという側面もあります。言語研究の成果を積極的に取り入れているものもあり、その際には特に文法用語の扱いに注意して読んでいきます。従来の文法書にはない概念をどのように日本の教室に持ち込んだらよいのかというところで参考になるからです。逆にこの手の文法書に書いていないことでも、学習者の文法知識の習熟を考えれば授業で扱わなければならないものもあります。そこを補うのも私たちの仕事です。

予備校で教えている場合、大学入試が本番を迎えるこれからの時期がこうした勉強を集中してできる時期になります。この時期にどれくらい学べるかが次年度の授業の質の違いを生み出します。5年間勉強を積み重ねた言語教師と、5年間ほとんど勉強していない言語教師の差は授業の差にはっきり表れます

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