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題名読書感想文:22 自己矛盾でない自己矛盾

 題名だけで感想をひねり出して何とかする。それが題名読書感想文でございます。

 今回のテーマは「自己矛盾」です。自己矛盾とは自分の中で言動が一致せず、つじつまが合わなくなってしまうことを指します。具体的な言葉で表現すると例えば「冷たい炎」みたいなものでございまして、このように敢えて矛盾する言葉を作る手法は撞着語法どうちゃくごほうとも呼ばれ、古来より使われてきた表現方法のようです。

 となると、見方によっては題名読書感想文も自己矛盾っぽいですね。丸々一冊読んで書くのが読書感想文のはずなのに、題名でどうにかするとか言っちゃってるわけですので。

 それはともかく、今回は敢えて矛盾を狙った題名ではなく、結果的に矛盾っぽくなってしまったと思われる題名をいくつかご紹介いたします。

 まずは「あの人は熊」です。

 「人」と言った矢先に「熊」です。まさに「舌の根も乾かぬうち」というやつです。

 もちろん、何かの例えという可能性はあります。「熊みたいな人だね」なんて感じに。それから、フィクションみたいな割と何でもありな世界だったら、熊になる人が出てきても全く問題ありませんし、題名も矛盾しなくなります。

 それでも、何気に聞き慣れない言葉であるせいか、「あの人は熊」なんて言われたら人なのか熊なのか分からなくなってしまいそうです。特に、慌ててる時に聞くのは要注意です。

 こんな題名もあります。「猫になった山猫」です。

 「野生の山猫が家猫になった」という意味に読めるとは思うんです。しかし、この題名だとどういうわけか「山」の印象が薄くて、「猫が猫になったよ」みたいな風にも読めて面食らうんです。猫は猫なのか。それとも猫じゃないのか。いくらでも混乱できる題名です。

 それにしても、どうして「山」の印象が薄くなるんでしょう。画数が少ないからでしょうか。

 続いては「無料低額宿泊施設の研究」です。

 無料低額宿泊施設とは、社会福祉法によって定められた、生活に困窮している方のために無料または低額で止めたりする施設なんだそうです。

 つまり、「無料または低額の宿泊施設」であり、「無料・低額宿泊施設」と表現してもよさそうなものですが、「なかぐろ」すらつけずに無料と低額をくっつけてしまったため、無料なのか低額なのかよく分からない言葉に見えてしまうんです。

 しかし、上記サイトをご覧になってもお分かりの通り、公的な機関でも用いている言葉のため、「無料低額宿泊施設」で正解なわけです。「『・』なんかで分けなくても正しい意味が読み取れるだろ?」ということなんでしょう。無料なのか有料なのかで混乱する私は修業が足りてないに違いありません。

 続いては「宇宙地球科学」です。

 こちらは宇宙なのか地球なのか分からない題名です。もしくは「地球だって宇宙の一部なのになぜ分離させるのか」と思わせる題名ですね。出版社側も混乱しやすい題名だと思ったのでしょう、表紙の題字は「宇宙」で改行しています。

 この題名、恐らくメインは「地球科学」です。そういう学問があるのは知っています。地球について科学的に調べる学問ですね。略語である「地学」はご存じの方も多いでしょう。

 でも、この本は宇宙についてもガッツリ触れている。題名が「地球科学」だけでは、名が体を表せていません。

 宇宙について研究する学問は通常、天文学と呼ばれています。

 しかし、「天文学・地球科学」では題名としてあまりにもそのまんまです。それに、ふたつの学問をただ並べるのは題名としてはまとまりがない気もする。だったら、「地球科学」の頭に「宇宙」をつけてしまおう。そうすれば、たぶん内容を言い表せているし、何となく言ってることも伝わるだろう。そういう思考の結果、出来上がった題名なのかもしれません。なかなかの冒険です。

 ちなみに、ウィキペディアの「地球科学」の項目に不穏な一文がありました。

近年では太陽系に関する研究(惑星科学)も含めて地球惑星科学(英語: earth and planetary science)ということが多くなってきている。

 地球惑星科学。地球なのか惑星なのか。地球だって惑星なのに、惑星からわざわざ地球を分離させた意味とは何なのか。などなど、これまた「宇宙地球科学」と似たような混乱を招く可能性がある題名です。よく考えたら、惑星と地球の間に「・」さえ入れないという、「無料低額宿泊施設」のような側面もございますね。

 調べてみたら、ちゃんと「地球惑星科学入門」という本がありました。

 岩波書店では「岩波講座 地球惑星科学」というシリーズも出版されています。

 さて、最後は「炎の第3種冷凍機械責任者 テキスト&問題集」です。

 こちらは資格本のシリーズとなっておりまして、他の資格でも「炎の〇〇」という題名になっています。しかし、上記の書籍は「炎」と「冷凍機械責任者」の相性の問題で、一見すると「冷たい炎」みたいな矛盾に見えてしまうんです。

 別に冷凍「機械」ですし、「炎」だって単なる例えですから、全然矛盾していないんですけれども、「冷凍」のインパクトが強すぎて、矛盾っぽさが半端ないんです。ちなみに、表紙には「クールに燃えろ!」の言葉もあり、ちゃんと撞着語法してます。

 炎シリーズにはこんなものもあります。「炎の消防設備士第4類(甲種・乙種) テキスト&問題集」

 こちらは「消防なのに炎ってマズくないすか、大丈夫っすか」という感じの矛盾と申しますか、なんか心配になりそうな題名です。ただ、やっぱり矛盾っぽさでいくなら冷凍機械責任者のほうが上のように思われます。

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