「方眼編なのに曲線」のドイリー
『美しいレース編』(昭和39)という本から編んだ作品を、すでに5点(大作2点、ドイリー3点)ご紹介しました。
同じ本からの作品自慢を、もう少し続けさせてください。とても気に入っている作品です。自分で編んだからではなく、もともとのデザインが良いからです。わずかに凸凹しているのは大目に見てください。
本に載っていた写真はこちら。こっちのほうが模様がくっきりしていますね。長編みを編むときにしっかり糸を引き出して編んでいるからだと思います。
四角とか六角を直線的に区切って方眼編みにしたドイリーは時々見るけれども、こんなふうに曲線になっているのは珍しいです。区切りの線が曲線だから、模様の部分のグリッドも微妙に歪んでいます。でもその歪みがそのままデザインとして生かされている。そこがステキだと思います。
もしこれがパッチワークだったら、こういう形を縫い合わせるのは直線にくらべて難しくなります。でもレース編みではむしろ自然。「曲線になりやすい」という編物の特性をうまく生かしています。
こういうのは頭で考えていてもできないですね。かぎ針編みをよく知っている人が、実際に手を動かしながら作り出していったデザインだと思います。
編図の一部をごらんください。拡大してみると、すべて手描きであることがよくわかります。パソコンなんてなかった時代(昭和39年)だから当然ですが。定規やコンパスでは描きにくい微妙な形の全体を、破綻させることなく見事に図解しています。こういうのは本当に職人技です。
こういうユニークなデザインも、もし放っておいたら、古本の中で朽ち果てて消滅してしまうかもしれません。
そう思って自作の写真とともに Ravelry (編物に特化した国際的サイト)で「パターン登録」したら、そこそこの反応がありました。登録名は「Windmill Filet Rose」です。
自分が「良い」と思ったものを外国の方にも認めていただけてうれしかったです。デザイナーの「松本すみゑ」さんにも光を当てることができました。