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Vol8.「自分ごと化を考える」―L.Aの山火事の空と、ダボスの空はつながっている。


 最近、「自分ごと化」という言葉に、やたら目が行く。自分ごと化するにはどうしたらよいか。自分ごと化できないから脱炭素活動もなかなか進まない、といった使われ方がされている。(一般市民に)自分ごと化してもらうために損得勘定が入ってくると行動が変わってくる、といった残念な言葉も見かける。だからであろうか。省庁やその関連のサイトでもお金に換算して「こうするとお得」と訴求している例のなんと多いことか。私たちは本当に損得勘定だけで動いているだろうか。「自分ごと化」が必要なのは、私たち受け手側ではなく、発信する側、推進する側ではないだろうか、と最近では思うほどだ。

博報堂が2023年10月に実施した第5回「生活者の脱炭素意識&アクション調査」結果を目にした。タイトルは、『「脱炭素」の認知は9割超。一方、脱炭素社会に向け行動している人は3割に留まり、行動しない理由は「今よりもお金がかかりそうだから」がトップ』、とあった。調査結果に対する所見は、次の通り。
…「脱炭素」は広く浸透し、ほとんどの人が知るワードとなりました。一方で、脱炭素社会に向けて行動している人の割合は2年前から変わっておらず、多くの人が「脱炭素という言葉は知っているが、行動に移せていない」という課題が浮かび上がってきました。脱炭素社会に向けた行動は「お金がかかりそう」「手間がかかりそう」「不便になりそう」といったネガティブなイメージがあり、忙しい日常の中で自分事として積極的に取り入れたい行動になっていないことが背景にありそうです。昨年の夏は、連日の猛暑や最高気温の更新などを通じて「気候危機」を実感した人が多く、「節電」や「破棄食品を減らす」など日々の生活の中でできるところから行動を始めた人が増えました。このことから、身近な危機実感を入り口とした行動への結び付けが、今後の脱炭素行動を促す鍵となりそうです。(分析担当)

・博報堂「第五回 生活者の脱炭素意識&アクション調査」(2024.3.18発表)

・ニュースリリース 202403181100.pdf 

ニュースリリースには<調査結果のポイント>が記されているので、ぜひ目を通して頂きたい。実際、とても丁寧な調査内容であった。ここで問題提起したいのは、アンケートに応える側の姿勢だ。私たちはほんとうに脱炭素に向けた行動ができていないだろうか?具体的に何をしたらいいのかわからないところにいるだろうか。と自身に問いかけてみてほしいと思った。見直したり、視点を変えるだけで「行動に移せていない」という思い込みから脱却できるのではないだろうか。

『温暖化防止を“自分事”として意識・行動に結びつけるために』と題した講演録が目に留まった。

「脱炭素」に向けて、行動しない理由について考えながら検索していたら、2010年3月の枝廣淳子さんの講演録「温暖化防止を“自分事“として意識・行動に結びつけるために」という文章が目に留まった。

https://www.esinc.jp/library/speech/2010/libspc_id002981.html

14年も前の講演録なので、今もその視点をお持ちかどうかはわからないが、その中に、『「意識は高いが、行動していない」層に対してどのように働きかければ良いのでしょうか。意識があってもなくても行動したくなる、もしくは、しないと損する仕組みを作っていく」ということです。』とあった。

後半の、「しないと損する仕組みを作っていく」という箇所には共感し難いが、例えば脱炭素の視点で環境を見回してみると、「意識があってもなくても行動できる」方向へどんどん整ってきていることに気づかされる。「お金がかかりそう」、「手間がかかりそう」、「不便になりそう」といったイメージの世界に生きてはいなくて、食品、住環境や生活機器、食器や洗剤など、環境に配慮したモノたちへと変化しているなかで生活していることに気づかされる。これも「自分ごと」として捉えることになるのではないだろうか。

大気中に排出された二酸化炭素は、速い速度でひろがってゆきます。ほぼ一週間で全地球を一周するといわれています。
「地球温暖化を考える:149p」(宇沢弘文著/岩波新書/1995.8.21第1刷発行)

ほぼ一週間で全地球を一周する二酸化炭素を想像しながら、一国の温暖化防止の努力が、果たして地球全体の温暖化防止に役立つだろうかと気を揉んだ。この気持ちから抜け出せたのは、アフガニスタンで農地をつくるために砂漠に水を引く用水路を建設した中村哲さんの活動を紹介したドキュメンタリー番組を見たときである。中村哲さんはアフガニスタンで農地をつくるために砂漠に水を引く用水路を建設された。中村哲さんは「水を引いたことでこの土地を離れていた人たちが戻って来て農業を始めた。乾燥して砂ぼこりが舞う大地に緑が生い茂り、かなり涼しくなった。温暖化防止に役立っているのだと思う」と話していた。

2025年1月20日~24日までダボス会議が開催された。2025年のリスクランキングは、1.国家間武力紛争、2.異常気象、3.地政学上の対立、4.誤報と偽情報、5.社会の二極化を挙げている。地球の課題に対して、日本はもとより、世界の国々のリーダーが、どのレベルで自分ごと化を図るか。注視しなければならない。

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株式会社オークジャパン 
サステナビリティ社会研究員/プランズマーケッター 近江美保

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