「個の力を活かせる組織」が好循環するワケ 2(チャレンジ編)
前編は、個が強みを活かし、イキイキしてる組織がなぜ強いのかお伝えしました。
後編は、前編で触れたこのテーマで参考にしたい組織の成功循環モデルにある「Good Cycle」。
この実現に向けて一歩踏み出すときに必要なことをまとめてみました!
さらに、僕自身が学んだ「LEGO® SERIOUS PLAY®」(以下LSPと表記)には、このGood Cycleに不可欠なノウハウが凝縮されていました。その一部も含めて紹介させていただきます!
まず↑イラストにある①〜③の質を高めるための、基礎となる「心理的安全性」について。
1.心理的安全性から始まる好循環
心理的安全性は、Good Cycleの基礎になるのはもちろん、イノベーションに繋がることも研究で分かっています。
⑴ プロジェクト・アリストテレス
これはGoogleによる「生産性の高い効果的なチーム」が持つ成功因子を見つけるプロジェクト。
約4年の歳月と何百万ドルもの資金を費やし、5つの成功因子を特定しています。
そして5つのうち、次の「①心理的安全性」がすべての基礎となり、特に重要な因子とされました。
この研究で興味深いのは、
「誰がチームのメンバーであるか(特定の優秀な人がいる)」よりも「チームがどのように協力しているか」の方が重要で、成功するチームの集団規範に2つの共通点が判明したこと。
①誰もが均等に発言する機会
②他者の想いを読み取る社会的感受性の高さ
こうした研究から、心理的安全性が組織にとっていかに大切か。よく分かります。ただ、再三ですが「誰も反対しない、仲良しなだけ」という状態とは、全く違います。
耳の痛いことも、上司部下でも、思ったことを伝え合えるチームだと信じられることを意味します。実は日本人には難しかったりするんですが、理由は後ほど。
⑵ 多様性が生きる心理的安全性
そして、個人的には「誰がメンバーであるか」も心理的安全性と同じくらい重要だと思うのです。
誰と一緒に働くか?ってめっちゃ大事ですよね。
理由として、以前こちらの記事で、多様性とイノベーションについて触れました。
それは、リー・フレミング氏の研究で、多様性のあるメンバーの時にブレイクスルーが起きていること(右の上側)を突き止めたものです。
詳細は記事にありますが、イノベーションを起こせる、つまり持続的に組織が成長するには「多様性」が不可欠。これは異分野のメンバーが集まるわけなので、価値観が大きく異なってきます。
そこで多様な価値観を融合させるには、まさに「心理的安全性」が基礎になるわけです。
そのうえで、ブレイクスルーを起こすチームをつくるためには「人選と専門性(誰とやるか)のデザイン」も不可欠になってくるんですね。
2.組織の好循環を阻むハードル
ここで、正しい心理的安全性の実践が、意外と難しい理由について。日本は特にかもしれません。
⑴ 世界一不安な民族
一つは「日本人の遺伝子」と蓄積した文化
「セロトニン・トランスポーター遺伝子S型」。
不安遺伝子ともいわれるものを、実に日本人の8割以上が保有しています。
(アメリカやヨーロッパに比べて倍近い数値)
さらに、もともと組織には「免疫マップ」という変化を阻害する性質なんてのもあります。
つまり個人や頭で分かっていても、あるべき姿に向けて行動に移すのは、思うより難しいのです。
⑵ 心理的安全性の欠如がもたらす悲劇
そして意見が言いづらい、傾聴されない慣習は
大変な失敗にも繋がってしまいます。
一つは、アメリカのスペースシャトル「コロンビア号」の空中分解により、宇宙飛行士7人の命が失われた事故。(2003年)
直接の原因は断熱材が剥がれ落ちたことですが、打ち上げの際にそれに気づいたエンジニアが懸念を訴えたものの、上層部から受け入れられず。
その後の会議でも上司へ発言しづらくなり、対策も取られなかったため、帰還時の空中分解を防ぐことができませんでした。
二つ目は、東日本大震災での福島の原発事故。
地震への安全対策について、何度も警告されていたにも関わらず、対策を講じなかった背景を第三者による報告で次のように述べられています。
心理的安全性の欠如は、他人事でなく組織の存続にさえ繋がります。和を重んじる良さはあれど…
こうした遺伝子や文化があるという前提を、私たちはまず受け入れて、そのうえでどうするか。という姿勢が大切ではないかと思います。
3.好循環のポイント ・ LSPの可能性
(1) 好循環のポイント
では、心理的安全性のことや、私がLSPファシリテーターを通じて感じたこと、書籍などから、組織の成功循環を支える重要ポイントを抜粋してみました。
次にこれらを実践してみようと思ったとき、私自身も大変だと思ったのは
自分以外のメンバーにも重要なポイントを理解してもらい、共有する必要があること。
(特に経営陣は率先した理解が必要です)
そこで色々ある組織開発の手法から、今回紹介するのが、レゴ社の経営危機を救ったLSPです。
(2) LSPってどんなの
「レゴ®使って遊ぶの?」と思われますが、スイスのIMDやMITの協力のもと、科学的な理論が詰まった歴とした「学びと遊びが融合したメソッド」
レゴ社のほか、NASAやGoogle、TOYOTAなど、経営革新のために世界中の企業で導入されてる実績があります。例えばですが…
こんな悩みを解決できます。クライアントからののニーズに合わせてプログラムを設計しますが、基本的な内容はシンプルで、こんな感じです。
(3) LSPのポテンシャル
LSPのテクニックと、LEGO®ブロックを使うことで、個人やチームが本来持っている力を引き出したり、その力を集結させたビジョンをつくったりできるのがLSPの特徴です。
何故そうなるかは文末のリンク先を参照いただきたいのですが、会場にこんな現象も起こします。
実はこれ、★のポイントがその場に再現されるため、チーム全員で共有することができるんです。
なので「10回の飲み会より、3時間のLSP」と言われるくらいチームビルディングに役立ちます。
このように、LSPに限らずメソッドを使うことで組織開発に適切な投資ができれば、心理的安全性や従業員のエンゲージメントを高められて「個の力を活かせる組織」に変えていくことができます。
「現状を変えたい想い」をちゃんと導ければ、組織はもっと進化するポテンシャルがあるのです。
5.しなやかで強い、本当のチームへ
そして組織の成功循環モデルを実践すること自体は、ゴールではなくスタートです。
⑴ めざすべき道標の必要性
「恐れのない組織」にはこんな記載があります。
個々のメンバーが力を発揮できる組織ほど、自律が尊重されるため、どこに進むべきかのビジョンや存在意義(パーパス)が重要になってきます。
さらに組織だけでなく、個人もそれぞれビジョンやパーパスを持つことで、予測不可能な事態にも対応できる、強い組織をつくることができます。
⑵ 不確実性に立ち向かえる組織
その象徴になる事例が、東日本大震災にディズニーランドで起こった出来事。
地震が発生したとき、キャストはそれぞれの判断で売り物であるダッフィーのぬいぐるみを防災頭巾として配ったり、通常は絶対に見せないバックヤードからの避難を誘導したり、ゲストの命を最優先に考えた行動が賞賛されています。
普段から防災訓練していても、これらの行動ってもちろんマニュアルにありません。
これは何を大切にすべきかの判断基準が、組織にも、そしてキャストにも備わっていたからこそ、最善の結果に繋がったのではないでしょうか。
そしてもう一つ。
日本の人的資本経営を牽引する富士通さんでは、企業のパーパスだけでなく、社員一人ひとりのパーパスを掘り起こす「Purpose Carving」という珍しい取組が行なわれてます。
こちらは日本の人事部「HRアワード2022」企業人事部門優秀賞を受賞されていて、注目すべきは「社員と会社のパーパスを連動させることで、変革の原動力を生む」という考え方。
こうした取組こそ、先が読めない時代に「風上へ向かってジグザグに進む」個の力を活かせる組織づくりではないでしょうか。
⑶ 道標を具現化するテクニック(参考)
実はLSPにも、判断を迫られたとき「何を大切にするか」の原則(SGP「Simple Guiding Principle」といいます)を抽出する手法があり、企業などの戦略をつくるために使われてます。
一例ではありますが、そんな想いを形にすることができます。百聞は一見にしかず。なので
LSPに興味のある方は、こちらのページや↓が参考になります。Facebookなどで繋がってくださってる方は、私にも気軽にお問い合わせください。
皆さんの大切なメンバー1人ひとりが尊重され、ポテンシャルが活かされることで、今よりワクワクする毎日が送れる組織になることを願って。少しでもお役に立てると嬉しいです。
今回もありがとうございました!!