人口減少を生き抜くための幻想に囚われないアプローチとは
2014年、日本に衝撃を与えた「地方消滅」が刊行され「地方創生」が浸透してきた今日この頃。
これからの時代に、地方を活性化するなら
どちらの方が支持されるのでしょう
Aさん
・商業や住居が一体の大きな施設を駅前に再開発
・完成後に東京の有名店も呼んで雇用を増やす
・図書館など公共施設も新しく建て替える
・補助金を活用して開発費の市民負担は一切なし
Bさん
・街は縮小を想定して、無闇な開発はしない
・東京より地域にある伝統産業を強くする
・古い公共施設は民間主導に切り替えるか解体
・次世代に考えてもらい還暦以上はそれを助ける
読んでくださってる方は分かってるよ!かもしれません。が、数年経った今、改めて人口減少を踏まえたお話を紹介したいと思います!
1. 896の市町村が消える訳
前回紹介しました将来人口推計。そこで触れた2040年「消滅可能性都市」の要点を振り返ります
①消滅可能性都市の定義
20〜39歳の女性人口(出産年齢の95%を占める)が2010〜2040年の間に半分以下になる都市
半分以下になる理由は
①若年女性の減少、②大都市圏への若者流出。
日本が人口維持に必要な出生率は「2.07(2018)」対して2020年の合計特殊出生率は1.36
出生率の低下も人口減少に追い討ちをかけます。
そして肝心なのは…
②出生率が回復しても人口減少は止まらない
若者が100人 それぞれ結婚したとして、
夫婦2人に子ども1人の世代が3代続くと
100人(50組)→子25人(12組)→孫6人(3組)→
ひ孫世代は1〜2人 という計算になります。
ここで出生率が仮に2.1まで回復しても、人口が維持・回復する効果が現れるまで、30〜60年かかり、その間の人口減少は避けられない試算。
(地方消滅より編集して抜粋)
出生数は第二次ベビーブームを境に減少の一途。
つまり人口減少は、もはや止まらない「現象」として対策を考える必要があるのです。
2. 東京圏に「吸い込まれる」歪な現象
でも都市部は子連れの親子をよく見かけるけど。と思うところですが
東京圏は圧倒的に転入超過ですが、都市部の合計特殊出生率って低い傾向にあるんです。
さらに地方から「女性」の転入が多いことも特徴
・忙しくて通勤も遠い。
・家族から離れて育児サポートが受けられない
・非正規雇用などの金銭的な不安 など
色んな理由が絡み合って、都市圏は便利だけど、出生率が高いわけではないんですね。
そもそも日本の現状として、経済面や労働面など含めて子育てしづらい環境にあります。
↓理想と現実のギャップ、労働時間と出生率の相関関係の資料です。「選択する未来2.0」参考資料
まとめると、
・地方は、若年層が東京に吸い込まれ人口減少
・東京は転入が増えても、出生率は増えない
→東京が人を吸い込むブラックホールのように…
「自然減」に「社会減」が加わる地方は凄まじいスピードで人がいなくなります。
地方に住む高齢者の資産も、相続で都市圏に住む子どもたちに流れることも予測されてます。
若者も、企業も、お金も、あらゆる資本が地方から東京へ吸い込まれるのが今の日本です。
3. まちづくり幻想によるミスリード
人口減少は避けられない。世界最高の高齢化率。
高度経済成長でインフラも拡大しすぎた日本は、確実に縮退社会へ突入しました。
これまでの発想が通用しなくなっている
世界中の誰もが経験したことのない社会です。
ホントは、人口が減っても豊かに暮らせる社会をつくっていくための「地方創生」なんですが
「まちづくり幻想」に囚われた人や政策が、残念ながら過去と同じプロセスで失敗しています。
こちらのように、地方のお金が東京に還流したり
第2次安倍政権の「地方創生政策」予算の行方を公財)地方自治総合研究所が2017年に調査。
1342自治体のうち約8割が総合戦略の策定をコンサルタント等へ外注。受注額、受注件数ともに、東京都に本社を置く組織が、外注全体の5割以上のシェアを占めていた。せっかく地方に振り向けられたはずのお金の4割以上(=0.8×0.5)が東京へ還流していた。(リンク先の内容抜粋)
形だけの事業でお金が有効に活用されなかったり
こんな事態が起きないように「まちづくり幻想」では、データや経験に基づいた、幻想に囚われないメソッドを紹介してくれています。
個人的に気になった点、ごく一部ですが
①思考の土台なき発想
考える、トライすることから逃れてしまう
地域プロジェクトでよくある質問は、「何をやったらいいでしょうか」というものです。この質問は、どこかに「答え」が存在し、優れた人だけがそれを知っていて、だから間違わずに成功できるのだ、という「思考の土台」がある人の発想です。この質問そのものが間違いであり、失敗の始まりなのです。これこそが、幻想に囚われた人の思考の土台です。
(まちづくり幻想より抜粋)
②前例踏襲と横展開
それぞれの「私」が地域を他人ゴトにする
他人から与えられる「答え」を求める、行政は予算をとるのが仕事だと行動する、さらに国の政策では全国各地を救おうと成功事例の横展開するという要素が、失敗を全国で大量生産しています。
(中略)
「みんな」で頑張ろうが美徳とされ、誰も責任を取らず、「みんな」という単位を壊す人を排除することで団結してしまう。
(まちづくり幻想より抜粋)
事例を学ぶこと、集団で頑張ることの否定ではありません。主体性なく、従前の大きな流れに身をまかす恐ろしさを知る必要があるのでしょう。
そして成功の要因はさまざまな条件が絡むものの
失敗するケースには多くの共通点が存在します。
以下も名著ですが、失敗の本質は戦時中も今も、実はあまり変わっていないのは衝撃です。
4. 幻想を切り開いた人とまち
では、こうした幻想を突破したエリアとは。
東日本大震災で大きな被害を受けた女川町の須田町長が、地方創生について興味深いお話をされています。こちら「地方消滅」の一部抜粋です。
女川について、住宅の確保をはじめとする住民の生活再建などを最優先にするのは当然として、たとえば、「30年後の地方小都市の姿はどうあるべきか」という未来形を常に念頭に置きながら検討してきました。基本的には人口減少を踏まえ、人々の活動動線集約を図るコンパクトシティを目指していますが、ここでもう一つ重要なのは今正しいと思っていることが10年後も正解かどうかはわからない、ということ。将来世代が変更を加えたり、新たなチャレンジができたりする余地も残しておくべきだと考えています。
復興に際して延べ200回以上の説明会を開催し、
説明会では、復興の絵を示しつつ必ず3つのことをお話ししました。第一に「復興財源の多くは国費だが、1,000億かかれば1人800円、2,000億なら1,600円、全国民からの負担で成り立つ復興であり、それを踏まえれば、復興のための国費だからこの際何をやってもいい、という考えはありえない」と。次に「安全な宅地を作れば復興、ではない。それを通じて将来世代が引き継げる街を創れるかが問われている。〝今〟だけを捉えるのではなく将来像を見据え今を乗り越えることが重要」、そして最後に「復興は当事者である我々一人ひとりが皆で取り組むものであり、自ら立ち上がる姿勢がなければ支援の手さえ離れる」という認識の共有を求めたのです。
上層部の方も、若い世代にまちを委ねました。
女川では被災後1ヵ月で、商工会を中心とした民間の復興連絡協議会ができました。その時、商工会長は60歳でしたが、「還暦以上は全員が顧問になる」と宣言しました。「我々は金策を考え、弾除けになるから、自分たちが生きていく未来は君たちが考え、中心になって作っていけ」と、下の世代に委ねたわけです。
10年後、20年後に中心となる世代が復興をどうあるべきか「将来」を考え、行動したのです。
当時、国の交付金を受けて、大きな計画を立てる地域が多いなか、大変な決断だったはずの女川町はその後、力強い復興を実現しています。
上の世代が身を呈して若者に任せ、次の世代が責任を持って引き継ぐことは、簡単なことではありません。
自分たちで考え行動し、最適解に近づくことも。
ただ、それが出来た地域とそうでない地域の未来は大きく違うことを踏まえ、自分の暮らすまちで何をすべきか考える習慣をつけたいところです。
他にも力強く未来に向かう地域が、まちづくり幻想で紹介されてるので、是非ご一読ください!
5. それぞれが暮らしと地域を想って
これから日本に起こることは明るいわけでない。
それでも希望あるバトンを次世代へ繋げるように
官民それぞれ立場はあっても、大切にすべきことは変わらないのではないかと思うのです。
ただもうこれ以上、幻想に囚われないために、
一人ひとり思考や行動を変えていかなければと。
そして「個」の集合体が「まち」なわけですが、
例えば川崎市では約150万人が暮らしています。
東京圏の恵まれた環境ゆえ、インフラやマンション立地も未だ拡大傾向にあります。
だからこそ、2030年以降の人口減少インパクトは、想像を遥かに超えるのでしょう。
そこに備えてどんな強みを伸ばしていくべきか…
色んなテーマがあるなか、次回は「都市農業」をご紹介したいと思ってます!
また見ていただけると嬉しいです。
今回もありがとうございました!!
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