安倍総理の「移民」政策と日本会議
▼〈首相「移民」なぜ否定〉という見出しがよかったのは、2018年11月18日付毎日新聞「アクセス」欄。
〈外国人労働者の受け入れを拡大する入管法改正案の国会審議で、安倍晋三首相は「移民政策を取る考えはない」と強調している。人口減少に直面して「即戦力」の外国人労働者を求める一方、地域や社会の一員として受け入れる「移民」を強く否定することの意味を考えた。【佐藤丈一】〉
▼下記のコメントが日本の「移民」政策のずさんさ、根深さを突いている。
〈NPO法人「移住者と連帯する全国ネットワーク」(東京都)の鳥井一平代表理事は「バブル期から『オーバーステイ容認政策』を取ってきた。留学生の労働が多いのも日本の特徴で、国による『偽装移民』だ」と批判する〉
オーバーステイの歴史については『〔新版〕在留特別許可』(サーム・シャヘド、関口千恵著、明石書店、2002年)という優れたノンフィクションがある。副題は「アジア系外国人とのオーバーステイ国際結婚」。旧版は1992年刊。興味のある人にはぜひ一読をオススメする。
▼この毎日記事で紹介されている、早稲田大学教授の田辺俊介氏の研究も興味深い。2017年におこなった外国人に対する意識調査で、自民党支持者は「定住外国人への地方参政権付与」に否定的な人が多いという結果が出たそうだ。
田辺氏いわく「自民支持層には『外国人に経済の役に立ってもらうが、居住者になってもらうつもりはない』という意識が強いのではないか。居住者としての権利を認めなければ就労希望者に日本は選ばれない」。
とても当たり前のことが書いてある。先日紹介した移民問題の闇ーー「技能実習制度」は「国の恥」にあるように、このまま近視眼の方針を続けていると、日本を選ぶ「移民」は減っていく可能性が高い。
▼安倍総理が「移民」という言葉を使いたがらない理由として、筆者が腑に落ちたのは2018年11月6日付東京新聞に載った樋口直人氏のコメント。適宜改行。
〈排外主義の動向に詳しい徳島大の樋口直人准教授(社会学)は「在日特権を許さない市民の会(在特会)のような人たちは、すべての外国人排斥という立場であり、今回の法案にも反対だ。
ただ、日本会議の幹部に以前私がインタビューしたときは『日本文化にかかわるような問題が起きる移民政策なら、われわれは動かざるを得ない』としつつも、ただちに反対とは言わなかった。
労働力としての外国人受け入れなら容認するということで、方針は変わっていないはずだ。
この容認ラインを守るため、安倍首相は『移民政策ではない』と繰り返し言っているのだろう」と語る。〉
樋口氏が日本会議の幹部に直接聞いた話をもとにした分析だから、この「容認ライン」には説得力がある。樋口氏は『日本型排外主義 在特会・外国人参政権・東アジア地政学』(名古屋大学出版会、2014年)の著者として知られる。堅実な研究者の印象。
(2018年11月26日)
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