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カミュの『異邦人』、カフカの『変身』の主人公から得たヒント:混沌界に離れ、理想の生活へ

4月から今までの仕事と生活にリセットボタンを押し、新しい環境に入って4ヶ月も経ちました。
今は嘗てないほどの充実感に包まれて穏やかな日々を過ごしています。仕事の量、仕事の内容がさほど変わっていないのに、この感情の違いはなんなのか?と思わず自問自答します。

ふっとカミュの『異邦人』の主人公を思い出して、なんだか答えが明確になってきた気がしてきました。
『異邦人』の主人公は、アルジェリアに暮らす青年ムルソーで、彼が友人のトラブルに巻き込まれ銃で男をあやめてしまいました。その少しの前に、母の葬式で涙を流さず翌日に女と遊んでいたことから、計画的犯罪を企てた凶悪な人間として裁かれるという話です。
「ムルソーは母親の死を悲しまない冷たい人間だ。ムルソーは太陽のまぶしさを理由に人殺しをする変わり者だ。」と罵声を浴びる。

ムルソーは正直者か変わり者かの議論はここで割愛して、ム、ルソーの心の状態を考察してみたいと思います。私の観察では、ムルソーの状態は、現状に満足も不満足もせず、なんとなく日々を生きている、もちろん理想的な自分も描けていない「孤独者」ではないか?と思います。思考が止まらなくなり、カフカの『変身』の主人公も頭に浮かび上がりました。

『変身』の主人公、グレーゴル・ザムザは勤勉な外交販売員でした。彼は朝自宅で目を覚ますと自分の体が一匹の巨大な虫に変身していることに気づく。 人の言葉をしゃべることもできず、体も思うように動かすことができないが、次第に自らが虫であることになれていく。 同居する家族からは邪魔者あつかいされてしまう。

『異邦人』のムルソーも、『変身』のグレーゴル・ザムザも、共通しているのが混沌した現実世界の不条理や孤独に付きまとわれ、自分自身の存在意味や孤独、家族や社会との関係について、考えることをやめ、理想的な自分を描くこともやめたところです。
最後に、自問自答に戻りますが、今までの仕事の量、仕事の内容がさほど変わっていないのに、私が充実感を感じる理由は、「今の環境で理想的な自分を描けたからだ」。ちょっと前の私は、ムルソーと変わりがなかったかな。


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