冬の定番料理|水だけで煮る塩豚のポトフ
冬においしくなる野菜は大きさも滋味もがっちり力強く日持ちも良くてありがたい。その反面一度買うと長らく居座ることにもなり、日が経つといよいよ使い切る料理を考えるようになる。そうして一冬の間に繰り返し作るのが、大ぶりに切った野菜と肉を水だけで煮込むフランス家庭料理のポトフ。具材は大きめに切る方が崩れにくく柔らかく煮え、たっぷり使えばスープがぐんぐんおいしくなる。だから躊躇なくどんどん鍋に加えて結果冷蔵庫もすっきり。鍋一杯に出来るのがまた素敵で、食べきれなければ次の日また食べれば良いだけのこと。そして翌日は買い物も料理の心配もなし。
素朴で温かい冬の定番料理。私にとって良いことずくめの、作るのも食べるのも大好きな料理の一つです。
■塩豚のポトフの作り方■
[使った材料]
・豚かたまり肉…約500g、モモを使用(部位は好みで)
・人参…1〜2本
・玉ねぎ…1〜2個
・キャベツ…1/4個〜
・にんにく…5〜6かけ
・ベーコンブロック…400g〜
・ソーセージ…6本〜
・塩…5g〜(豚肉重量の1%)
・粒黒胡椒(あれば)…10粒〜
・好みでマスタード
前準備として「豚肉を塩で寝かせる」ことと、煮込み前の「丁寧なアク取り」がポイント。塩豚の旨味とベーコン/ソーセージの香りを借りて、スープの素は使わず水だけで煮込みます。コトコトゆっくり煮ればいつの間にかおいしくなって家の空気も温まる。とても自然でシンプルな冬らしい料理です。
■作り方はこちらの動画でもご覧いただけます■
①豚肉に塩をまぶして寝かせます
豚肉の重さに対して1%の塩を肉の全面にまんべんなく振り、ラップで包んで冷蔵庫で1〜3日寝かせます。できるだけ空気が入らないようにぴったりと包んでください。
私はいつも手頃なモモ肉で。パサつきが心配な部位もこうして塩で寝かせて煮るとしっとり仕上がります。他にもベーコン、ソーセージと脂の多い加工品を使うので、肉は脂気の少ないものでバランスを取っています。より旨味の濃い肩やバラなど、部位は好みのものをどうぞ。
塩には脱水により旨味を凝縮する力と肉の保水力を高めてしっとりさせる効果も。相反しているようでやってみるとなるほどどちらもその通り。必ずおいしくなる一手間なので是非試してみてください。
塩の効果をかたまり肉の中まで染みこませるには、冷蔵庫で1日〜3日ほど置く時間が必要です。こうして寝かせることにより長く煮込んでもパサパサになりにくく、旨味と肉らしさを保った煮上がりになります。
本来〝ポトフ〟という料理に使われるのは主に牛肉で、豚を使う煮込みの場合は特に〝ポテ〟とも呼ばれます。ただ日本ではごろっとした肉と野菜の洋風煮込みはやはり〝ポトフ〟と呼ぶ方が通りが良くまた親しみやすいので、私はこのレシピでもそう呼んでいます。
②〈1〜3日後〉豚肉から煮始めます
冷蔵庫で寝かせた豚肉の塩がすっかり溶けてほんのり水気が出ていたら、大ぶりに切って水と一緒に鍋に入れ弱火にかけます。塩は洗わず、そのまま味付けに生かして煮ていきます。肉に対してはしっかり目の塩気ですが、この後たっぷり入る野菜の味付けにもなり、仕上がりはしょっぱい味にはらないので安心してください。
次第に水が白濁し始めますが、焦らずしばし見守って。ふつふつ静かに煮立ち始めると、自然とアクが固まりになって表面に浮いてくるので、そこからしばらく丁寧にアクをすくい取ります。
大量に浮いてくるアクをすくうと、たちまちスープが澄んでくる。多少液体の中にも散りますが、はじめにしっかり取ればそれほど神経質にならなくても問題ありません。アクが浮いてこなくなったら蓋をして、まずは肉だけ30分ほど煮込みます。あとは他の具材を切りながら順に鍋に足し、さらに煮込めばいつの間にか出来上がっていきます。
③野菜とベーコンを切って鍋に足します
人参は皮をむいて、この日は小ぶりだったので斜めに半分に切りました。玉ねぎはバラバラにならないように根元の茎をつけたまま、1/4に切って鍋に入れます。
ベーコンは豚肉と同じくらいの大きさに切り、ソーセージはそのまま。固さのある玉ねぎ人参、味と香りが出る加工品は、できるだけ煮汁に浸るように先に鍋に加えます。
最後にキャベツも、玉ねぎ同様芯をつけたままくし形に。キャベツは煮えるとカサがぐっと減るので少し大き過ぎると思うくらいに切って入れてください。火が通りやすいので煮汁に浸っていなくても大丈夫です。
顔を出しているキャベツのために塩をほんのひとつまみ振り、粒の黒胡椒と、隙間に皮をむいたにんにくを加えて蓋を閉め、さらに20〜30分煮込んでいきます。
私はスープの素もワインもローリエ/クローブなども加えず、ベーコンとソーセージに使われている香辛料の香りを借りて、いつも水だけで煮ています。胡椒の粒はミルの中に常時あるので、そこから少し出してぱらり。これらはあれば入れる無ければ入れないと言う意味で、手持ちの香辛料やハーブがある方は好みで入れて楽しんでください。
④完成です
蓋を開けて見て、キャベツがくたっとして煮汁が上がっていれば煮上がりです。少し深さのある器に汁ごと盛り付けて熱々をいただきます。本場スタイルの食べ方は具材とスープは分けて盛り付けそれぞれ別の料理として食べるそう。しかし私はおでんの国の人なので具と汁は一緒がやはり落ち着く。
煮込んだモモ肉はとろけるではなくほぐれる柔らかさ。自分が出した旨味と交換に野菜やベーコンの香りを吸ってしっとりおいしくなっています。肉類にはマスタードを付けるのがおすすめです。あっさり飽きが来ない食べ物がこの歳になってみると最高。
冬のキャベツはずっしり重くて外葉も堂々。野菜は他にもカブやカリフラワー、香りの出るセロリなどもおいしい。柔らかい野菜はキャベツと同じように大ぶりに切り、上にのせて煮れば多少崩れても見つけやすい。
そもそも自分が食べたいと思わなければその料理を作る気にはならない。食べたい、作りたい、温まりたい。日常をおいしくしてくれるのは、そういうシンプルな心の趣きだと思っています。
それでは今日はこのへんで。
最後までお読みいただきありがとうございました。