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クリスマスにはグラタンを 【私のレシピノートから】

何か温かいものが食べたい。そう思うとき、いよいよ冬が来たと感じる。
12月は飲食業界年一番の書き入れ時、同時に最も緊張感が高い時期でもある。なかでも洋食系のお店にとってはやはりクリスマスが最大のイベント。高級食材の扱いが増え仕入れ値も高く予約の分しか仕入れないから僅かなミスやロスが店にとって命取りになる。一頃のお祭りのような賑わいは大分落ち着いたと感じるけれど、それでも毎年冷え込みが厳しくなってくる頃になるとピンと張り詰めた空気の中で寝る間も惜しんで働いていた過去の記憶が蘇る。

初めてレストランで迎えたクリスマスはただただシェフに言われるがままあっちへこっちへ、もう何をしていいかわからず意味もなくその場をくるくると回っていただけだった。ただでさえ馴染みのないフレンチ用語、さらにクリスマスは特別メニューで食材も料理名も初めて見聞きするものばかり。そんな言葉の中で、初めて聞く外国語のはずなのに不思議にすっと馴染んでとても素敵に感じる料理名があった。

コキーユ・サン-ジャック

その言葉自体はフランス語で帆立貝のことを指していて、その貝殻を器にして作るグラタンのこともそう呼んでいた。帆立をホワイトソースとチーズで焼いたシンプルな料理。そのかわりグラタンはアツアツであるところに料理として大きな価値あるから、作る人運ぶ人食べる人みんなのタイミングと温度を合わせることがとても難しかった。

グラタンは缶詰めのホワイトソースや冷凍食品など様々な商品があるからそれを買うのが手軽なのかもしれない。けれど材料を改めて見ると意外に馴染みのものが並んでいて、実際のところ思い立ったらすぐに作れる料理と言える。ほんの少し特別感のあるグラタンという料理は作ってみると非常におもしろいし何よりとてもおいしくできる。その名前の静かな響きとともにクリスマスが近づくといつも思い出す、コキーユ・サン-ジャックは温かくて素敵なおいしさの私の好きなフランス料理です。

◼️コキーユ・サン-ジャック/帆立のグラタンの作り方◼️

【使った材料】
・帆立貝柱(冷凍)…8個〜
・玉ねぎ…120g〜
・マッシュルーム…4〜6個
・白ワイン…20g
・バター…20g、有塩を使っています
・薄力粉…20g
・牛乳…200g〜
・生クリーム…20g〜
・粉チーズ
・塩、胡椒(あれば白胡椒)
・パセリ…お好みで

みんな大好きグラタンは元々フランス料理。だから「今日はフランス料理を作ってみよう」とちょっと洒落た気分で向き合う方がうまくいく。料理名としての[コキーユ]は本来は貝殻を器にして焼くグラタンのこと、もちろん貝殻を何かで代用してもきっと素敵な雰囲気に仕上がります。

①具材を準備します
今回は冷凍の帆立貝柱を使いました。溶ける時に出るドリップも後で生かせるように、器に必要な分を解凍しておきます。

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玉ねぎは長さを半分に切ってから繊維に沿って薄切りに。

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マッシュルームは汚れがあればペーパータオルで拭いて、軸を切ってやや厚めにスライス。

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きのこは加熱すると水分が出てすっかり小さくなるので、いつもやや大きめ厚めに量も多めを心がけて使用しています。やっぱりマッシュルームを使うと途端に西洋料理の香りがしてくるから不思議。

②具材に火を入れます
帆立が溶けたら、水気を軽くペーパーで押さえて軽く塩胡椒を振り、フライパンにバター少々を温めて両面を焼く。余熱で火が入るので表面をさっと焼いた位で一度器に取り出しておきます。

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続いてそのままのフライパンに残りのバターを溶かし、玉ねぎから弱めの中火くらいで炒め始める。バターは買ってきてすぐ1cmくらいの角切りにしておくと、料理で使う時に早く溶けるし焼いたパンに散らしてもすぐ馴染み色々便利。

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水分が多いうちは急に焦げたりしないので中火くらいから炒め始め、しんなりしてカサが減ってきたら弱火に。食感を残すかトロトロに仕上げるかはお好み。私は後者のトロトロ好きなので、ここは結構しっかりとじっくり炒めます。ただしこれから作るのはホワイトソースのグラタンなので、ホワイトを意識して焦げないように気をつけながら。

そこにマッシュルームを足してさらに炒める。

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しっとりと一体感が出たら、風味付けの白ワインを加えて馴染ませます。解凍したときに出た帆立のドリップもあればここで一緒に。

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料理にワインを使うとき、私は手頃なワインを買ってきて残りは飲んでしまう。使う量より飲む量の方が圧倒的に多くなるけど、それはそれでよしとしている。

③ソースを仕上げていきます
具材に火が入ったら、薄力粉、牛乳の順に加えていよいよソースに。まず、火を止めます。そこに薄力粉を入れ、火を止めたまま全体に馴染むまでしっかり混ぜ込んでいく。

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粉が見えなくなるまでしっかり混ざったら、また火をつけて弱火でほぐすようにしながら炒めていきます。初めはネチっとしているけれど、潰すようにしたりトントントンとしていると、なんとなくほぐれてきます。

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そこでもう一度火を止めます。ここに冷たいままの牛乳を少しずつ加え、入れた都度しっかり混ぜこんでからまた次の牛乳を加えて、これを大体4〜6回位繰り返します。

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・・・これ混ざるの?と一瞬不安がよぎっても、ちゃんと粉が牛乳を吸ってくれるから大丈夫。4回目位からなんとなく流動性が出始めてやっとホッとできる。牛乳が残っていればもう一気に入れても問題なし。ここまで来たらまた火をつけて、最後は弱火で温めながら混ぜればソースの完成です。

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ホワイトソース作りのポイントは、状態の変化にあまりビビらないこと。そのために私はいつも、⑴薄力粉を入れる時、⑵牛乳を入れる時、それぞれ一度火を止めて、じっくり落ち着いて作業を進めるようにしています。

③焼きます
ソースに生クリームと、焼いて取り出してあった帆立を旨味のある汁ごと全部入れて、温めながらしっかりと馴染ませる。帆立は全体に行き渡るように半分に切りました。味見をして足りないようならここで軽く塩胡椒。ただし、バターの塩、帆立に振った塩、粉チーズの塩も重なるので、濃くし過ぎれば後で引くことはできないから慎重に。

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全体が温まったら耐熱の器に盛り、粉チーズを振って焼きます。

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具材はもう火が入っていているから表面においしい焼き色がつけばいいので、トースターや魚焼きグリルでも大丈夫。この日は余熱ありのオーブン230℃で8~10分位焼きました。

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ほんのちょっと使うためだけの生クリームは若干面倒、だけど入れるといかにもフランス料理っぽいコクと特別感がぐっと出てくる。最近は100mlの小さなパックがあって残ったらオムレツとかパスタに入れたりとそれほど無理なく使い切れて助かっている。牛乳だけでも既にかなりおいしくできているので、誰かに振る舞う機会やごちそう感が欲しい時にはクリームありで、と使い分けるのもいいと思います。

④で、完成です
表面においしそうな焦げ目がついたら出来上がり。具材でもありソースでもある玉ねぎとマッシュルームが帆立の旨味と一体に溶け合って、とってもおいしい。あとパンくらいあればもう十分すぎる程のごちそう感。時によってハムなど少しだけ買って来たものを並べたらそれだけで一気におもてなし感も増す。

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この日の友に選んだのはスパークリングタイプの純米酒、乳製品を思わせるようななめらかなコクとほのかな酸味があって濃厚なグラタンともよく合いました。薄くにごった微発泡の特別感も気分にぴったり。

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温かいものが食べたい、温かいものを食べて欲しい、その気持ちがレシピには書いていない冬の料理をおいしくする一番のコツだと思います。
この季節は温かさが沁みる。

それでは今日はこのへんで。
最後までお読みいただきありがとうございました。

[コキーユ・サン-ジャック/帆立のグラタンの作り方]の動画をYouTubeに投稿しています。合わせて見てもらえたら嬉しいです。


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