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『チェイサーゲームW2』のナレ死ならぬナレ離婚について


『チェイサーゲームW2』と中国の離婚事情問題

 奇怪ドラマ『チェイサーゲームW2 美しき天女たち』の第6話が放送・配信されました。

 先日のnote記事「中国の人曰く、『チェイサーゲームW』のスタッフは男だらけで不快…という問題を考える」で触れたように、中国政府は“若者の結婚離れ”にイライラしているらしく、離婚のハードルを高くしたことが日本にも伝えられています。

 しかし、『チェイサーゲームW2』における離婚描写の重要点は、夫婦関係などに関しては今更どうでもよく、娘の月ちゃんの今後をどうするかというところにあります。私の高校時代にも親が離婚している同級生がクラスにおりましたが、やはり少々重たい生い立ち持ちの扱いでした。

 そこで、猿レベルの知能の私でもあきずに相手をしてくれるAIに、『チェイサーゲームW2』の冬雨・浩宇が両方無職であるという前提で、中国の子持ち離婚事情を質問してみました。

 ちなみに、浩宇は第6話時点でも求職の真っ最中であることが確定しておりますが、第7話予告を見ると冬雨も再入社(?)で挨拶するシーンがあるので、冬雨も離婚申請時点で無職であったと考えられます。

現在の中国では、離婚手続きが厳格化されており、特に未就学児がいる場合には、裁判所が「子どもの利益」を最優先に考えるため、離婚の認可がさらに厳しくなる傾向があります。2021年に導入された「冷静期(クールオフ・ピリオド)」制度によって、離婚申請後も30日間の冷却期間が設けられ、どちらか一方が離婚を取り下げれば手続きが進まなくなります。これにより、感情的な判断や一時的な衝動で離婚が成立しないよう工夫されています。

また、未就学児がいる場合、夫婦の経済的な状況も考慮されますが、双方が無職である場合には、子どもへの影響が大きいため、離婚申請の際にさらに慎重な審査が行われることが一般的です。この場合、裁判所は以下のような側面を考慮することが多いです:

1.子どもの養育環境の安定性
経済力が不足している場合、裁判所は親が今後どのようにして子どもを安定して養育できるかを重要視します。経済力がない状態での離婚は、子どもの福祉に影響を及ぼす可能性があるため、家庭環境が安定する見込みがないと判断されれば、離婚が認可されない場合があります。

2.養育のための支援体制の有無
両親の実家や家族が支援を行う体制が整っているかも判断材料となります。たとえば、名家や資産のある家庭であれば、実家の後ろ盾により養育の安定が見込まれると判断されやすくなります。

3.子どもにとって最善の養育者
離婚が認められた場合も、子どもの主たる養育者が誰になるかを考慮します。養育環境や親の態度が影響するため、特に不倫などの行為で親権を持つ親の信頼性が損なわれた場合、もう一方の親が親権を得る可能性が高まります。

以上の点を踏まえ、双方に経済力がない状況下で、未就学児がいる夫婦の離婚が認められるのは、家庭外の支援がしっかりしている場合や、子どもの利益が確保される場合に限られると考えられます。

ChatGPTによる回答

 というわけで、『チェイサーゲームW』制作陣が考えた想像上の中国は、離婚の審査も相当ザルのようです。

 中国国家衛生委員会の幹部は今年1月に開いた記者会見で、中国の結婚件数が年々減少していることについて「『90後』と『00後』(1990年代~2000年代生まれ)は、結婚・出産の新しい主体として、ほとんどが都市部で育ち、働き、教育年数も長い。彼らは、大学を卒業してからの社会競争が激しくなったため、非婚や晩婚が今後も続く可能性がある」と指摘。

中国に「離婚クーリングオフ」制度 離婚件数は激減したけど【洞察☆中国】:時事ドットコム

 ついでに、AIが教えてくれた冷静期制度について検索すると、中国では社会競争が激化しているため、全体的に晩婚化・非婚化が進んでいるとのことです。

 となると、冬雨はゲーム会社勤務という、これまた変化の激しい業界で出世した設定のため、結婚はもっと遅いぐらいがリアルであるのですが、にも関わらずけっこう早めに結婚したということは、別に強制されて仕方なく結婚したというわけではなく、純粋に浩宇への恋愛感情が勝ってキャリアを犠牲にしてでも結婚・子作りしたということになります。決してイヤイヤ結婚したわけではなくて良かったですね、浩宇。

 そんなわけで、このドラマは中国を同性愛差別のシンボルにしたかと思うと、一方で都合よく雑に扱ったりと、何かにつけて蔑視的であり、何故放送を許されているのかやはりよくわかりません。

 少なくとも、『チェイサーゲームW』の世界においては、「中国で同性愛は幸せになれない」のではなく、逆に生家や国家・社会から甘やかされているのに社会性が足りていないので冬雨は幸せになれないだけなのです。

 まあ、担当脚本家が上記のように発信している記述を見ると、男性陣が居酒屋会議のノリでシナリオを作っていたようなので、『チェイサーゲームW』からリアルを見出すこと自体が異常な精神と言えばそうであります。

 ただ、そうやってこの作品の「リアル」を否定すればするほど、「男性が集まって居酒屋で考えたレズビアンドラマ」という肩書が更に確固なものとなってしまい、それはそれできつい汚臭が漂ってきてしまうのですが…。


とにかく怪しい子どもの扱い

@tvtokyo_pr

チェイサーゲームW2 美しき天女たち🪽 ~自分を犠牲にすることが冬雨にとっての幸せ…?~ 見逃し配信はこちら📺 ☞ https://tver.jp/series/sruxc8a2ka 🗓️ 第5話の放送は10/17(木)深夜24:30〜 ChaserGameW2 テレビ東京 菅井友香 中村ゆりか

♬ オリジナル楽曲 - テレ東 - テレ東

 何度か書いてきたように、『チェイサーゲームW』は制作陣による娘の月ちゃんの扱いが異様で、特に『W2』に関しては第6話まで来て、母であるはずの冬雨が実の娘に対して思い悩んだことがまったくありません。挙句の果てには、婚姻中の身でありながら他の女と不法侵入プールで遊んでいたりと、とんでもねぇ母親っぷりです。月ちゃんが成長し、いろいろとわかるようになった年齢でそのあたりの経緯を知ったら、彼女は母を大いに軽蔑するでしょう。

「もし共同親権だったら……」。幼少期に父のDVが原因で両親が離婚した北海道内の男子高校生は、導入へ不安を募らせる。
 男子高校生の幼い頃の記憶は、父の顔色をうかがい、おびえて暮らす日々のことばかりだ。夕食時、「ママ、ご飯おいしいね」と言うと、父は急に「飯を食わせてやってるのはオレだ!」と逆上。母は胸ぐらをつかまれ部屋中をひきずられた。「てめえらに自分の意思なんていらない」。罵声で人格を否定され、心を塞いだ。

虐待、連れ去り…「恐怖でしかない」 被害高校生、共同親権に不安 | 毎日新聞

 共同親権反対運動でよく挙げられましたが、世の中には自分の子を支配欲・所有欲の対象として見て、果てには虐待に走ってしまう人がいます。『チェイサーゲームW』の一人娘が全肯定マシーンとして母の優越感を満たすためだけの装置となっているのは、それと同根のものを感じずにはいられません。

 このドラマの制作陣の各氏に家庭があるのかどうかは知りませんが、もし『チェイサーゲームW』の娘の描写にまずさを感じないのであれば、出来れば子どもを持たないことをおすすめしたいです。


『チェイサーゲームW』がレズビアンに対して差別的であるポイント

 これまで書いたところから考えるに、『チェイサーゲームW』は「レズビアンは子どもに興味がない」というバイアスを視聴者に植え付けています。もちろん興味がない当事者も多数いますし、逆に上記動画のように同性カップルとして子どもを欲する当事者もいます。少なくとも、『チェイサーゲームW2』の描写は子どもを放りだして好き勝手に恋愛モードを楽しむことに特化しており、後者のイメージは見いだしにくいでしょう。

 それはあくまで結果的にそうなっただけであり、制作陣に差別の意図があったわけではないようにも思われます。しかし、差別問題というのはむしろ、無意識的なものこそが本質であり、マジョリティ側の「気にしすぎだよ」が最大の癌なのです。

 レズビアンと子どもの存在イメージを遠ざけるということは、当事者による同性婚法制化運動に対して世間からのネガティブな先入観を与えることが不可避であり、また最近では生殖医療を法律婚に限定する法案の報道も記憶に新しいところです。


リブート形式で再始動するしかなかった『チェイサーゲームW』の続編

 ウダウダ書きましたが、結局『チェイサーゲームW』制作陣はあまりに子どもに興味がなく、何となく「子持ちのレズビアンが存在する」という知識だけで軽率な作品設定作りをしてしまったとしか言えません。

 ならどうすればよかったのかと考えると、これは岡目八目ではありますが、リブートで「初代W」はなかったことにして、樹と冬雨がゲーム会社を目指して就職活動するドラマとか、ゲーム会社の新入社員として奮闘する内容あたりに収めて、子持ちも結婚も初めから全部無かったことにするのが最適解だったでしょう。

 2022年に放送されたドラマの無印『チェイサーゲーム』は、『W』以降のファンは誰一人として見ていないでしょう。ですので、無印『チェイサーゲーム』のネタをいくら再利用しても不満は出ないでしょうから使い回し放題なわけで、そこから脚本を考える時間も短縮できたのではないでしょうか。

 無印『チェイサーゲーム』ですが、一応、私は全話見ました。好きな人には悪いんですけど、私は特に面白く感じなかったです。ちなみに、2024年10月28日現在、どういうわけだか配信から消えており、なんで消えたのかはよくわかりません。



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