『らんま1/2』のあかね“メシマズ”設定とジェンダー問題について
今度リメイクアニメが始まるらしい『らんま1/2』ですが、現段階からして旧作よりも作画が良くないとか批判されてて、比較画像を見たら「まあそうやな」とか思ったこの頃です。
そんなわけで、手元にあった原作の第23巻を開いてみたのですが、久しぶりに読むと何だか意外なポイントを見つけました。
天道あかねの“メシマズ”設定なんて些細なことです。それよりも意外なのは早乙女乱馬の料理が妙に上手いことです。
検索すると「元々料理は上手くなかった」とか書いてあって、第6巻を見ると確かに「早乙女乱馬の作るメシがまずいから料理係として天道あかねを連れてきた」というあらすじのエピソードがありました。
この早乙女乱馬の変化は一体どういうことなのでしょうか。
そこで私は『家庭科、男も女も!―こうして拓いた共修への道』という1997年第一刷発行の本を借りてきて調べてみました。1974年結成となる「家庭科の男女共修をすすめる会」の運動の歴史をまとめた本です。この本によると下記のようになっています。
1986年~1987年 長い運動を経て、お国として家庭科男女共修の方針が決まる
1990年代前半 各学校が教員増員や施設準備を実施し男子も家庭科開始
1996年 「もう目標達成できたし、いいんじゃない?」という意見が強くなったため、家庭科の男女共修をすすめる会は翌年に解散を決定
ざっくりとまとめるとこんな感じです。『家庭科、男も女も!―こうして拓いた共修への道』には家庭科男女共修を受け入れようとしない人たちが多くいて苦労した話がたくさん載っていますが、本記事内では端折りました。
家庭科男女共修運動はけっこう話題になっていたようで、会の結成時代からメディアに取り上げられていたことも書かれています。
1985年に田村正和主演のテレビドラマ『男の家庭科』が放送されたらしく、男子が家庭科を学ぶことに関心が寄せられていたことが伺えます。ちなみに、このドラマはフジテレビの製作らしいのでFODにあるのかなあと思って検索してみましたが、残念ながらありませんでした。
さて、この記事最初の『らんま1/2』第23巻分は平成4年(西暦1992年)の『週刊少年サンデー』が初掲となっております。まさに男子生徒の家庭科必修移行期ど真ん中の話です。社会から何らかの影響を受けて描かれた可能性を感じずにはいられません。
『らんま1/2』は1987年に連載が開始された漫画です。家庭科が女子のみ必修だった時代から男女共修へと変化した頃と見事に被るわけであります。そのため、「花嫁修業」というセリフがいくつもあったり天道あかねが男子には負けられないと思うのも、早乙女乱馬の料理が著しく成長するのも、当時の社会背景からすると両方に必然性があったりしたのです。