「跳ぶ」から「飛ぶ」に予定変更。
別役実さんの作品『空中ブランコ乗りのキキ』
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サーカスのテント小屋では、生き方の真っ向勝負。
空中ブランコ乗りのキキは、命と人生をかけてより高く跳ぼうとしていた。
ピエロは危険を冒すなんてバカバカしいから
「ピエロになれば落ちないよ」とキキを説得しにかかっている。
対照的な二人は現代社会の投影。
テント小屋はまた、ひとつの会社組織でもある。
経営者にとっては、挑戦か安泰路線かの判断は絶妙な分岐点。
このあたりは物語では語られていないけど、 現代の社長さんだったらリスクの多い選択はきっと真っ先に却下する。
物語は、キキを空中ブランコから跳ばせたところで終わる。
より高みを目指した空中ブランコ、キキのチャレンジは成功するのか、しないのか。
最終判断は読者に委ねられた。
物語の結末を委ねてくれるなら、こんな結果であってもいい。
「隣のブランコに向けて勢いをつけ跳んたキキ。
手は……あ、あと少しのところで届かない。
落ちる!
誰もがそう確信して手に汗を握った。
その時だった。
キキは手品師がハトを出すみたいに、心にしまってあった羽を広げて宙に舞い上がった」
ありえない展開、そうファンタジーの世界を夢見たっていいじゃないか。
奇想天外な感動の結末に目尻を滲ませたい人って、少なからずいる。