龍の起源
題名のとおり、龍の起源を探った本です。
ただし、最後のほうは、龍の話ではなく、文明論になります。この部分を、蛇足と感じる方もいるでしょう。
それでも、龍が好きな方は、ぜひ、お読み下さい。
龍は、幻想生物の王者ですよね。不思議なことに、ほぼ世界じゅうに、「龍」といえる幻想生物の伝承が、語り継がれています。
これは、なぜでしょうか? 本書は、この疑問の答えに迫っています。
龍の起源に迫るには、世界じゅうの龍の伝承を、知らなければなりません。
博学な著者は、ユーラシア大陸の大部分、サハラ以北のアフリカ(エジプト)、北米大陸などの龍の伝承に通じてらっしゃいます。
残念なことに、サハラ以南のアフリカ、南米大陸、オセアニアなどの龍の伝承は、ほとんど取り上げられていません。これらの地域の龍についても、扱って欲しかったですね。
とはいえ、広範な知識をもって、龍を読み解いてゆく様子は、読んでいて、面白いです(^^)
日本語で読める龍の文献としては、最良のものの一つでしょう。
個人的に、論の進め方に、「それは、ちょっと違うのでは?」と感じる部分がありました。
ある伝承―ここでは、龍の伝承―が、どこで発生し、どこへどのように伝わったのか、証明するのが難しいからです。伝承伝播について、明確な証拠がないのに、「このように伝播したのだろう」と、決めつけている部分があるように感じられました。
欠点があるにせよ、龍が好きな方には、お勧めの本です(^^)
以下に、本書の目次を書いておきますね。
序 龍とは何か
第1章 東方の龍
1 中国の龍
2 インドのナーガ
3 東方の龍の特性
第2章 西方の龍
1 バビロニアのティアマト
2 エジプトのウラエウス
3 イスラエルのレヴィアタン
4 ギリシアのドラコーン
5 ヨーロッパのドラゴン
6 西方の龍の特性
第3章 龍の起源
1 蛇信仰の発生
2 蛇信仰の伝播
3 蛇の抽象化
4 龍の誕生
5 龍の伝播
6 南方の牛と北方の馬
7 新大陸の龍
第4章 日本の蛇と龍
1 縄文時代の蛇
2 弥生時代の蛇と龍
3 記・紀のなかの蛇と龍―八岐大蛇【やまたのおろち】と三輪山の蛇
4 シンボルとしての蛇と龍
5 記・紀のなかの蛇と龍―タツとオカミとミツハ
6 記・紀以後の蛇と龍
7 河童と天狗
第5章 龍と宇宙論
1 龍と水の宇宙論―西方世界
2 龍と水の宇宙論―東方世界
3 闇と光と龍
4 日本の龍と宇宙論
第6章 われわれの時代と龍
1 日本の農業と龍
2 科学技術文明と龍
3 小川芋銭【おがわ うせん】の河童
あとがき
索引
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