パンダの親指〈上〉―進化論再考
著名な進化生物学者、スティーヴン・ジェイ・グールド氏の科学エッセイ、第二弾です。
第一弾の『ダーウィン以来』に続き、進化論について、解説されています。
本書は、上下二巻の上巻です。
『ダーウィン以来』を読んでから、本書を読んだほうが、わかりやすいことは、無論です。
とはいえ、高校卒業程度の生物学の知識があれば、『ダーウィン以来』を読んでいなくても、本書の内容には、ついて行けるでしょう。
『ダーウィン以来』もそうですが、大学の一、二年生くらいで読むのが、ちょうど良いレベルの本ではないかと思います。
本書の題名にある「パンダの親指」とは、ジャイアントパンダの手(前足)にある、「六番目の指」のことです。
ここで、多くの方は、「えっ?」と思うでしょう。哺乳類の指の数は、五本ではないのでしょうか?
ジャイアントパンダの手には、「六番目の指」に当たるものがあります。
ただし、それは、本当の指ではありません。パンダの手には、本当の指が、ちゃんと五本、揃っています。
なぜ、パンダは、「六番目の指」に当たるものを、作らなければならなかったのでしょうか?
これを説明することにより、グールド氏は、巧みに、進化論の説明をしています。
本書を読むと、グールド氏の学識の広さに、感嘆します。多様な事実や、たとえを使って、進化論を説明しているからです。
例えば、生まれる前に死んでしまう生物の話。
例えば、ミッキーマウスの進化の話。
例えば、人類学史上、最大の偽造事件といわれるピルトダウン人事件の話。
どれも、興味を惹かれますよね?
ぜひ、本書で、その内容を確かめて下さい(^^)
以下に、本書の目次を書いておきますね。
プロローグ
第1部 完全と不完全――パンダの親指をめぐる三部作
1章 パンダの親指
2章 歴史を語る無意味なしるし
3章 倍加する難しさ
第2部 ダーウィン的世界
4章 自然淘汰と人間の脳――ダーウィン対ウォレス
5章 ダーウィンの中道
6章 生まれる前に死ぬこと――またはダニのヌンク・ディミッティス
7章 ラマルクの微妙な色合い
8章 利他的な集団と利己的な遺伝子
第3部 人類の進化
9章 ミッキーマウスに生物学的敬意を
10章 ピルトダウン再訪
11章 人類進化の最大の一歩
12章 生命界のただなかで……
第4部 人間の違いの科学と政治
13章 広い帽子と狭い心
14章 女性の脳
15章 ダウン博士の症候群
16章 ヴィクトリア風ヴェールのほころび
訳註