イラスト事典 深海生物図鑑
二〇〇五年以降くらいから、深海生物に関する本が、たくさん出ていますね。
この本は、それらの先駆けになった本です。一九九八年に出ています。出版当時は、たいへん珍しい、深海生物の本でした。
二〇一〇年現在では、古くなった情報も載っています。
けれども、この本の価値は、それくらいでは揺るぎません。
深海生物は、鮮明な写真を撮るのが難しいです。この本は、それを逆手にとって、写真は一枚も載せていません。すべて、イラストです。
精密なイラストが、深海生物の生態を、活写しています。まさに『イラスト事典』です。
第1章で、浅い海の生物を取り上げているのも、点数が高いですね。
浅海の生物と比べることで、深海の生物が、より理解しやすくなるからです。
他の深海生物の本に、載っていない生物も、少なくありません。
例えば、ダルマザメの食事の様子の図解などは、イラスト事典ならではです。わかりやすいです(^^)
中で、特徴的なのは、「生きている化石」と呼ばれる生物が、多く載っていることです。
巻貝のオキナエビス、棘皮動物【きょくひどうぶつ】のウミユリ類、魚類のシーラカンスやラブカ、頭足綱【とうそくこう】のオウムガイやトグロコウイカ、甲殻類のセンジュエビ、単板綱【たんばんこう】のネオピリナなどです。
前記の生物名に、ぴんと来る方は、ぜひ、本書をお読み下さい(^^)
以下に、本書の目次を書いておきますね。
まえがき
目次
第1章 0~200mの世界 浅海の生物たち
海の底はどうなっている
海の中の流れ
◆深海生物の食べ物はどこからやってくる
植物プランクトン
動物プランクトン
など
第2章 200~700mの世界 中層と上部漸深海帯
暗闇に適応したデメエソの目
◆どうすれば暗い場所でも見える目になるか
獲物の影を探すテンガンムネエソ
ホタルイカに見る光迷彩
発光液で敵を驚かすギンオビイカ
など
第3章 700~1000mの世界 上部深層帯と中部漸深海帯
目を退化させたソコオクメウオ
◆側線で魚は何を感じる
◆属や種ってなに
生殖だけに生きるミツマタヤリウオの雄
赤い光で周囲を探るホウキボシエソ
など
第4章 南極海の世界 極冷の生き物
過酷な南極海の自然
エサとなるアイスアルジー
不凍の体液をもつコオリイワシ
コオリウオの生活
第5章 1000~3000mの世界 下部深層帯と下部漸深海帯
希薄な海中の生態系
◆フクロウナギとその仲間たち
変わり者「ホソオヨギヒモムシ」
イカでもタコでもないコウモリダコ
◆奇妙な食性の二枚貝
など
第6章 化学合成生物の世界 バクテリアに支えられた生態系
硫黄臭い海水と群がるバクテリア
◆化学合成細菌とは何か
巨大なチューブワーム
温度差に耐えるユノハナガニ
◆冷水湧出帯生物群集
など
第7章 3000~6000mの世界 深海帯
海底をなめ回る深海ナマコ
◆私たちとギボシムシ、ウニとの関係
巣穴から舌のような吻を伸ばすユムシ
◆生痕化石からみるユムシの生活
体節構造を残す軟体動物ネオピリナ
など
第8章 6000m以深の世界 超深海帯
海溝に住むシンカイヨロイダラ
高圧の壁と消えゆく生物たち