神々の造形・民俗仮面の系譜 (みやざき文庫90)
九州の民間に伝わる仮面を、紹介した本です。
本書を読むまで、私は、日本の民間に、こんなに豊かな仮面文化があることを、知りませんでした。
素晴らしい文化なのに、日本でも、ごく一部の人にしか知られていないのが、残念です。
たくさんの仮面の写真が、カラーで載っています。克明に写された仮面たちは、技巧的に優れたものばかりではありません。稚拙なものもあります。
古びて、塗料がはげてしまったり、顔の一部がなくなってしまったりしているものもあります。
にもかかわらず、どの仮面にも、非常に存在感があります。
仮面を作った人や、仮面をかぶって神楽【かぐら】などを踊った人、それを見ていた人、すべての思いが、仮面にこもっているようです。
日本の文化の根幹に、このような仮面の文化があるのだと思います。
本書の序文に書かれていることですが、二〇〇七年に、縄文時代の木製仮面が、佐賀県(九州!)で発見されました。日本の縄文時代に、すでに仮面文化があったことが、実証されています。
その仮面は、南九州に多く伝わる仮面と、類似するものでした。
本書は、宮崎県の出版社から出ています。このような地方からの視点は、とても大切だと思います。都市部にだけいては、わからないことを、考えさせられます。
以下に、本書の目次を書いておきますね。
仮面文化の十字路 はじめに
増補新装版 序文
九州の民俗仮面 グラビア
九州の仮面文化
第一章 九州の民俗仮面の分布
一、北部九州の仮面
二、中部九州の仮面
三、九州脊梁【せきりょう】山地の仮面
四、霧島山系の仮面
五、南九州の仮面
第二章 九州の民俗仮面との出会いと 由布院空想の森美術館の15年
第三章 翁面【おきなめん】と「芸能仮面」の発生について
[一]弘安二年銘の翁面と類似する仮面
(一)宮崎県西都市【さいとし】銀鏡【しろみ】神楽・「シシトギリ」の媼面【おうなめん】
(二)鹿児島県霧島町霧島神宮・田植え祭りの翁面
(三)鹿児島県川内市【せんだいし】・新田神社の翁面
[二]神楽と追儺【ついな】式の翁面
[三]「黒い翁」と「白い翁」
[四]黒い田の神面
[五]歪んだ顔の田の神面
第四章 道化
[一]火男=ヒョットコと道化
[二]十根川神楽「こぶ面」と道化
[三]古型としての隼人舞【はやとまい】
第五章 女面
[一]ウズメ面の系譜
[二]アマテラス面の系譜
[三]タカビ面の系譜
第六章 猿田彦と鼻高面の系譜
[一]「猿田彦」とは
[二]猿田彦の系譜と九州の鼻高面
一、猿田彦の特性
二、猿田彦の分布
三、猿田彦の発生と展開
四、九州の猿田彦
第七章 神楽と仮面
[一]米良【めら】山系の神楽の仮面
[二]鬼神面
[三]修験道と神面
第八章 南九州の「信仰仮面」
第九章 中国少数民族の仮面文化
[一]三星堆遺跡出土の仮面
[二]四川省と雲南省・仮面の旅
第十章 神々の造形・民俗仮面の系譜
[一]翁面の起源
[二]宿神【しゅくじん】
[三]五行思想と仮面
[四]「女面」の源流を訪ねて
[五]「縄文」の造形―列島古層の神へとつながる仮面の発見
第十一章 漂泊する仮面 あとがきにかえて
[一]縄文と弥生の出会いの地で
[二]新たな旅立ちへ
[三]神楽と仮面神を訪ねる旅で