ロシアの妖怪たち
ロシア、ウクライナ、ベラルーシの妖怪を紹介した本です。
日本では、ほとんど紹介されていない分野ですので、貴重です。
「妖怪」とはいえ、人間に悪さをするものばかりではありません。積極的に、人間の味方をしてくれるものもいます。家の妖怪ドモヴォイ、風呂小屋の妖怪バーンニクなどです。
もちろん、人間に悪さをするものもいます。
けれども、多くの「妖怪」は、人間に対して、善意と悪意と、両方を持っているようです。
妖怪というより、「妖精」と呼びたい存在ですね。
ロシア、ウクライナ、ベラルーシは、ヨーロッパとアジアにまたがる国です。「妖怪」たちも、それを感じさせます。ヨーロッパの「妖精」らしさと、アジア(日本など)の「妖怪」らしさとを、併せ持っています。
中には、はるか昔、ロシアやウクライナやベラルーシがキリスト教化される前の信仰を、うかがわせる存在もいます。
前記のドモヴォイや、森の妖怪レーシーなどは、キリスト教化以前、素朴な信仰を集める神だったのではないでしょうか。
特筆すべきは、一九九五年の段階で、ロシアでは、前記のような妖怪たちが、真面目に信じられていたことです!
サンクトペテルブルクのような大都市でも、そうだったといいます。
まさに、神秘の国ロシアですね(*o*)
この本の著者、斎藤君子【さいとう きみこ】さんは、実際にロシアへ調査に行って、それを確かめたそうです。
おそらく、二〇一〇年現在でも、あまり事態は変わっていません。
日本で、まことしやかに語られる―「友達の友達が、本当に体験したんだけど……」―都市伝説と同じノリで、ロシアでは、伝統的な妖怪たちが、「生きて」います。
以下に、この本の目次を書いておきますね。
第1章 森の妖怪レーシー
森の支配者/森の主の姿/タブー/道に迷わせる/女をさらう/
パンは糞/ レーシーから逃れる法/やさしいレーシー/
雪男とレーシー
第2章 山親爺ゴールヌィ
第3章 水の妖怪ヴォジャノイ
水界の支配者/全身藻に包まれて/人間を水中に引き込む/
馬を水中に引き込む/水車小屋/河童とヴォジャノイ/海の王
第4章 水辺と畑の妖怪ルサールカ
ルサールカになった女たち/歳事儀礼とルサールカ/タブー/
ルサールカの容貌/髪をとかすルサールカ/
ルサールカから身を守る方法/ ルサールカの予言
第5章 畑の妖怪ポレヴォイ
畑の守護神/風を送り、歌をうたう/ポレヴォイの容姿
第6章 真昼の妖怪ポルードニツァ
ライ麦畑のポルードニツァ/菜園のポルードニツァ
第7章 家の妖怪ドモヴォイ
家の守り神、家畜の守り神/引越し儀礼とドモヴォイ/金縛りと予言/
森の小屋で/ドモヴォイの呼び出し方/ドモヴォイの婚礼
第8章 紡ぎ女キキーモラ
住人を家から追い払う/運命の糸を紡ぐ/大工とキキーモラ
第9章 風呂小屋の妖怪バーンニク
蒸し風呂とロシア人の暮らし/バーニャにおけるタブー/
バーニャと赤ん坊/ 他の妖怪からまもる/バーニャ賭博
第10章 さまよえる死者たち
死者の来訪/幼子を残して死んだ女たち/結婚前に死んだ女たち/
殺された死者たち/悪魔の手に落ちた死者たち/
子どもの寿命を予言する死者/ 天国の暮らし
第11章 悪魔たち
天上から追放された天使/水の中に棲むチョールト/変幻自在な悪魔/
悪魔の棲家へ招かれた人たち/占いとチョールト/謎なぞとチョールト
第12章 物語の好きな妖怪たち
おわりに―妖怪話の将来
引用文献
出典
索引
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