滅びゆく植物―失われた緑の楽園
題名どおり、希少な植物が、たくさん紹介された本です。
たくさん? そう、今にも滅びそうな植物の種【しゅ】が、地球上には、たくさんあります。残念なことに。
絶滅しそうな動物を紹介した本は、多いですね。
けれども、なぜか、絶滅しそうな植物を紹介した本は、少ないです。本書は、その数少ない一書です。
本書に登場する植物には、日本語名が付いていないものが、多いです。登場する種のほとんどが、日本に分布しないからです。
外国の、珍しい植物の話を、たっぷり読むことができます。
例えば、世界一、長寿の植物が何か、知りたくありませんか?
現在、花壇にあるチューリップが、どのような原種から生まれたのか、知りたくありませんか?
一番若い木でも、樹齢百年以上という植物が、実在すると、信じられますか?
ライオンゴロシ(ライオン殺し)という、ぶっそうな名の植物は、なぜ、そんな名が付いたのでしょう?
全部、この本に載っています。
他にも、まだまだ、興味深い話があります。
セント・ヘレナという島が、大西洋にあります。ナポレオンが流れされたことで、有名ですね。
この島は、一番近い大陸より、一八〇〇km以上も離れています。まさに、絶海の孤島です。
こんな島にある植物とは、いったい、どんなものでしょう?
孤島だけあって、セント・ヘレナの植物は、多くが固有種「でした」。
「でした」というのは、固有種のうち、百種ほど(!)が、すでに絶滅したと考えられているからです。
現在、島にある植物は、多くが外来種です。
例えば、ラテン語の学名を、Nesiota ellipticaという種があります。
一九九八年―本書の日本語版が上梓された年―の段階で、この植物は、セント・ヘレナに、たった一個体しか残っていませんでした。
また、ラテン語の学名を、Commidendrum rotundifoliumという種があります。
同じく、一九九八年の段階で、この植物も、セント・ヘレナに、たった一個体あるだけです。
本書には、どうしても、この手の悲しい話が多いです。
が、わくわくする話も、載っています。
例えば、セイシェル諸島にしか分布しない、オオミヤシ(大実椰子)という植物があります。このヤシは、世界一、大きい種子を作る植物として、有名です。
その大きな種子は、どのように発見されたのでしょうか?
また、種子が見つかってから、親の木が発見されるまで、どんなドラマがあったのでしょうか?
これらも、本書に載っています。
本書を読むと、「地球は広く、多様である」ことを、実感できます。
以下に、本書の目次を書いておきますね。
序文にかえて
第1章 インターネットによる追跡
第2章 世界でいちばん長寿の木
第3章 長寿記録を破ったクレオソートの木
第4章 オークとサンザシ
第5章 砂漠のイトスギ
第6章 スミレいろいろ
第7章 チューリップ物語
第8章 絶滅の危機にある薬用植物
第9章 最果ての島、セント・ヘレナ
第10章 マダガスカルに日が落ちて
第11章 セーシェルには変わったココヤシがある
第12章 侵略者におびやかされるレユニオン島
第13章 ニューカレドニアの針葉樹類とヤシ類
第14章 ブルドーザーで破壊されるサラワクの原生林
おわりに
参考文献
訳者あとがき