赤いヤッケの男(文庫D) (MF文庫ダ・ヴィンチ)
山で起こった怪談ばかりを集めた本です。
すべて実話、ということになっています。でも、本当にそうなのかどうかは、知る由がありません。実話に、多少、「盛っている」可能性もありますね。
では、出来が良くないかといえば、そんなことはありません。
むしろ、出来は良いです。どの話も、怖いです。山に登らない人―私のような―でも、ぞくぞくすると思います。
まして、山登りをする人ならば、もっと怖いでしょう。山の描写に、迫真性があふれているからです。
著者の安曇潤平【あずみ じゅんぺい】さんは、御自身が、山登りをされる方です。そういう方でなければ、これほど真に迫る話は、書けないでしょう。
全部で、二十六話が収められています。
怖さの点では、「笑う登山者」と、「J岳駐車場」が、怖かったですね。
怖さよりも、心温まるのは、「急行アルプス」と、「牧美【まきみ】旅館」です。
「鏡」や「ゾンデ」は、不条理さが際立つ話です。単純な怖さではない、奇妙な味わいがあります。
「究極の美食」には、人間の業を感じました。
本書には、このように、怖いだけではない話もあるのが、良いところです(^^)
本書の中で、最も気に入ったのは、「山小屋の掟【おきて】」ですね。
末尾にある、山小屋の主人の台詞が良いです。山男の意気を感じます(^^)
他に、古来から伝わる、妖怪を思わせる「もの」が登場する話もあります。
この話が本当ならば、妖怪好きとしては、非常に興味をそそられます。
以下に、本書の目次を書いておきますね。
序文
八号道標
アタックザック
赤いヤッケの男
山小屋の掟
孔雀
急行アルプス
鏡
究極の美食
笑う登山者
追悼山行
J岳駐車場
カラビナ
もうひとりの客
鎌策婆【かまさくばあ】
ザクロ
残雪のK沢岳
ハーケンは歌わない
クライマーズ・センス
荒峰【あらみね】旅館
銀のライター
暴風夜
ゾンデ
N岳の夜
霧の梯子【はしご】
猿ぼぼ
牧美旅館
解説 みなみらんぼう
幽文庫通信vol.014
幽の湯 長島槇子
お化けと呪【まじな】いの島・与那国 岡部えつ
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