魔法少女の系譜、その40~『5年3組魔法組』~
今回も、前回に続いて、『5年3組魔法組』を取り上げます。七つの視点、改め、八つの視点で、この作品を、分析してみます。
[1]魔法少女の魔力は、何に由来しているか?
[2]大人になった魔法少女は、どうなるのか?
[3]魔法少女は、いつから、なぜ、どのように、「変身」を始めたのか?
[4]魔法少女は、「魔法の道具」を持っているか? 持っているなら、それは、どのような物か?
[5]魔法少女は、マスコットを連れているか? 連れているなら、それは、どのような生き物か?
[6]魔法少女は、呪文を唱えるか? 唱えるなら、どんな時に唱えるか?
[7]魔法少女の魔法は、秘密にされているか否か? それに伴い、視点が内在的か、外在的か?
[8]魔法少女は、作品中に、何人、登場するか?
の、八つですね。
[1]魔法少女の魔力は、何に由来しているか?
『魔法組』の魔法少女/少年たちは、魔女ベルバラからもらったMJバッグの力により、魔法を使います。より正確には、MJバッグの中の七つ道具が、魔法道具です。
魔法道具型の魔法少女/少年たちですね。
『魔法組』は、魔法道具型の魔法少女(少年)ものとしては、『ひみつのアッコちゃん』と『ふしぎなメルモ』とに並ぶ傑作だと思います(^^)
[2]大人になった魔法少女は、どうなるのか?
『魔法組』の魔法少女/少年たちは、もともと普通の人間です。魔女ベルバラにMJバッグを返してしまえば、魔法の使えない、普通の人間に戻ります。
大人になる前に、彼らは、MJバッグをベルバラに返して、普通の人間に戻るのだろうなあと、容易に予測できます。
[3]魔法少女は、いつから、なぜ、どのように、「変身」を始めたのか?
『魔法組』の魔法少女/少年たちは、魔法少女/少年としての、決まった姿に変身はしません。
けれども、魔法の一種として、変身することはあります。魔法の七つ道具の中に、メタモライトという変身道具があり、これを使って、自由に変身できます。
メタモライトは、「好きなものの姿になれたらなあ」という、子供の素朴な願いをかなえる道具でした。『アッコちゃん』のコンパクトと同じですね。
考えてみれば、『魔法組』が放映されたのは、『アッコちゃん』の最初の放映から、まだ七年しか経っていない時期です。七年で、「子供の素朴な願い」が、そうそう変わるはずがありませんね。
『魔法組』の時点では、まだ、「魔法少女/少年としての決まった姿に変身する」ことは、一般的ではありませんでした。『好き!すき!!魔女先生』や『キューティーハニー』という先駆作品があるにもかかわらず、そうでした。
『魔女先生』や『ハニー』が、いかに先進的な作品だったか、わかりますね。
[4]魔法少女は、「魔法の道具」を持っているか? 持っているなら、それは、どのような物か?
これは、先ほどから書いているとおり、MJバッグ(の中にある七つ道具)ですね。本来は、魔女ベルバラの持ち物ですが、ベルバラの好意により、『魔法組』の子供たちに預けられています。
七つ道具の簡便な説明は、以下のとおりです。
メタモライト:変身道具です。
ペンタゴン:物の大きさを、自在に変えられます。
ボイスボール:動物や植物と話ができる道具です。
バンノーダー:何でも引き寄せられる道具です。
MJシーバー:通信機です。二〇一五年現在における、携帯電話ですね。
マジッカー:これに乗って空を飛べます。
マンガンキー:何でも願いがかなう、究極の魔法道具です。ただし、使うと、反動が大きいです。
同じ「七つ道具」という名前でも、『ミラクル少女リミットちゃん』の七つ道具より、よほど重要な道具でした。『リミットちゃん』の七つ道具は、「おまけ」的要素が強かったですが、『魔法組』の七つ道具は、毎回、主役的扱いでした。
[5]魔法少女は、マスコットを連れているか? 連れているなら、それは、どのような生き物か?
MJバッグの中には、七つ道具以外に、MJくんという妖精が入っています。MJくんが、マスコットに当たるでしょう。小人の姿をしています。
私の記憶では、MJくんは、あまり活躍しません。愛玩動物のように、愛嬌をふりまく役ですね。
[6]魔法少女は、呪文を唱えるか? 唱えるなら、どんな時に唱えるか?
魔法の七つ道具を使う時に、呪文を唱えます。呪文は、「アバクラタラリン、クラクラマカシン」です。
「アバクラタラリン、クラクラマカシン」のあとに、例えばメタモライトなら、「○○になれ」と、変身したいものを指定します。
呪文を使うのは、古典的な「魔法もの」の伝統を引き継いでいますね。
例えば、空を飛ぶマジッカーなどは、外見上はメカニックな「空飛ぶ円盤」です。でも、呪文を唱えることによって、「科学的な道具」ではなく、「魔法」であることを強調しています。
[7]魔法少女の魔法は、秘密にされているか否か? それに伴い、視点が内在的か、外在的か?
これは、微妙なところです。魔女ベルバラの存在があるからです。
ベルバラが魔女であることは、公然の秘密です。『魔法組』の世界では、普通の人間に似て、そうではない「魔女」がいることになっているのですね。「魔女」は、魔法を使える存在だと、多くの人が知っているようです。少なくとも、5年3組の子供たちは、全員、知っています。
とはいえ、子供たちが、七つ道具で魔法を行使することは、一応、秘密にされていますね。「文化祭の出しもので、大っぴらには魔法を使えない」という話があるくらいですから。
それにしても、あれだけ街中で騒動を起こしていたら、魔法の存在は、秘密どころではないだろうという気がします(笑) コメディだからこそ、許される描写ですね。
『魔法組』の魔法は、「公然の秘密」という言葉が、ぴったり来ます。子供たちは、全員、魔法の存在を知っていますし、大人たちも、たびたび不思議なことが起こっても、何となく「そういうものか」で済ませてしまいます。
子供の間では、魔法の存在が共有されているため、基本は、子供たちの視点で、話が進みます。時には、魔女ベルバラ視点で、話が進むこともあります。
子供たち+ベルバラという、複数視点が許される作品なので、視点は、内在的とも、外在的ともいえますね。
[8]魔法少女は、作品中に、何人、登場するか?
『魔法組』で魔法を使うのは、基本的に、5年3組の五人組ショースケ、ガンモ、チクワ、ハテナマン、ミコと、魔女ベルバラです。これだけなら、六人ですね。
他に、脇役で、ベルバラの上司ジョーカーや、ベルバラの親戚チビバラといった魔女も登場します。
また、MJバッグの七つ道具は、五人組でなくても、呪文さえ唱えれば、誰でも使えます。ショースケの弟のユタカや、ハテナマンの妹のルリコが、そうやって魔法を使う場面があります。
『魔法組』は、厳密に魔法少女/少年の数を決めるのが、難しいですね。
ここでは、主に魔法を使う人数ということで、六人にしておきましょうか。
『魔法組』の優れた点は、集団に魔法道具を使わせたことだと思います。五人組が、協力したり反発したりしながら魔法道具を使うことで、ドラマが生まれやすくなりました。
女子二名・男子三名の男女混合チームなのも、この時代としては、ユニークですね。
『魔法組』が放映され始めた一九七六年は、スーパー戦隊ものの第一作『秘密戦隊ゴレンジャー』の放映真っ最中です。『ゴレンジャー』では、五名のうち、女性はモモレンジャー一名だけです。『魔法組』のほうが、女性の活躍が進んでいます(笑)
さらに、魔女ベルバラというトリックスターがいることが、話を転がりやすく、面白くしました(^^)
この「魔法道具型で、魔法道具を集団で使う」という特徴は、他の「魔法もの」作品に、あまり例がありません。もっと使われてもいい特徴でしょう。
『魔法組』は、呪文などの古典的な要素を引き継ぎつつも、魔女ベルバラというトリックスターや、「集団で魔法道具を使うこと」といった新機軸を取り入れた作品でした。のちの時代、男性を圧倒して「魔法少女」たちが活躍する作品を、予期させる部分もありました。
しかし、それが花開くのは、だいぶ後の時代です。
『5年3組魔法組』については、これで終わりとします。
次回は、別の作品を取り上げる予定です。