仏教美術のイコノロジー―インドから日本まで
仏教美術が、どこで、どのように発達してきたのかを、解説した本です。
インド、中央アジア、中国、日本と、仏教の来た道筋を追っています。
仏教美術といえば、まず、仏像が思い浮かべられますね。
けれども、仏教美術に含まれるのは、仏像だけではありません。
本書では、蓮や聖樹など、仏教美術に現われる植物の表現について、取り上げられています。
これは、ありそうで、ないものです。
特に、蓮は、仏教美術にひんぱんに現われるのに、きちんと解説した資料は、少ないです。本書は、貴重な例外です(^^)
仏像では、弥勒【みろく】菩薩(または、弥勒仏)の表現について、詳しいです。弥勒がお好きな方は、一読の価値があります。
巨大な仏像、いわゆる「大仏」がどのように誕生したのか、その過程についても、考察されています。大仏の起源について、重要な示唆がされています。
他に、阿弥陀如来のいる浄土の表現についても、考察されています。
以下に、本書の目次を書いておきますね。
仏教美術の流れ ―「彼岸の造形」の視点から―
1 インド―涅槃【ねはん】と豊饒【ほうじょう】の彼岸
2 中央アジア―天空の彼岸
3 中国―彼岸への再生
4 日本―彼岸の幻視
I 豊饒と再生
蓮のイコノロジー
はじめに
1 誕生と増殖―インド
2 生成と世界―インドから中央アジア
(1)水・生成・世界
(2)光・生成・世界
3 浄土と蓮華化生【れんげけしょう】―中国から日本
4 曼荼羅【まんだら】と自己―インドから日本
聖樹信仰と仏教美術
はじめに
1 ストゥーパと聖樹信仰
2 ヤクシャ・ヤクシー(樹神・豊饒神・鬼神)
インドの弥勒菩薩像―行者的イメージと王者的イメージ―
はじめに
1 ガンダーラの弥勒菩薩像
2 インド内部の弥勒菩薩像
II 彼岸と此岸【しがん】
天上の彼岸世界―バーミヤーンとキジル―
はじめに
1 パキスタンのガンダーラ美術
2 アフガニスタンのバーミヤーン石窟【せっくつ】
3 中国新疆【しんきょう】のキジル石窟
阿弥陀浄土の観想―トゥルファンのトヨク石窟壁画―
はじめに
1 トヨク第二〇窟の図像構成
2 浄土の観想
3 不浄観から浄土観想図へ
巨大仏の思想―弥勒仏と盧舎那【るしゃな】仏―
1 古代交通路の接点に造立された巨大仏
2 仏教文化東漸【とうぜん】のモニュメント
3 弥勒信仰の伝播と変遷
4 弥勒大仏造立の背景
5 竜門石窟の盧舎那仏から東大寺大仏へ
あとがき
〈初出一覧〉とコメント
図版目録