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わたしは灰猫
4時間くらいで、一気に読み終えてしまいました。途中からワクワクが、止まる事なく自分の中で、自然と奥行きのある舞台が広がって行く感覚で、進めば進むほど、次の展開が知りたくなり、あっという間にエンディングを迎えました。
いくつになっても変わらない死ぬ事への恐怖とどう向き合うか、命と自然との繋がり、自分で決められる人になる為に強くなる事、他人からとやかく言われても曲げない頑固さ、そしてどうやって人生に希望を持つか。こんな要素が凝縮された物語です。
思わず自分も作品の中に居るかのような錯覚に何度も陥ります。古い牛小屋で一緒に水槽を磨き、戸棚から取り出したフランスパンの香りを感じました。洋館の五階から見える山、空、空気、そして幻の湖を咲音と共有していました。僕はこの本を通して、苦難を歩み、己の未熟さを知り、それを乗り越える擬似体験を得ることが出来、とても満足です。
咲音も灰猫も、本の前半に抱えていた「終わりがある事の恐怖」から、物語が進むにつれて「終わりがあるからこそ、どう生きるかという希望を探す」この人間的な成長に感動があります。
自分のルーツを辿る事の興味や恐ろしさを抱える咲音が、灰猫と不思議に出会い、一歩一歩進んでいく姿に勇気をもらい、己の意思を持って行動する強さを教えてくれています。
そして灰猫は、羊水にいた頃の自由な姿に戻ろうとする過程の中で、水槽を洗ったり、水の中で自由になる為に行った「れんしゅう」。当初の理由は、自分が苦しみから逃れたい気持ちだったのが、最終的に目の前にいる咲音の為に躰を動かして行くのです。そして恐怖からの開放があります。
灰猫の言う「どうめい」とは、咲音の自立への道と、灰猫の他人の為に身を捧げる事、その二つの意味の重なり合いだったのですね。
この二人の考え方と関係性の変化が、日本一の雨が降る源の原の大自然の中、生き生きと描かれています。雨や木や草たちの匂いが今も頭の中に残ります。
経験値を増やせるのが、読書の醍醐味ですね。
良本をありがとうございます。
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