B.E.夏号 第3章「仕事とこころ」
※本記事の文量は約5,100字です。
「何のために働くのか」それを考え始めたら負けだという人もいる。本当にそうなの?
食べるために働くのか、夢のために働くのか、目的は多様であってもいいはずだが、働き方は未だ単一的な現代日本。そんな中で「こころ」はどうなっていくだろうか。一緒に考えて見ませんか。
ー鈴木さんの仕事観についてお話聞かせてください。休職される直前に仕事をしていたのは広告会社でしたよね。どんな状況だったか詳しく教えてもらえますか。
(鈴木)すごく微妙なのが、わたしよりハードにタフに仕事している人なんていくらでもいる、ということなんですよ。だから、単なる不幸自慢に聞こえたらごめんなさいなので、事前に謝っておきます。
ーそういうところかもしれませんね笑。気を遣いすぎ。
(鈴木)そうですか笑。コンプライアンスが重視される社会ですし、広告業界内では色々な事件が起きましたから、今ではかなり健全な状態になりつつあると思います。だから、現在は変わっているという前提で、当時の状況をお話しますね。まぁ広告業界って、そもそも激務と言われてますよね。その分他の業界と比べると高給かもしれない、だからそれに見合うだけ働けっていう雰囲気は随所にありました。例えば、競合(コンペ)と言われる広告主が複数の広告会社に対して提案を求める案件があるのですが、提案直前の数日は徹夜続きが多いです。これは多くの広告会社経験者がネット上で色々と語っているので深くは踏み込みませんが、競合に勝つため、さらには良い提案にするためにスタッフ全員頑張っている部分なのでプロフェッショナリズムがある良い文化だと思いますし、致し方ない部分かもしれません。「効率的」というのが全く当てはまらない業界だと思いますよ。だって、素晴らしいアイデアが9時〜17時の定時内で効率的にやって思いつけばいいですが、無理でしょ。
ーそういうもんなんですかね。
(鈴木)そこはね、そういうもんだと思います。良いものを作ろうと思ったら、ある程度は時間かけないと仕方ないんです。関わる人も多いから確認だけでも時間かかるし。ただ、提案までの期間は問題ですよね、2、3週間とかで提案をまとめないといけない。それが当たり前になっているんですけど、クライアントにはその点どうにかなんないのかって毎回思ってましたよ。
ーいろいろ大変だったと思うんですが、何が一番辛かったですか。全部聞いてたら時間かかりすぎちゃうし。
(鈴木)世の中の時間の流れから孤立している感があったことです。あくまで、わたしはですよ。例えば、午後に2件打ち合わせして18時くらいに終わるとするじゃないですか。そしたら帰りたいですよね。
ーそりゃ定時過ぎたら帰りたいです。
(鈴木)会社戻るんですよ。他の会社員たちが駅に向かう流れに逆らって会社に戻るんです。よく笑い話として語られてますけど、飲み会終わったあとでも会社戻るんですから。それが好きな人もいると思うんです、きっとね。だけど、わたしはそれが結構嫌だった。他の会社の知らない帰る人とか睨みつけてた気がします。「お前ら仕事ないんかい」、「よくそんなんで給料もらえるな」とか内心毒付いてたりして。
ー怖いですよそれ。
(鈴木)でも、それくらい追い込まれてた。仕事が終わらなくて毎日深夜2時くらいにタクシー乗って帰ってましたから。当時住んでたのが大田区の大森だったんですけど、タクシーだと20分くらいかな。深夜だから車も少ないし、めちゃくちゃ飛ばすんですよ彼ら。タクシーの運転手さんに目的地と「高速乗ってください」とだけ伝えてあとは窓の外眺めて、「あぁ、今日は何時間寝られるかなぁ」とか考えてましたから。たまたま乗ったタクシーの運転手さんが「NHKラジオ深夜便」をつけてて、そこで初めて知ったんですよ、その番組を。あの優しい感じに癒されました。「ジェットストリーム」って知ってます?ちょうど0時まわる頃にTOKYOFMで放送されてる番組なんですけど、昔のパーソナリティの城達也さんの頃の音声をあるタクシーに乗った時に知ったんです。それ以降はしばらくの間、寝るときはYOUTUBEでジェットストリームをつけて寝るんですよ、癒されるから。というか、それを聴かないと眠れなくなってた感じです。
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