[君と悪いことがしたい]自己を解放する理由が欲しい
今回ご紹介するのは週刊少年サンデーで連載中の「君と悪いことがしたい(作:由田果)」です。
主要登場人物紹介
この作品の特徴は以下の点にあるのではないか。
嫌いだから。他に理由がいるか?
これは第1話で藤くんがプールの水を抜く理由を問われた際、まもりに答えた内容だ。
自分が好きなこと、望むことを主張して貫き続けることは他人との軋轢や摩擦をうむけれど、自分を押し殺して生きていくのはそれ以上に苦しい。どうしたら良いか分からない。
若い人たちの中にはそう考える人が多いと思うのだけれど、最近のサンデー新連載群はそういった悩みを抱える読者に「好きなものを好きと言っていい」「好きなものだけを理由に生きて良い」ということを伝えようとしているように感じている。同時期に連載を開始した「ビグネス参式」の主人公ハルトも、怪物と戦う理由なんて「オタク趣味を守ること」それだけでいいと伝えている。私たちは自己を解放するための理由を欲している。
ちょっと大袈裟だけれど、ここで尾崎豊の「15の夜」を引用したい。
この歌詞を改めて読んでみると、尾崎の自由を希求する姿を今でも強烈に感じることができる。彼が主張するのは、やり場のない気持ち、縛られたくないという気持ちだけれど、その感情をどうしていいか解らない。校舎裏でタバコを吸ってみる、バイクを盗んで夜の街を走ってみる、社会に抗ってみる、自由になれたのかも。
尾崎がこの歌を歌った1980年代からもう40年が経つ。経済も発展して生活も豊かになってきたけど、未だに私たちは自由を求めている。職業選択の自由、学校に行く(行かない)自由、色々な自由を制度上は手に入れた気がしたけど、まだ本質的には変わっていなかったのではないだろうか。
これも同誌で連載中の「よふかしのうた」も学校では真面目で友達も多くて一見恵まれていそうな夜守コウは自主的に不登校を選択して夜の街を楽しんでいる。コウはコウなりの自由を求めていたのだろう。自由はそれを求める人によって姿形を変えているから。
現在の週刊少年サンデーの新連載群に共通するテーマは「自由」だ。
これらの作品が多くの少年少女に少しでも生きやすい世の中を見つけるキッカケになってくれることを祈る。